23話 恩恵奪取!
「タクト様が、オーク討伐を受けて頂ければ、私からも報酬を御渡し致します」
リラは上手い事、俺を利用したようだ。
「リラ、ちょっと待て! その前に少しふたりだけで話をしようか」
村人達には、少し待って貰いリラと別の場所で話す。
「どういう意図があって俺を巻き込んだ!」
「最近のオーク達は数が増えすぎたのか、森をどんどん伐採していくので困っているのよね。特に、誰かさんがゴブリン全滅させたので、対等に戦う敵も減っちゃったから、余計に困っているのですよ」
話し方は軽い感じだが、明らかに俺が原因のように話している。
恩を仇で返す様な行為だな。
……ここは我慢しておくか。
「とりあえず状況は理解した。それで報酬とは何だ?」
報酬の内容が気になる。
「私の恩恵【複製】と【隠蔽】を御教え致します」
「恩恵を教える? どういう事だ?」
リラに言われてステータスを開く。
すると、恩恵が増えている。
この恩恵は、さっきアルに見せて貰ったものだ。
しかも、リラの【複製】や【隠蔽】もある。
何故、アルやリラの恩恵を習得している?
……奪った。いや、それは無い。
奪ったのであれば、アルが気付くはずだし、リラにもその様子はない。
俺の【全スキル習得】なのか? そうであれば説明がつく。
職業系スキルは、全て把握している。
スキルに必要なスキル値を振れば習得出来る。
魔物に関しては、出会えば自動的に認識して、同様にスキル値を振れば習得可能だ。
恩恵には、スキル値という概念が無い。
ただ、出会っただけで習得可能であれば、既に出会っているリラの恩恵は習得しているはずだ。
習得の条件は、恩恵の内容を把握する事か。
【全スキル習得】に恩恵も含まれているなんて、俺もエリーヌも考えていなかった。
もとより、習得出来ないと思い込んでいたからだ。
この世界にきて、初めてポンコツ女神に感謝した。
「何故、この事に気が付いた?」
俺がリラと連絡を取る際に、樹木に触れた。
樹精霊は、草木に触れた者の情報を読み取ることが出来るらしい。
先日の俺と、今朝のアル。そして今の俺。
状況だけ確認してもすぐに答えは出る。
「もう、先払いは完了しましたから取消は出来ませんよ」
【複製】と【隠蔽】は直感的に理解してしまった為、習得した。
……詐欺に近い。
「分かった、引き受ける」
「ありがとうございます」
一応、恩恵の説明を受ける。
【複製】は、固体であれば何でも二つまで同品質で増やせる。
ただし、生物(花や草木も含)に関しては対象外。
品質を下げても三つ以上増やす事は出来ない。
【隠蔽】は、どんなものでも他人に隠す事が出来る。
まぁ、ほぼ予想通りだ。
「……リラも仲間登録出来るのか?」
「残念ですが、精霊に近い存在の私にはその機能が無いんです。そもそも外部とは出来るだけ接触を避ける様にしてますし……」
……そうか、残念だ。