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257話 ポジティブな思考!

 ……空気が重い。

 原因は、はっきり分かっている。

 俺が『魔王』になったからだ。 それにガルプツーが、魔王ふたりを倒した事も喋ったので、ソディックに知られてしまった。


「俺達が居たら、話しづらいだろうから席外すわ」


 シロとクロを連れて、その場を離れる。


 しかし、これは予想していなかった。

 まさか自分が、魔王になるなんて……。

 エリーヌから文句を言われるかも知れないので、とりあえず連絡をする。


(はいはい、エリーヌだよ)


 相変わらず、神らしくない受け答えだ。


(今、何してた?)

(えっ! 勿論、仕事していたよ)

(……そうか、俺の監視もしていたのか?)

(も、勿論じゃない! 何を変な事聞くのよ!)


 絶対にサボっていたと、自信を持って言える。


(そうか、それなら俺の身に起きた事も当然知っているよな?)

(えっ!)


 数秒だが、沈黙が続く。


(ほらみろ、何も知らないだろう。 サボっていたとモクレン様に告げ口するぞ!)

(えっ、いや、そのですね……すいません)

(まぁ、とりあえず知らないなら報告してやるが、俺がお前の予言した『魔王』になった)

(はぁ?)

(だから、俺が魔王になったんだよ!)


 エリーヌから返事がない。 もしかして、ショックだったのか?

 自分の送り出した使者が、魔王になったと言われれば当たり前か……。

 

(そうなんだ、魔王になったのがタクトで良かった~)

(……どういう事だ?)

(だって、魔王って破壊を繰り返したりして、世界を混沌に変えようとする者が多いじゃない。 その点、タクトはそんなことしないから、私としては不安要素がひとつ減って、安心したよ!)


 確かに、そういう解釈もある。

 エリーヌの、このポジティブな思考は見習いたいと思う。

 俺も、魔王になった事をポジティブに考えてみるようにしてみる。


(一応、報告はしたからな)

(うん、ありがとうね!)


 上機嫌なエリーヌとの連絡を終える。

 ポジティブに考えると言っても、魔王の事を知らなさすぎる。

 【全知全能】に聞いても良いが、やはりここは先輩魔王に、意見を聞いてみる事にする。

 アルとネロに連絡して場所を教えると、すぐに【転移】で来てくれた。

 着た早々、嬉しそうに喋り始める。


「やはり、妾の師匠だけあるな!」

「さすがなの~!」


 既に、俺が魔王になっている事を知っていた。


「魔王になると、どうなるんだ?」


 魔王という存在について、再度確認する。

 ふたり共回答は、特になしだった。

 体に変化が現れるわけでもない。

 ただ、世界的には、魔王が誕生したという事実だけだ。


「特にやる事はないんだな……」

「そうなのじゃ、暇で仕方ない」

「暇なの~!」


 暇そうなので、魔王誕生したのが何故分かったのかを聞いてみた。

 理由は簡単だった。魔族は魔王誕生を心待ちにしている為、誕生すると直感的に分かると言っていた。

 昔は、人族の中にも分かる者もいたそうだが、今は殆どいないだろうとアルが説明してくれた。

 もし、龍人や吸血鬼が人族として、長い年月過ごしていれば、魔王誕生に気が付かないかも知れないと、補足で説明してくれた。

 魔族だと思い込む精神的な部分が、大きいのだろう。

 アルとネロに礼を言い、ついでに気になっていたことを質問してみる。


「ところで、ゴンド村に家は建てたのか?」

「おぉ、そうじゃ! タクトと三人で住めるようにと考えておったのだが、色々と間取りが難しくてな」

「おい! 俺は一緒に住むなんて、一言も言っていないぞ」

「そうじゃったか?」

「あぁ、言っていない」

「そうか、まぁ気にするな。 部屋だけは用意しておくから、いつでも遊びに来い!」

「御前達、ゴンド村に永住するつもりか?」

「そうじゃな、用事がある時だけ集落に戻る事にした。 龍人の長も譲ったしな!」

「私も、お母様が好きにしていいて言ったから、引っ越すの~!」


 ……お母様?


「ネロの母親って、生きているのか?」

「生きてるの~、始祖様だから偉いの~!」

「吸血鬼では、ネロが最強じゃないのか?」

「お母様の方が、断然つよいの~!」


 ネロよりも強いのに、魔王じゃない?

 ガルプツーが言っていた、恐怖と尊敬の念が小さいからという事か……。

 知名度が無く、魔王でなくても隠れた強者が存在するという事になる。

 出来れば俺も、そっちが良かった。


「今度、お母様を紹介するから、遊びにくるといいの~!」

「妾も久しくネロの母上に会っていないから、遊びに行きたいの」

「みんな、遊びに来るの~! 楽しみなの~!」


 いつの間にか、ネロの家に遊びに行く話になっている。

 魔王就任の挨拶だと思うしかないな……吸血鬼の始祖って、怖いんだろうな。


「そういえば、タクトの着ているその服だが、アラクネ族製の物か?」

「あぁ、クララ達に作って貰った」

「アラクネ族に服を作らせるとは、流石としか言えぬな」

「そうなの~!」

「どうしてだ?」


 アルとネロも、何回もアラクネ族に依頼をしたが断られること数百回。

 魔王だと言っても作って貰えず、集落を破壊すると言っても作って貰えず、何年もかけてなんとか作って貰える関係になったそうだ。

 そうなのか、オリヴィアの口添えが無かったら俺も作って貰えなかったのか。

 そういう意味では、出会いに感謝するしかない。


 そういえば、戻ったらルーカス達に、ゴンド村の事を話さないといけない。

 最悪、村の視察という事になれば、絶対にバレるよな……

 アルとネロには前もって、大人しくするように言っておく。


「今度、国王とその一族が、ゴンド村に行くかも知れないが、友好的に迎えてやってくれ」

「分かったぞ!」

「……王族きらいなの~!」


 確かに、ネロと王族は因縁があるからな。


「昔の王族は知らないが、悪い奴達じゃないから頼む。もし、気に入らない事があれば俺に言ってくれ」

「師匠が言うなら、仕方ないの~!」


 とりあえずは、魔王の問題が最優先だよな……。

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