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245話 エルドラード王国最強戦士? との手合わせ!

 訓練場と言うよりは闘技場に近い造りになっている。

 席は二種類あり、一般人用の観客席と、来賓用の特別観覧席。

 一般の観客席には、今回の討伐パーティーであるシキブ達と、ジラールにヘレン。

 来賓用の観覧席には、国王達がいる。


 戦闘の前に、ライラに【結界】を張ってもらう。

 その際に、俺もバレないように【結界】の重ね掛けをして、ここから出ないように注意をする。


 鑑定士のターセルは、笑いながら頷いた。どうやら、ターセルは気付いていた様子だ。


「最初は、私から手合わせ願おう」


 剣士のナイルが、剣を抜き俺に向ける。


「勝敗はどうやって決める?」

「お互いが降参するまでで、良いと思うがどうだ?」

「そうだな、それでいい」

「タクト殿、武器は何を使用されるつもりですか?」

「俺は無手で結構だ。遠慮なく攻撃してくれ」


 一瞬、驚いたターセルだったが、すぐに戦闘態勢に戻った。


「ソディック、始めの合図を頼む」


 ソディックに頼むと、一般観客席から「始め!」の声が掛かった。


 言い終わる前に、ナイルの突きが目の前に来るが、余裕で避ける。

 避けたと同時に軌道を変えて、俺の首を狙う。

 しかし、後方に飛び攻撃を回避する。

 思ったより、速いが余裕で避けれる速さだ。


 その後も、手を出さずに攻撃を躱し続ける。

 観客席から見れば、俺が防戦一方に見えているだろう。


「逃げるだけでは勝てませんよ。それとも攻撃が出来ませんか?」


 皮肉を込めた言葉を、俺にぶつけてきた。

 むやみに飛び込んでユニークスキルでも発動されると困るし、何よりもう少し対人戦を体験したかった。


 それからも俺は手を出さずに、ナイルの攻撃を躱し続けた。

 俺が攻撃しないのに、業を煮やしたのか、剣を頭上にして上段の構えをとった。


「いつまでも逃げれると御思いのようですが、私の【一刀両断】でこの勝負に終わりを着けましょう!」


 ……【一刀両断】て技の名前じゃないよな。

 一応、ステータスを開くとユニークスキル【一刀両断】が増えていた。

 やっぱり、言葉というかスキル名から理解出来てしまったようだ。

 スキル内容は、時の如く目の前の物を真っ二つに出来る。

 条件として、斬る獲物(刀)が対象物より強度がある場合のみらしい。

 俺の知っている【一刀両断】は、物事を迅速に処理するように仕事で使っていたが……所変われば内容も変わるという事か? 


 しかし、なんでスキルを名乗るんだ……カッコいいと思っているんじゃないのか?

 それよりも、普通の奴がこの攻撃を受けたら、降参する前に死ぬんじゃないのか?


 とりあえず、手刀でも【一刀両断】が発動出来るかを【全知全能】に確認すると、答えは『可能』だ。

 続けて、目の前のナイルの剣と俺の手刀とで【一刀両断】が激突したらどちらが勝つかを確認する。

 【全知全能】は『俺だ』と答えた


 ナイルは構えたまま襲って来ない。 どうやら、俺が攻撃範囲に入るまで待っている様子だ。 要するに、攻撃範囲が狭いという事か。

 面白いな! 敢えて、その範囲に飛び込んでみようと思い、無防備のままナイルの所まで歩いていく。


 攻撃範囲に入ったところで、【一刀両断】と大声を上げて距離を縮めて、剣を振り下ろす。

 俺は斬られる寸前に手刀で【一刀両断】を発動させて、ナイルの剣を折った。

 観客席からは、俺が切られたように見えたのか、大声で叫んでいるのが分かる。

 ナイル自身も剣を振り下ろし終わった瞬間まで、自分の剣が折られた事に気付いていなかった。


「剣が折れたが、続きはするか?」


 絶対な自信を持っていた【一刀両断】を、いとも簡単に破られて呆然とするナイルに声を掛ける。


「……降参だ」


 俺の勝利が確定した。


 振り向くと、既にコスカが立っていた。


「ナイル、負けたんだから早く退場してくれる」


 嬉しそうに、ナイルへ訓練場から出るように促す。

 ナイルは、何も言わずにコスカを睨むと、そのまま出口まで歩いて行った。


「貴方、武闘家のようだけど私相手に勝てるかしらね。魔法禁止なんて事は言わないわよね」


 ご機嫌な口調で話す。

 しかし、こんなのが国王の護衛なんて大丈夫なのか?

 もう少し、気品のある護衛を想像していたが……俺の認識がおかしいのか?


「勝敗の決め方は、さっきと同じでいいのか?」

「勿論、それでいいわよ。私が降参なんて言う訳ないけどね」


 ……高飛車な魔法士だな。コイツは少し鼻をへし折ってやるか!


「ソディック、合図を頼む」


 先程同様に、ソディックに開始の合図を頼むと「始め!」と言う声と共に、詠唱を始めて【爆炎破】を撃って来た。

 火属性でも上位魔法だ。ナイルと言いコイツと言い、俺を殺すつもりでいるのか?

