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222話 マリーの直感!

 シロとクロが子供達を連れて帰って来たので、俺達も帰る事にした。

 ミランダから良い返事を貰えると嬉しいが……


「なぁ、ふたりに相談があるんだが……」

「相談って、既に決定事項なんでしょ!」

「そうそう!」


 ふたり共、俺の性格がよく分かっている。


「実は、ふたりに商人ギルドの試験を受けて欲しいと思っている」


 俺の言葉に、ふたりの足が止まる。


「……どういうこと?」


 マリーが少し怒り気味に話す。

 やはり、マリーは勘が鋭いな……


「俺が居なくても、十分に経営が出来ると思ってな。 当然、困ったときや相談には乗るつもりだ」

「えっ! どういう事?」


 フランは、事情が分かっていない様子でいる。


「簡単に言うとタクトが、店の経営から退くって事よ!」

「えっ!」


 フランも事情が呑み込めたようだ。


「少し違うぞ。 これからは、マリーやフランの采配で全て決めてくれればいい。 俺に聞かなくても問題ないレベルになってきているだろう?」


 マリーは、不機嫌な顔をしている。

 フランは、反対に不安そうな顔だ。


「マリーもフランも、信頼しているからこそ言っている。 必要な時は当然、呼んでくれればいい」

「タクトは、全然分かっていないわね!」

「何がだ?」

「タクトが居たから、私達は頑張ってこれたのよ! まだ、恩を返していないじゃない!」

「そうよ! いっつも自分で勝手に決めて!」

「そうだな、ふたりには迷惑かけてばかりだったな。 けど、いずれは自分の力でやる事になるだろう? いや、俺としてはそうなって欲しいと思っている。 それが今なのか、一年後なのか五年後なのかの違いだ」


 ふたり共無言だ。


「すぐにって訳でもないが、商人ギルドのランクがあれば安心するし、もし俺に何かあっても、それだけで食べていけるだろう?」

「何かって、なによ!」

「それは分からないが、冒険者であれば覚悟をしておかなければならないだろう?」


 冒険者というよりは、ユニークスキル習得で、突然死ぬ事も考慮しておく必要がある。

 この事は当然、今の段階ではマリーやフランには話す事が出来ない。


「商人ギルドになっても、所属は『四葉商会』にするからね」

「当たり前だろう。 マリーとフランが俺を裏切るなんて考えた事も無いからな!」


 マリーは諦めた様子だ。


「経営には口出さないけど、アドバイスや物の調達はするって事ね」

「あぁ、その通りだ。 月に一度位は顔を出すから安心してくれ」

「赤字になっても、文句言わないでよ!」

「マリーなら、絶対にならない自信があるから大丈夫だ!」

「過剰な期待されても困るわ……」


 少し照れているようだ。


「人材補充の件もあるがフランには、少しづつ結婚式の写真から、グランド通信社の仕事に変われるように努力はしてくれ」

「分かったわ。 私はマリーの下で働けばいいのよね?」

「あぁ、不満ならマリーの代わりに店主になるか?」

「冗談でしょ! 私にはマリーのような事が出来ないから確認しただけよ!」


 フランが慌てている横で、マリーが真剣な顔だ。


「指輪の調達とかは出来ないわよ?」

「それは考えがある。 そこら辺も解決していくから安心してくれ」

「……グランド通信社で、物質転移装置を見せてくれって言っていたのは、そう言う事なのね」


 相変わらず、マリーは鋭いな……


「他にもあるんでしょ! タクトの相談事がこれで終わりの訳ない」


 ……本当にマリーは、俺の思考を呼んでいるんじゃないのか?

 本気で、ステータス確認したくなる。


「スラム街の跡地に、孤児院を建てようと思う。 そこで計算や役に立つ知識も教えればと思っている。 そして可能であればその横に『ブライダル・リーフ』を移転したいとも考えている」

「……大がかりね。 けど、そんなタクトだから、今迄一緒に居たのかも知れないわね」

「出来るかどうか、分らないけどな。 子供達が安全に暮らせる孤児院だけでも建てたいな」


 俺の無茶な要求にも付いてきてくれるこのふたりには、本当に感謝しかない。

 ただ、前世で両親を早くに亡くした、俺の記憶が孤児院に執着しているのかも知れない。

 生まれてきた環境で、人生が左右されるのは許せないのかもな……


「そうだ、ふたりとユイは名刺を作っておいてくれ」

「そうね、グランド通信社の件もあったし、早々に発注しておくわ」

「頼む」

「名刺には、『四葉商会』と店名の併記でいいのよね?」

「その辺も含めて頼む」

「……相変わらず卑怯な答え方ね」


 困った顔をしながらも、何度も見ている頼もしいマリーの顔だ。

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