22話 樹精霊の思惑!
村長と数人の村人とで、森の入口まで来た。
入口と言っても、少し樹木が分かれていて道が出来ている程度で、入口と言われなければ分からない。
今も昔も、ゴンド村はここから森に入っているようだ。
樹に手を当てて、リラとの連絡を取ってみる。
別れ際に、この森の樹木とは意思が繋がっているので、触れて話しかけてくれれば、会話が出来ると教えてくれていた。
「タクトだ! リラ、聞こえるか?」
「はい、何か急用ですか?」
「森の事で、ゴンド村の村人に説明が必要なので、姿を見せられるか?」
「本来なら、むやみやたらと姿を現さないのですが、タクト様の御願いなら仕方ありませんね」
樹木の影から、リラが姿を現した。
突然、目の前に美女が現れて驚く村人達。
「コイツは樹精霊のリラだ!」
樹精霊だと分かると、それぞれ近くの者と話を始めた。
たしかに、男性を誘惑して樹の養分にしてしまうから脅威でしかない。
見た目で忘れていたけど、リラは人族か、魔族のどちらだ?
「まさか、生きているうちに御会い出来るとは!」
村人達は跪いて、リラに対して祈りのような恰好をした。
先祖代々、森と共存しているゴンド村の人達にとって、樹精霊は精霊扱いらしい。
樹木を伐採する際も、木の実を取る際も樹精霊に感謝を忘れずに過ごしている。
養分にされるのは、森に対して破壊をする等の行為をする者だけという認識のようだ。
樹精霊を、粗末に扱う者には森の加護は受けられないと、言い伝えられてきた。
リラもその事は、当然知っている。
俺の願いもあったが、ゴンド村の村人達だったから素直に応じてくれたのかも知れない。
「リラ、現状の森の事や経緯等を説明してくれ」
リラは笑顔で頷くと、現状の森について説明を始める。
まず村の脅威の一つであったゴブリン達は全滅して、今はいない。
そして、全滅させたのは俺で間違い無い。
大きな集落があるのはオークのみだが、集落を移動する様子は今のところない。
森の外側に居た弱い魔物は、徐々に森の中央に集まっている。
森の中央に居た動物達は、行動範囲が広がり森の外側にも移動している。
説明が終わると村人達は皆、喜んでいる。
今迄の脅威が少しでも減ったのだから、当然だろう。
「オークも心配であれば、そちらのタクト様に御願いすれば、解決してくれると思いますよ」
俺を見て笑う。
その言葉を聞くと、村人達が一斉に視線を俺に向けた。
コイツ、サラッと爆弾発言しやがった……。