20話 俺って、ボッチだ!
「グランニール、何をしておる」
アルシオーネが、グランニールを睨んでいる。
(アルシオーネ様が負けた事を、皆に伝えてます)
魔族に取ってアルシオーネが負けた事は信じられないらしく、色々な魔族に連絡している。
その光景に違和感を感じた。
「……あれは、どうやって連絡を取っているんだ?」
俺の【念話】は神や魔物と話す恩恵だ。
だとすると今、グランニールが他の魔物と連絡を取っているのは、別の方法になる。
「ステータスから、仲間登録している奴に連絡して話しているだけだが?」
アルシオーネが不思議そうに答えた。
……えっ!
何ですか、その機能。
今迄、ボッチだったので使う事がなかったとはいえ、そんな機能は知らない。
ステータスを確認すると、確かに右下にページを捲る様な記号がある。
その記号を押すと、仲間登録者一覧になった。
当然、真っ白で登録者は無しだ。
……あれ?
俺って友達作りから始めなくちゃいけないのか。
登録者がひとりもいないのは『MP』『HP』共に減ることはないが、なんかダメージが大きい。
「アルシオーネ、お前一番が好きだよな」
「おぅ、一番は気持ちがいいから好きだぞ!」
「……俺の最初の仲間登録者にしてやってもいいぞ!」
俺自身、何を言っているんだと思った。しかも、相手は魔王だ!
「なんだと!」
アルシオーネは喜んで、早速登録の作業を始めている。
目の前に『アルシオーネより仲間登録申請(はい/いいえ)』という文字が現れた。
考える間もなく『はい』を押した。
俺は、魔王と仲間になった。
思っていた以上に、喜んでいる自分が居る。
「これからは、妾のことをアルと呼んでいいぞ!」
友人の証のあだ名の様なものか?
「あぁ、よろしくな! アル」
しかし、ある程度知能があれば、魔物同士でも連絡が出来るという事か!
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「なぁ、ところで魔王ってなんなんだ?」
気になり聞いてみた。
魔王というのは、特定の魔族?に対して魔族達が恐怖や尊敬等を意識し始めると、その意識の集合体が世界に影響を与えて新しい魔王が誕生する。
魔王になると、ステータスの称号が『第〇柱の魔王』となるので分かる。
……ステータスに『称号』なんてあったようだが記憶に無い。
魔王同士の繋がりはそこまで強くないらしい。
アルシオーネとネロ、ロッソは、最初の魔王三人で永くその座に君臨している。
残りの三柱は、時代と共に変わっている。
アルシオーネとネロは仲がよく、頻繁に連絡は取り合っている。
魔王達の時間感覚が良く分からないが……。
ふたり共、基本自分主義で、自分に危害が無ければ世界がどうなろうが関心が無い。
ロッソも仲は良いがダンジョンの奥に引きこもっている為、連絡で話す位でここ数百年程、姿は見ていない。
前回の転移者も最終的には魔王の第五柱となり、第六柱の魔王と一緒に好き放題暴れたらしい。
『上級神』が裁いた事になっているが、『上級神』から依頼のあったアルシオーネとネロが、恩恵習得を条件に倒したのが真相らしい。
長年こういう事をしてたから、恩恵が多いのか?
アルシオーネやネロは『魔王』とはいえ、実質的にこの世界の『番人』も兼ねているという事だな。
本人達はそんな気が全くないだろうが……。
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「アル、頼む」
グランニールに運んで貰うのは止めて、アルの【転移】にした。
俺達は『迷いの森』から『ゴンド村』の近くまで一瞬で移動した。
これが、【転移】か! と感動した。
女性達は驚いている。
「ありがとな!」
「友人の頼みじゃ! 遠慮するな」
この場合の『友人』とは、クロの事か? それとも俺か?
追求するのもヤブヘビなので、聞かずにおく事にした。