 そんなことを考えながら左手を出す。左手に触れた瞬間に【魔法反射(二倍)】が発動して【爆炎破】は二倍の大きさになり、向きを変えて術の発動者であるコスカの方へ飛んでいく。


 いきなりの事で、詠唱する間も無く【爆炎破(二倍)】が直撃する。


「……何をしたのよ。私があらかじめ【魔法壁】を唱えてダメージ軽減出来たから、よかったものを!」

「いやいや、それ撃って来たのお前だし! 自分の魔法でやられるって、どんだけ間抜けなんだよ!」


 そもそも、あらかじめに【魔法壁】を掛けていること自体が、反則じゃないか?


 俺が発した「間抜け」の一言が気に障ったのか、目を瞑り何やら詠唱を唱え始めた。

 しかし、詠唱している間待ってやる程、御人好しでもないので【火球】【雷球】を連続でコスカに打ち込む。

 当然、最初は威力は抑えて打ち込むが、威力を上げても問題無いと思えば、徐々に威力を上げて打ち込んでいく。


「痛っ! 痛いって!」


 詠唱を中断して、なにやら言っているが御構い無しに打ち込む。


「痛いって言っているでしょう!」


 怒っているが、降参していないので更に速度を上げて打ち込む。

 杖に身体を預けながら何かを言っているが、全く聞こえない。

 なぶり殺しのようで、気分にいいものじゃないが、勝負なので仕方ないと自分に言い聞かせて魔法攻撃を続ける。


 コスカの身体が前のめりで倒れるのが見えたので、攻撃を止める。


「……俺の勝ちでいいのか?」


 誰に聞いていいのか分からなかったので、とりあえず国王に向かって声を掛ける。


「……そうだな、其方の勝利だ」


 とりあえず、二人に勝利はしたが違和感が残った。

 これが王国最強の戦士の訳が無い。

 もしも、これが王国最強であれば、俺が討伐したスレイプニルには絶対に敵わない。

 人数がどうこう言った問題では無い。個々が弱すぎるからだ。


 今、考えても仕方ないので、後で確認してみるかと思いながら、コスカの所まで行き【治療】と【回復】を掛けてやる。

 目を覚ますまで、近くに居てやってもいいが面倒なので、そのまま観客席に戻る。


 【結界】が壊れる感じを確認したので、被害は無いと思うが一応確認をする。


「魔法で怪我とかはしていないか?」


 俺を見て何も言わないジラールとヘレン。呆れ顔のシキブ達。 


「どうしたんだ?」

「いや、戦闘が凄すぎて言葉が何も出てこなかった。シキブ達が実力はランクSS以上だと言っていたのも納得出来た」


 ジラールは、俺を再評価したようだ。


「それより、あの二人弱かったが何者なんだ?」

「……弱かった?」

「あぁ、本気出すまでも無かったしな。シキブ達なら分かっただろう?」


 シキブは、嫌な顔をする。


「たしかにタクトは実力の十分の一も出していないと思うわ。私が余裕で目で追えていたし……」

「いやいや、あれで本気じゃないのか?」

「私もタクトの本気は見た事無いけど、今のは御遊び程度ってとこじゃないかしら」


 シキブは、冷たい目で俺を睨む。


「それが本当なら、ランクSSSは確実だろう……本当に人間族なのか?」

「ステータス見たから分かるだろう。 正真正銘の人間族だ」


「嘘!」


 急に後ろで大きな声が聞こえた。 声の主は、先程まで倒れていたコスカだった。


「おぉ、気が付いたのか」

「……貴方、何者よ! 私が負けるなんて、ありえないわ」

「お前が、この国最強の魔法士なのか?」

「えっ! それは……いずれ最強の魔法士になる者よ!」


 やはり、違うのか。

 それが分ればコスカとは、別に話す事も無いので無視をする事にする。


「ジラール、この国最高の魔法士と剣士は誰だ?」


 グラマスのジラールなら、すぐに回答が出来ると思い聞いてみた。


「剣士なら『ロキ』、魔法士なら『カルア』だな。 この二人が正当な国王直属の護衛衆になる。」


 そう言うと、国王の方を見上げる。


「丁度良い。 王妃様の隣にいる女性がカルア、ヤヨイ様の隣にいるのがロキだ」


 いつの間にか観覧席に立っていた。


「成程、自分達が出るまでも無く、俺の実力を確認したということか」


 なかなかの策士だな。

 俺の予想だと考えたのは、ターセルだろう。

 カルアの存在に気が付いたコスカは、ひどく怯えている。

 俺の予想だと、後で叱られるのだろう。


「タクトよ、楽しませてもらった。 其方の力を確認出来たし、討伐も期待出来そうで安心した。 あとで使いの者を寄こすので、我の所まで来るように」


 そういうと、観覧席から出て行った。


「……国王に呼ばれるって、面倒だな」


 思わず心の声を漏らすと、周りから集中攻撃を浴びた。


「それなら、誰か一緒に来るか?」


 この一言で皆、黙り込んでしまい目線を外して、口々に行けない理由を話し始めた。


 ……やっぱり、御前達だって面倒臭いんだろうが!

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