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238話 初めての王都!

 王都に入ろうとすると、門の所に行列が出来ていた。

 最後尾に並び順番を待っていると、俺が不思議がっている事に気が付いたのか、シキブが行列の理由を教えてくれた。

 王都に入るには身分証明が必要らしく、ギルドに所属している者であれば身分証明証も兼ねているギルドカードがあるので、問題なく王都に入る事は出来る。

 ギルドカードが無い者は、身分証明証が必要になるが身分証明証の発行には、身分証明証もしくはギルドカードを所持している者がふたり付き添って、申請者の身分を保証する必要がある。

 紛失した場合の再発行も同様になる。

 身分証明証は、認証魔法で本人を確認出来る仕組みになっているので、他人は使用出来ない。


 王都で生まれた者は、親が保証してくれるので問題無いが、王都以外で生活をしている者達で身分証明証を持つ者は少ない。

その為、平民は簡単に王都に入ることが出来ない。


 この身分証明をする事により、王都内の犯罪抑止力にもなっているらしく、これだけ大きな都市にも関わらず犯罪件数は、『魔法都市:ルンデンブルク』とそれ程変わらないらしい。

 シキブは、『魔法都市:ルンデンブルク』は犯罪が多い都市ので、あまり比較は出来ないとも話してくれた。



 並んでいると行列が徐々に前に進み、俺達の番になった。

 馬車から降りて門番に身分証明証でもあるギルドカードを見せて、ムラサキの隣に座ろうとすると、シキブから荷台に乗るように言われる。

 荷台に乗ろうとするとシキブから、「くれぐれも問題は起こさないでよ!」と注意を受けるが、俺だって好きで問題を起こしているわけでは無い。

 問題が勝手に寄って来るだけだ。 そう、俺は何もしていない筈だ……

 もしかして、荷台に乗せるのも問題を起こしそうだからか?


 荷台で揺られながら後ろの風景を見ていたが、街の中は活気に溢れている。

 暫く大した事も考えずに荷台からの風景を見ていると、馬車が止まった。


「ギルド本部に着いたから、降りて頂戴」


 シキブに言われた通り荷台から降りる。

 そのまま、シキブ達の後をついて、ギルド会館らしき建物に入る。


 建物の中には、冒険者が溢れ返っていた。

 ジークにあるクエストボードの二倍はあると思われる大きなクエストボードの前で、クエストを見ている者。

 受付でクエストを完了してきた報告をしている者等、知らない冒険者が多数居るのは新鮮な感じだ。


 数人の冒険者達が、シキブとムラサキに挨拶をしてきた。

流石、有名な冒険者だな。 いつも一緒にいる為、一流な冒険者だという事を忘れそうになる。


「シキブ!」


 シキブが大きな声で名を呼ばれる。

 声が聞こえた方を見ると、筋骨隆々な獅子人がこちらに向かって歩いてきた。


「久しぶりね、ジラール」

「思っていたより早く着いたな」

「まぁ、急いで来たからね」

「あと二日は掛かると思っていたから助かる。 それより例の冒険者は彼か?」


 ジラールと呼ばれた獅子人が、トグルを見る。

 トグルはどうしていいのか分からない様子だ。


「ジラール、違うわよ。 その後ろで変な恰好しているのが、タクトよ」


 ……変な恰好って、紹介は止めて欲しい。 【呪詛】のせいと分かっていても傷付く。


「えっ! この人間族か……嘘だろう」

「変な格好しているけど、嘘じゃないわよ」


 変な恰好って連呼して欲しくない。


「とりあえず、俺の部屋まで来てくれ」


 言われるままに、シキブ達の後ろを歩くが周りの冒険者達が小声で、俺の服装について話をしているのが聞こえる。

 内容は聞こえないが、決して良い話をしているわけでは無いのが分かる。

もう慣れたつもりでいたが、やはり心が折れそうになる。



 ジラールに案内された部屋に入る。

 部屋には、虎人族の女性が既に居た。


「改めて自己紹介をする。 俺はギルド本部グランドマスターのジラールだ」


 ジラールに続き、虎人族の女性が自己紹介する。


「私は、サブマスターのヘレンと申します」


 こちらも、ジラールとヘレンに自己紹介をする。

 ついでに俺は『呪詛証明書』を見せて、丁寧語が話せない事と服装が変なのは【呪詛】のせいだと補足した。

 ジラールとヘレンは、「聞いたことも無い変な呪詛だ」と言いながらも納得していた。


 自己紹介が終わると座るように言われたので、ソファに座る。

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