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253話 王国騎士団の副団長!

 拠点近くまで行くと、見張りの騎士が俺達に気が付く。


「ソディック団長!」


 驚いた表情で、ソディックの所まで駆け寄って来る。


「御怪我の方は、もう大丈夫なのですか?」

「問題無い。 状況はどうだ?」

「はい、ここ二日程は特に動きがありません」

「そうか、常駐している騎士達に変わりはないか?」


 この質問に騎士が黙りこんだ。


「……何かあったのか?」

「はい、パク副団長からの指示で毎夜になると何人かが、ここより近い場所まで偵察に行くのですが、ひとりも戻って来ておりません」

「その事を、王都に報告はしたのか!」

「いえ、今の騎士団の司令塔はここになるから、必要無いと言われて……」

「教えてくれてありがとう、パク副団長には私から聞き取りをする」


 ソディックは、今迄に見た事のない難しい顔をしていた。

 確かに、魔物の動きが活発な昼より夜の方が、偵察には向いている。

 しかし、戻って来ないのであれば、何か重大な事があったと判断すべきだ。

 原因が分かるまで、夜の偵察を中止するのが普通だろう。


「ソイツ等は、実績や信用があるから副団長になったのだろう?」

「いえ、二人ともライテック様の推薦で、不在だった副団長に任命されています」

「……そんな事が許されるのか?」

「はい、国王様より騎士団の権限の一部が、ライテック様に移っております」


 完全に、ライテックはクーデターの主犯格だろう!

 騎士団を牛耳れば、国王を守る部隊は居なくなる。 そうなれば、クーデターもやりやすくなる。

 ソディックも亡き者にして、副団長を団長に格上げするつもりでいたのなら、今回のソディックの怪我も納得出来る。


 本当に分かりやすい裏工作だ。



 騎士に案内されて、拠点中央のパクとチョーヨンの居る場所まで歩く。

 楽しそうに談笑しているふたりがいる。

 多分、あの犬人族のふたりが、パクとチョーヨンなのだろう。


 向こうが俺達に気付くと驚いた顔をしている。


「御苦労!」


 ソディックが、ふたりに対して挨拶をするが、言葉は返ってこない。


「どうした、何かあったのか?」

「……いえ、大怪我を負われたソディック団長が現れたので、驚いた次第です」

「そうか、迷惑を掛けたが、見ての通り怪我も回復した」

「それは、喜ばしい事で……」


 見るからにソディックの訪問を良くは思っていないのが分かる。


「先に紹介しておこう、今回のオークロード討伐にパーティーになる」

「……オークロード討伐のパーティーですって!」

「そんな報告受けてません。 なにかの間違いでは無いのですか?」


 慌てる奴がチョーヨンで、落ち着いている奴がパクだとソディックが教えてくれた。


「国王直々の御命令になる」


 納得出来ていない様子だ。


「議論している時間は無いので、現状の報告を聞こう」


 ソディックは早々と本題に入ろうとする。

 出された書類に目を通している。 俺も後ろで見ていたが、たいして役に立ちそうな情報は無かった。


「おい、そこの冒険者! 冒険者ごときが、勝手に書類を読むんじゃない」


 パクが俺に文句を言って来た。


「現状把握するのが俺の仕事だ。 あんた達が頼りないから俺が来る事になったんだろう。 文句なら国王にいえ!」


 売り言葉に買い言葉だ


「なんだと貴様!」

「止めろ!」


 剣を抜こうとするチョーヨンを、ソディックが止めるように言う。


「タクト殿の言われている事は、悔しいが事実だ。 それに、タクト殿は国王様直々に指名された方だ。 タクト殿に逆らう事は国王様に逆らう事と同じだ。 それでも剣を抜くのか!」


 チョーヨンを睨みつける。


「いえ、そのようなことは……失礼しました」


 ゾリアスの復讐をしてやるいい機会だったのに、残念だ。


 ソディックにも謝罪を受けて、地図を広げながら作戦を練る。

 俺の前夜に考えた作戦と、ソディックの作戦がほぼ同じだった。

 違うのは、俺の実力を知らないので、騎士達を連れて行く事くらいだ。


「騎士達は今すぐに全員、王都に帰らせろ。 今迄の事を全て報告してくれ。 勿論、毎日の偵察の事も含めてだ」


 敢えて喧嘩を売るように話す。

 パクとチョーヨンは、偵察の事がバレるのがマズイと思ったのか、必死で弁解や騎士達を帰らせないように説得してきた。


「私が騎士団の団長だ。 今回は、タクト殿の指示に従う。 全員に撤退だ!」


 ソディックも、後押ししてくれる。


「副団長の御前達は残れよ! 一応、責任者だったんだから、それくらいの職務は果たせよ」

「……承知致しました」


 怒っているのが手に取るように分かる。


 ソディックは、騎士達と話があるというので俺達は別の場所で、少し休憩をする。


「トグル、悪いけどチョーヨンて奴を、見張っててくれるか?」

「別にいいが、なんでだ?」

「……怪しいからだ。 変な動きをしたら拘束しても構わない」

「分かった。 だが、副団長程の実力者なら、俺では敵わないかも知れないぞ?」

「大丈夫だ。 実力で言ったらお前の方が、断然上だよ!」

「そうなのか?」


 続けて、クロにはパクと言う奴の監視を頼んだ。

 とりあえず、このふたりをここで足止めして、裏切り行為をさせなければいい。

 騎士達と一緒に王都へ戻らせると、隠蔽工作をされる恐れがある。


 騎士達が撤退の準備を始めたので、俺達はオークロードの所へ向かう事にした。

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