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211話 不安的中!

 フローレンスを呼び出し、エルフの集落まで案内してもらう。


 道中、レイは不安そうだ。

 俺もかける言葉が見つからない為、無言のまま進む。



 切り開いた場所に出ると、数人のエルフが居た。

 俺を見て構えるが、フローレンスが説明をすると攻撃態勢を解いた。


「タクト様は、ここまでです」


 俗世との繋がりを断っているエルフ達だから、人間族の俺が集落に入る事は許されないらしい。

 信用されれば入る事も可能だが、今は『大樹の祝福』を見せて、強引に入るのは違う気がした。


「まぁ、仕方ないのでここで待つから、ゆっくり話してこい」


 緊張しているレイを送り出す。

 足取りが重いまま、集落の奥へと進んでいった。



 フローレンスに、樹精霊(ドライアド)の上下関係について聞いてみた。

 明確な上下関係は無いが、受け持つ森林の大きさや、樹の重要性である程度はあるようだ。

 『世界樹の庭園』と呼ばれている管理者『フォーレス』が一番上で、次に『蓬莱の樹海』の管理者『オリヴィア』になる。

 『奈落の密林』のフローレンスや、『迷いの森』のリラは同じだと説明してくれた。


「五人と聞いたが、あとひとりはどうなんだ?」

「……そうですね」


 表情が硬くなった。

 もうひとりは、『枯槁(ここう)の大地』と呼ばれている管理者『イザベラ』になる。

 しかし、ここ数百年は管理している土地に植物が生えない土地になってしまい、生存は確認出来るがどうなっているかは分からないらしい。

 草木の植物が生えなくなった原因は、人族が戦争に使った武器が関係しているそうだ。


「管理している場所の呼び名も、その時代によって変わります。 私もイザベラが心配ですが……」

「分かったよ、そのうち『枯槁(ここう)の大地』と言われる土地に行って確認して来てやる!」

「ありがとうございます。 でもその前に、フォーレスに会った方が良いと思います」

「そうなのか?」


 『世界樹の庭園』は場所も不明な為、存在確認されずに都市伝説として語り継がれてきた。

 しかし、フローレンスとの会話では存在している事は確認出来た。


「……場所は、教えてくれるのか?」

「紋章が教えてくれます」


 特定の場所に近づくと、紋章が光始めて徐々に光が強くなっていく。

 『大樹の祝福』に反応して、『世界樹の庭園』が姿を現すという事だ。


「分かった。 俺のスキルを使って会いに行ってみる」


 フローレンスは、何も言わなかった。

 俺のスキルというのは、【全知全能】だ。

 質問すれば、場所の特定は可能だ。


「そういえば、リラが今回の件はフローレンスに貸しって事にすると言っていたぞ?」

「まぁ、そうなんですか? もしかしたら、大きな貸しになるかも知れませんね……」


 レイと共に、男性が一緒にこちらに向かって、歩いてきた。


「貴方が、タクト様ですか?」

「あぁ、そうだ」


 男の名は『カリム』と言い、この集落の長を務めていると名乗った。

 カリムも含めて、大多数は戻って来る事に異論は無いがやはり、奴隷になったレイ達を良く思わない者も居るらしく、例え無理にここで過ごしても嫌な思いをするだけだと説明をされた。

 カリムは出来る限り、反対している者達に説得をするが、その間は『迷いの森』で世話になった方が良いと提案された。

 レイもその意見に従ったようだ。


「分かった。 俺がどうこう言う問題でも無いから、レイを送り届ける」

「御願い致します」


 カリムは、頭を下げた。

 その横で、悲しそうな顔をするレイが居る。


 レイを連れて、フローレンスと森の外近くまで歩く。

 行き同様に、言葉が出てこない……

 こういう時、本当に俺は無力だと感じる。

 お世辞や、気の利いた言葉が掛けれれば、レイも少しは楽になるだろうに……


 フローレンスが振り返り、何も言わずに頭を下げて消えて行った。


「……戻るぞ」

「はい」


 悲しげなレイを連れて、『迷いの森』に戻った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 レイからの報告を受けたノエルとカエラは、不安が的中してしまい落胆の表情だ。

 結論が出てしまってからは、無言のままだ。


 元気付けるつもりで、声を掛けてみる。


「何か、困った事があれば俺に連絡しろ!」

「……ありがとうございます」


 レイ達は、そう返すのが精一杯の様子だ。


 連絡用にと、レイ達と仲間(フレンド)登録をした。


「近くのゴンド村も協力的だからな、元気出せよ」


 何も言葉が返ってこない。

 リラを呼んで、レイ達の事を任せて立ち去る事にした。

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