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235話 オリヴィアとの約束!

 『狐人の里』の中央に、里の者達を全員集める。

 そこでオリヴィアから言われた条件を伝える。

 まず、神祠を作る事。

 そこには、エリーヌとオリヴィアの像を祀り、毎日必ず感謝の祈りをする事。

 因みに、エリーヌは俺の信仰する神でオリヴィアよりも偉いと付け加える。

 嘘は言っていない筈だ……


 狐人達はオリヴィアからの条件が、これだけなのに驚いていた。


「お前達が森への感謝が足りないから、忘れないようにしたいんだろう。 因みにエリーヌには、日々の感謝をするように」


 『森への感謝』という言葉に、数人の狐人が頷いていた。

 神祠の大きさは問わない。 教会のような家の中に像を祀るのでも構わない。

 狐人族の感謝が問われるので、大きさ等は注意する様に少し脅してみる。


 大きさを指定されないので、狐人達は困惑している。


「オリヴィア様の期待に応えるように、努力致します」


 ラウ爺が、里を代表して問題ない事を宣言した。

 神祠の建設に関しては問題無いだろう。

 多分、必要以上に素晴らしい物になるだろうと期待してみる。


 これで、ここでの俺のするべき事は終わったので、王都に向かう事にする。

 ライラに「一緒に来るか?」と確認すると、里で少しでも復旧の手伝いをしたいと言うので、王都に着く直前に連絡をして迎えに来る事を伝える。


 討伐して、王都に向かい歩く。

 その間も、シキブはひたすら喋っている。

 男三人は、適当に話を合わしたりする位で、完全に聞き手だ。

 個人的には、これだけ話が尽きないのは凄いと思った。


 陽も沈み始めたので、今日はここまでにして【転移】で、ジークまで戻る。


 シキブとムラサキは、イリアに今日のギルドでの事を確認する為、ギルド会館に寄ると言う。

 俺は、ローラに『狐人の里』の件を報告するので、一緒にギルド会館に寄る事にした。

 トグルとは、ギルド会館前で別れる。


「タクトは、ローラの所に行く前に、私達と一緒に来て貰うわよ」


 何故だ? 特にイリアに用事も無いし、シキブ達は用事があれば道中に話す筈だ……


 不思議そうな顔をしている俺に、


「スレイプニルの事を忘れたの?」


 『奈落の密林』で討伐したスレイプニルの件か……確か、共通クエストだと言っていたな。


「……悪い、完全に忘れていた」


 シキブが、俺を睨んでいた。



 ギルド会館に入ると、受付嬢のユカリが俺達を発見すると、受付から出てこちらに走って来た。


「どうしたの、ユカリ?」


 シキブは、何かあったのかと不安げな様子だ。


「イリアさんがギルマスが戻ったらスグに、部屋まで案内するように言われましたので……」

「何かあったの?」

「いいえ、いつも通りでした」


 シキブは、ユカリの言葉を聞いて、とりあえず安心をする。


 ユカリと共に、ギルマスの部屋に行くと、疲労困憊のイリアが椅子に座っていた。

 イリアはシキブを見るなり、


「ギルマス……なんで、こんなに書類が溜まっているのですか!」

「えっ! いや、その、なんて言うか、色々とあってね……」


 疲れ切った顔で、シキブを怒るイリアはいつも以上に迫力があった。

 シキブも迫力に負けて、言い訳も出来ない状態だ。


「大体、この決裁書なんて、随分前の物ですよ!」


 その後も、御説教タイムは続くが、何故か俺とムラサキも立ったまま隣で聞かされていた。

 座りたいが、今のイリアに話し掛ける勇気は無かった。


「今日は、これ位にしておきますが、明日も帰ってきたら必ず部屋に寄って下さいね!」

「……はい」


 イリアの怒りも、収まった様子なので座って、シキブとムラサキは今日のギルド内の報告を受ける。


「良かった。 特に問題も無い様子で!」

「全然、こちらはよくありませんでしたけど。 そちらは順調でしたか?」

「あっ!」


 シキブは、申し訳なさそうに『スレイプニル討伐』の件を報告する。

 報告を受けたイリアは、大きな溜息をつく。


「確かに、クエスト発注は古いですし、難関の共通クエストなのでボードに貼り出していませんが……」

「そうだろう、俺は悪くないよな!」

「ランクA以上には、必ず御見せするクエストですから、ランクBのタクトさんが知らないのは仕方ありません」


 今回は、これで俺が悪くない事は証明された。


「しかし、ランクBの冒険者が単独討伐で倒せるクエストでは、断じてありません」


 イリアの言葉に、力が籠っている気がするのは気のせいか?


「それと、言いづらいんだけどタクトの話だと、スレイプニルは亜種らしいのよ……」

「えっ! 亜種ですって」


 シキブは話の流れ的に、イリアの迫力に押されて討伐の件で怒られていたので、亜種だとは言いづらかったのが、よく分かった。


「とりあえず、(コア)を出して下さい。 今日は、遅いので明日にでもカンナに鑑定してもらい、ギルド本部に報告しておきます」

「イリア、悪いわね」

「本当なら、ギルマスであるシキブの仕事なんですけどね」

「……」


 何となく分かっていたが庶務業務は、イリアの方が得意なのを確信した。


「ところで、俺が討伐して問題は無かったのか?」


 一応、聞いておく。


「そうですね、報告の際に『ゴブリンロードを討伐した冒険者』と『オークロード討伐に、ルンデンブルク卿から推薦された冒険者』と付け加えて報告しておきます」

「そうね、それならギルド本部も納得するわね」


 嬉しそうに話すシキブを、イリアは鋭い目線で見つめる。

 その目線に気付いたシキブは、下を向きおとなしくなった。


 【アイテムボックス】からスレイプニルの(コア)を出して机の上に置くと、イリアは布を持ってきて(コア)を包み、「預からせて頂きますね」と言い、奥の部屋へと運んで行った。


「もう、俺は居なくてもいいよな?」


 俺への用件が済んだかを確認する。


「えぇ、ありがとう」


 イリアが戻って来たので、別れの挨拶をしてローラの部屋に向かう。

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