191話 ミクルの家名!
翌朝、リビングに全員が揃ったので、昨夜からの状況を説明した。
話を進めていく中で、フランとマリーにユイが自分達も元奴隷だと話してくれたので、より話しやすい環境になった。
五人共、俺が【転移】で行ける場所では無かった。
一番近い場所のミクルの屋敷でも、【転移】可能な場所から数百km離れている。
リンカに至っては、集落の場所が良く分かっていない様子だ……
【全知全能】にリンカの集落を聞くが質問が的確でない為、回答不能だった。
狼人の知り合いは居ないもんな……
人脈の広さで言えば、シキブかムラサキ、エイジンだな。
この中であれば、シキブになるか。
シキブに連絡を取り、家まで来て貰う事を伝えると、「今から行く」と返事をしてくれた。
ミクルは身なりや話を聞く限り、それなりの御嬢様っぽい。
このまま帰しても、内通者により再度同じ事が起きる可能性がある。
ミクルとリンカは、ここで暫く暮らせる。
すぐに『迷いの森』に移動するとはいえ、エルフ三人娘が人に見られると厄介だ。
幸いにも、場所の特定は出来ている。
俺が昼夜走り続けて、その場所まで行くのが最善だろう。
リラ次第だが、状況によっては一番最初に送った方が、良いかも知れないな。
シキブが下から呼ぶ声がしたので、二階まで上がって貰う。
「何? 急用?」
扉を開けてスグに話しかけてきたが、エルフ三人娘を見ると無言になった……
俺的には、この状況は想定内だ。
シキブにも、簡単に昨夜の状況を説明する。
奴隷契約については、俺以上に感情を表に出して怒っている。
家を破壊しないように、注意をする。
「狼人族の集落ね……この街のギルドメンバーには居ないけど、他の街のギルマスが狼人族だから聞いてみるわね」
流石はシキブだ、人気者だけはある。
情報は多い方がいいので、リンカの名前も伝えておく。
「ミクル、家名を教えてくれるか?」
「……ルンデンブルクと言います」
「ルンデンブルクですって!」
連絡を取ろうとしていたシキブや、フランとマリーも驚いていた。
「そんなに凄いのか?」
「当たり前よ! 王妃様のご親族よ!」
「ミクルって、貴族でも上の方なんだな?」
「一応、そうですね」
苦笑いをしている。
「そうすると、御父上はダウザー様ですよね?」
「はい、そうです」
シキブの質問に、ミクルが答えた。
ミクルも自分自身の危険も考えて、あえて名乗らなかったのだろう。
しかし、そこまでしてミクルを奴隷にする理由があるのか?
王位継承権で言えば、血筋だけだから外れているし、殺せば済む話だ。
生かしてく理由とすれば、人質しか考えられない。
金目的か、脅しによる何かしらの強要……
身分を隠して、ミクルの親に会うのは難しいか。
リロイに確認して知り合いであれば良いのだが、地位が違い過ぎるか!
それとも、夜に忍び込むか?
一歩間違えば、犯罪者だな……
悩んでいる俺にシキブが話しかけてきた。
「タクト! これはもう、あなただけの問題じゃないのよ!」
ミクルの家系もそうだが、エルフとは王国との間に干渉しない条約が交わされている。
そのエルフを奴隷にしようとする者が居るとなれば、国として大事になる。
「そうか、大変なんだな」
「貴方は、相変わらずね……」
「トラブルメーカーで、スマン!」
笑いながら謝ってみるが、シキブは真剣な顔をしている。
それだけ、重要な事なのだろう。
「とりあえず、極秘で信用出来る者だけに警護をさせるわよ?」
「ん~、気持ちは分かるけど、極秘でも絶対秘密は漏れるから、シロとクロが居るから大丈夫だろ!」
「また、貴方はそんな簡単に!」
「ライラの結界もあるし、なにかあれば俺が直ぐに戻ってくるから!」
シキブは納得出来ていないようだが、俺達の実力を知っているのでギルド会館前からムラサキが、建物内はトグルが警備する事で落ち着いた。
俺は、リラの所に行くのでシロとクロに、ミクルの護衛を任せた。
ライラには、三階とミクルの部屋の【結界】を頼み、シキブには狼人族のギルマスとの連絡を頼んだ。