234話 里の後始末!
「壊す住居は、この七軒でいいのか?」
「はい、御願いします」
ラウ爺が、頭を下げる。
シロとクロを呼び、解体作業を始める。
スラム街の時の様に俺が、家に【解体】を掛ける。
クロに物理的攻撃で材料をある程度の大きさまで破壊してもらい、シロの魔法でさらに細かくして幾つかの山にする。
その後【浄化】を使い、更地を綺麗にした。
一気に作業をすると危ないので、一軒づつ解体を行った。
狐人達は、目の前で行われているのが「現実の出来事なのか?」と信じられない表情で、作業を見ていた。
それはシキブ達も同じだった。
二〇分程で【解体】が完了する。
「こんなもんでいいか?」
ラウ爺に向かって、確認をする。
「は、はい」
焦るように返事をした。
「それじゃあ、伐採して里を拡張しに行くぞ!」
「しかし、条件が……」
「それは、あとで説明する。 この里が変わらなければ制裁対象になるから、気を付けろよ!」
ラウ爺や、周りの狐人達は『制裁』という言葉に対して、過剰な反応した。
もう一度、範囲を確認して樹を根本から切っていく。
残った切り株は、【転送】を使い根ごと地上に出す。
最後に、伐採した樹と切り株を一ヶ所に集めた。
難しい作業でもないので、すぐに完了した。
「倒した樹や、切り株は住居建築に必要だから、このままでいいか?」
先程同様、驚いている様子で返事が無い。
シキブ達からは、変な視線を送られている。
「おい、聞こえているか?」
もう一度、ラウ爺に声を掛ける。
「あっ! この広さで十分です。 この樹や切り株は、ありがたく使わせて頂きます」
「じゃあ、終わりだな。 あとは……」
オリヴィアと交渉するので、皆を先に里へ返す。
皆が見えなくなるのを確認したかのように、オリヴィアが姿を現した。
「伐採したという事は、条件を承知したという事で、宜しかったですよね」
「勿論だ。 それで、御神体は今から作るのか?」
「はい、とりあえずエリーヌ様からですね」
片手を樹に当てると、少しづつ姿を変えて徐々にエリーヌの姿になる。
「……デカくないか?」
完成したエリーヌの木像は、二メートル弱ある。
「えぇ、私のは実物大にするので、エリーヌ様は一回り大きく致しました」
「……実物大?」
「私が、リラより小さいなんて変でしょう?」
理由を説明する顔も笑顔だが、明らかにリラに対して対応意識があるようだ。
「まぁ、オリヴィアの好きにすればいい」
笑顔で、実物大の自分の像を作り始めた。
エリーヌは祈っているポーズだが、オリヴィアのは髪が靡いて片手を前に出して、何かを癒しているポーズを取っている。
このままいくと、樹精霊達の間で、より派手な木像造りになる気がする……
とりあえずオリヴィアは、満足した様子だ。
あとは、俺が里に神祠を造って、祈って貰えば終わりだ。
「ところで、この森にはゴブリンやら、オークの集落は無いのか?」
これだけ広い森なので、少し気になり質問をする。
「勿論、あります。 ただ、この森には人族でも攻撃力が高い者の集落しかないので、集落を襲う事は余程の事が無い限り無いですね」
「通りがかりに見つけた冒険者や商人を、襲うくらいか」
「そうですね」
「今度、森の中を探索したいと思うから、宜しくな!」
これだけの広さの森なので、お宝探し感覚で探索をしたいだけだ。
「全然、問題無いですよ。 お弟子さんのお仲間も蓬莱山の麓に居られる筈です」
「弟子の仲間? アルかネロの集落がここにあるのか?」
「いえ、違いますよ。 もう引篭もられて何年も経っていますから」
「引篭もり? ……そういえば、アル達と仲の良い第三魔王の……なんて名前だったかな……」
「ロッソ様で御座います」
俺の記憶悪さをクロが気付いて教えてくれる。
「そうそう、ロッソだ。 たしか、ダンジョンに引きこもりだとか言っていた気がするな」
「はい、そのダンジョンが蓬莱山にあります」
それはとても、興味深い話だな。 ダンジョン攻略はしてみたい。
「タクト、変な事考えているんじゃないでしょうね?」
知らないうちに笑っていたのか、シキブに感づかれた。
誤魔化すように答える。
「変な事って、冒険者ならダンジョン攻略してみたいだろう?」
「普通はそうだろうけど、魔王のダンジョンなのよ」
「そうか、最初にそのダンジョンを攻略すれば、他のダンジョンは楽勝に攻略出来るって事だな!」
シキブ達が、またしても冷たい視線を俺に向ける。
「ん、一緒に行ってくれるのか?」
「……行くわけないでしょう」
「タクトは、俺が思っていたより馬鹿だったんだな」
「お前はもう喋るな!」
……おかしいな? 一緒に行きたいんじゃなかったのか?




