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221話 孤児院の実情!

 話をしていた部屋に子供達が集まって来た。


 俺は、シロとクロを呼んでいたので、サジとサーシャには関係者と説明をした。

 サジとサーシャには、俺が奢るからガイルの店で、夕飯は好きな物を食べさせて欲しいと頼む。

 当然、断られるが子供達の栄養不足は分かるので、その件を前面に出すと何も反論が出来なかった。

 我ながら、卑怯だとも思ったが仕方ない。

 シロとクロに、


「子供達を頼んだぞ! 居ないと思うが、ちょっかい出すような奴が居たら再起不能にしていいから!」

「はい、御主人様」

「承知致しました」


 人見知りの子供も居るが、シロの愛くるしさと話術で打ち解けて一緒にガイルの店へと行った。

 ミランダには残って貰うので、サジとサーシャを含んだ三人分の弁当をクロに頼んだ。


「タクト殿、この子がミランダになります」


 ミランダは、兎人族の女の子? だ。


「初めまして、ミランダです」


 丁寧に御辞宜する。

 フランが、俺達を紹介すると驚いていた。

 それなりに知名度があるんだな……。


「その前に、ちょっとだけいいか?」


 サジに、助成金の件を伝える。


「今、席を外していた数分の間にですか?」

「あぁ、そうだ。 他にも困った事があれば連絡してくれ。 出来る限り協力はする」

「失礼ですが、なんでここまで親切にしてくれるのですか?」


 サーシャが質問をする。


「子供が好きだからだ! それだけじゃあ、理由にならないか?」


 俺の答えに、フランとマリーが笑う。


「サーシャ、ゴメンね。タクトは別に怪しい事は考えていないから安心して、困っている人を見て見ぬふりが出来ないだけだから」

「そうそう、変な格好だけど、他人を騙すような事はしないから」


 それは、フォローなのか?

 それ以前に、俺の発言に何故笑った?


「まぁ、俺はともかくフランとマリーだけでも信頼してくれればいいから……」


 自分で言っていて、少し悲しくなる。


「そのうち、領主の使いが来ると思うから、必要な金額を伝えてくれ。子供がヒモジイ思いをしないように頼む。領主の使いだからと、少ない金額を伝えるのは駄目だからな」


 俺は頭を下げて頼んだ。

 この行動が意外だったのか、フランとマリーも一瞬固まった。


「タクト殿、頭を御上げ下さい」


 サジの言葉で頭を上げる。


「助成金の件は今後という事にして、ここに来た目的をフランから説明してくれ」

「そうね」


 フランは、ミランダに仕事の手伝いを頼みたいと伝える。

 暫く手伝って、無理だと思えば辞めてもいい。

 働いた分だけの賃金は支払う。

 休みも必ず与えるし、ここから通うのが難しいようであれば、部屋を用意すると説明をした。


 ミランダは、嬉しそうだがどこか不安そうな表情もしている。

 この顔は、以前に俺がフランを誘った時と同じだ。


「不安もあるだろうが、このフランも素人からここまで成長しているから、大丈夫だ!」


 一応、フォローしてみるが、フランから「失礼ね!」と文句を言われる。

 暫く考えている。


「アルパの事が、気がかりなのか?」


 サジが、心配事に心当たりがあるのか、アルパという名を口にした。


「アルパとは?」


 アルパという名の人物について聞いてみる。


「はい、ミランダの妹になります。まだ七歳ですので離れ離れになるのがツラいのだと思います」

「それじゃあ、アルパと一緒で問題無い。仕事の手伝いをするもいいし、勉強するなら部屋で勉強してもいい」


 確かに、姉妹共に離れるのは可哀そうだ。


「そうね、誰かが交代で面倒を見られると思うから、問題は無いわね。他にも仕事したい子がいたら教えて貰えるかしら?」


 マリーも同調してくれた。

 ……【適材適所】!

 グランド通信社の副代表補佐であるアンガスから、習得したこのユニークスキルであれば、合った仕事が分かる。

 希望者が居れば、確認してみる事にしよう。


「一〇代の子達は、働きに出たいと言ってくれてはいますが、地位も学力もありませんので……」

「それぞれが得意な事があれば、教えてくれ。可能な限りは協力する」

「ありがとうございます」


 学力か……そもそもこの世界(エクシズ)の学力自体が低いからな。

 店側にすれば断るには、いい材料だろうな。


「すぐに答えは出さなくてもいいから、じっくり考えてみてね」

「はい、ありがとうございます」

「ところで、施設内を案内してもらってもいいか?」

「はい、構いませんが?」


 サジは不思議そうだった。

 施設内は思っていた以上に、老朽化が激しかった。

 床は抜けている箇所を補修した為に段差が出来ていて、危険な状態だ。

 雨漏りもしているのか、天井と床にシミが幾つかある。

 サジとサーシャが、頑張って修繕している姿が浮かんできた。


「助成金で、家の修理は出来ないのか?」

「……そちらに金を回すよりも、ひとりでも多くの子供を助けたいと持っているので、どうしても後回しになってしまいます」


 ……そういうことか。


「もし、違う場所に新しい施設を造ったら、引越しも可能なのか?」

「……そうですね、この場所は思い出もありますが、子供達の事も考えると新しい方が良いですから、引っ越しを選びますかね」

「思い出よりも子供達の安全か……」

「はい」


 そう答えるサジは、優しい顔だった。

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