244話 国王との謁見!
ヤヨイに、国王と謁見する部屋へ案内される。
部屋の左右には衛兵が、既に待機していた。
目線を少し上に向けると、正面と左右には、上から見下ろすような造りになっている。
正面は国王及び、王妃等の親族席だろう。
左右は大臣及び、貴族等達の席だろうと推測出来た。
ヤヨイは「私はこれで」と部屋を出て行った。
しかし、城内とはいえ、王女が御付きの者無しで自由に動き回るのは、問題では無いのだろうか?
俺は【隠蔽】でステータスが覗き見されないように、再度確認をする。
隣にいるムラサキやトグルは、緊張しているのか顔色が悪い。
シキブも、ふざける様子もなく真剣な顔をしている。
シロとクロも、いつの間にか正装に着替えているのには、驚いた。
以前にクロが服も変化出来るとは言っていたが、本当のようだ。
暫くすると、一番奥に居た衛兵が大声で国王が入室する事を伝えると同時に、俺達に頭を下げる指示をした。
片膝を着いて、頭を下げたまま時が経つのを待つ。
正面より扉が開く音が聞こえる。
その後、次々と足音が聞こえて、入室してきているのを感じる。
先程とは違う声で、国王が席に座った事を伝えられた。
「面を上げよ!」
国王と思われる声で、顔を上げる。
第一印象は、見るからに国王って感じだ。
ダウザーより、少し年上だろうか?
国王の横には、王妃とユキノ、ヤヨイと並んで座っていた。
ユキノとヤヨイも先程と違い、素晴らしく美しい服装だ。
それよりも、王妃だ!
ユキノ達と並んで座っているが、母娘にはとても見えず姉妹と紹介されても、疑われない容姿だ。
国王家族の横に、剣士と魔法士らしき者と、鑑定士がいる。
見た目で鑑定士と判断出来たのは、俺がカンナの師匠に用意した服を着ていたからだ。
つまり、あの男性がカンナの師匠であり、国王の横にいるという事はエルドラード国で、最強の鑑定士なのだろう。
そう考えると、隣の剣士と魔法士も同様に、王国が誇る最強戦士だという事になる。
俺が周りに意識を向けている間に、ジラールが『ゴブリンロード討伐』について、簡単な報告をしていた。
「其方が、冒険者のタクトか。今回のゴブリンロード討伐の件、大儀であった」
国王の言葉に、俺は無言のまま頭を下げる。
俺が言葉を発しないのは【呪詛】のせいだと感付いた国王は、
「其方が、丁寧語を話せないのは報告書で知っておる。気にせずに発言をするが良い」
「そうか、すまないな。こんな口調だが一応、俺的には丁寧に話しているつもりだ」
隣の剣士や魔法士、上から俺達を見下ろしている奴らの視線が痛い……。
「気にするでない。他の者も、この者が丁寧語が話せない事で咎める事は、余への反逆とみなす。そのつもりで接するように」
その場に居た者達は、国王の言葉に頭を下げて承諾したようだ。
「オークロード討伐の件の前に、傷付いた騎士達全員を治療してくれた事、国王としてお礼を申す」
国王が椅子から立ち上がり、頭を下げて礼を言った。
同じように続けて、王妃と娘二人も頭を下げた。
周りからは驚きの声は勿論、冒険者ごときに頭を下げるなんてと失礼な事を言う者もいた。
しかし、国王は気にせずにその者達に向かい恫喝する。
「国の為に戦い、傷付いた騎士達を治療してくれた者に、礼を尽くすのは当たり前だ。そこに身分など関係ない!」
静まりかえり、誰も言葉を発しなくなった。
「気にするな。人として出来る事をしただけだ」
失礼とも思いながら、意見を述べる。
国王は俺を見ると、口角が少し上がっていた……笑っているのか?
再び座ると『オークロード討伐』についての説明をするように言われるので、シキブに話を振る。
いきなり話を振られたシキブだったが、討伐参加者の自己紹介を簡単にしていった。
ライラの紹介の際に、魔法士や剣士、鑑定士が発言する事を許されてライラへの質問をしようとする。
幼い事に加えて、ランクが低すぎる事が気になっているようだ。当然の反応だろう。
俺が「ライラのユニークスキルが必要だ」と説明をすると、鑑定士も「確かに、彼女のユニークスキルは必要かと思います」といってくれた事で、剣士と魔法士も同意したようだ。
シロとクロは、俺の従者と説明をすると、国王の傍にいる魔法士が意見を述べる。
「失礼だが、従者という事は冒険者では無いのか?」
「彼女や彼は、人族では無いですよ」
鑑定士が、人族でない事を口にすると上から、色々な話声が聞こえてくる。
俺は発言する方が良いのか悩んでいると、続けて鑑定士がシロ達の種族を言い当てた。
「聖獣のエターナルキャットとパーガトリークロウですので、安心して貰って結構かと」
聖獣という響きに、上の声がより一層大きくなる。
あの鑑定士は、どこまで鑑定出来ているのかが不安になった。
【隠蔽】で隠しきれているのだろうか……。
しかし、言葉だけで印象が全然変わってくるから『魔獣』でなく、『聖獣』と言ってくれた事には感謝する。
「タクトとやら、その従者達は人の姿をしているが、このターセルの言う通り聖獣なのか? それに、本当に危険ではないのか?」
「危険は無い。それと今、本来の姿に戻す」
俺が話し終わると同時に、シロとクロは姿を変えた。
シロを呼び左腕に抱き、クロを右肩に乗せる。
片膝を着いたままなので、若干動きづらい……。
それよりも、カンナの師匠の鑑定士はターセルと言うのか。
そんな俺の思いとは別に、上から驚きの声が降って来る。
「シロ様とクロ様も、騎士の方達の治療に協力して下さりました」
ヤヨイが先程の事を話して、シロ達が安全な事を伝えてくれた。
「タクト様の従者が、危険な筈ありませんわ」
ユキノは根拠のない発言をしていたが、影響があるので助かる。
「……分かった。今回は、其方達に任せる。出発は明朝とし、必ずやオークロードを討伐するように」
俺達は頷き返事をする。
明日の朝までは時間があるので、王都見学でもするかと内心思っていたが、一瞬にしてその思いは打ち砕かれる。
「国王様。宜しければ、タクト殿と手合わせをさせて頂きたいと存じます」
上から剣士が手合わせを申し出てきた。
「国王様、私が先に手合わせをさせて頂きたいと」
横から魔法士も同様に申し出てきた。
……面倒臭いな。
しかし、たかだかランクBの冒険者が、単独パーティーでの『オークロード討伐』が腑に落ちないのだろう。
考えようによっては、国の最強戦士と戦えるんだから、いい経験になるんじゃないか?
ランクだって、SSかSSSだろう。
「そうだな。いきなり来た訳も分らない奴に、国の重要な討伐を任せるのも不安だろうから、戦うのが一番理解しやすいよな」
俺の返事に、二人の目つきが変わった。
剣士は『ナイル』、魔法士は『コスカ』と名乗った。
「分かった。しかし、観客は制限させて貰う。それに私も興味があるので、観覧しよう」
国王が許可をだして、騎士達の訓練場へとソディックに案内されて向かう。




