189話 エルフの不思議な術!
三人の話から、荷馬車は全部で三つあり、その内の二台が奴隷用で買い手の有無によって分けられていた。
奴隷商人は、七人程の護衛を連れて街から街へと移動していた。
ミクルはメイドとふたりで、リンカは仲間三人、レイも仲間三人と奴隷になっていたが、先程のサンドワームの襲撃されたが、奴隷商人の命令で動けなかった。
最終的に、生き残ったのは三人だけだった。
「先程の場所に戻る事は出来ますか?」
レイが、急に慌てた様子で、尋ねてきた。
可能だと答えると、スグに戻って欲しいと言う。
理由は後で聞くとして、このまま置いていく事も出来ないので、襲撃場所に移動する事にする。
俺の近くに集まって貰い【転移】で移動するが、初めて【転移】を経験するのか信じられない様子だ。
本当なら隠しておきたいのだが、状況的にそんな事も言っていられない。
地面に線を引きミクルとリンカには、
「何があってもここから動くな!」
少し強めの口調で話して【結界】を張った。
レイは辺りを見渡して、地面に手を置いて、何かを唱えている。
魔法に似た術を使うと、地中から二体のエルフが浮かんできた。
……精霊魔法か?
レイはそのまま、身体に触り何かを唱えたが、何も変化がない。
見た感じは息をしていない様に見える。
「【治癒】か【回復】使えますか?」
焦った様子で聞いてきたので「両方使える」と言うと、手伝って欲しいと助けを求められたので、【治癒】と【回復】をエルフに掛ける。
レイは、あっという間に傷が治っていたので驚いていた。
レイは、ふたりに対して必死で呼びかけている。
死んでいたと思われたエルフが、レイの呼びかけに反応したのか、意識を取り戻した。
三人は、抱き合って喜んでいる。
エルフ達はそれぞれ『ノエル』と『カレラ』と名乗り、助けてくれた事を感謝された。
詳しく話を聞こうとした瞬間に、地面から振動を感じた。
どうやらサンドワームが、こちらに気が付いたようだ。
すぐに三人の周りに【結界】を張り、
「全員絶対に動くな!」
念を押す。
サンドワームを呼び寄せる為に、少し離れたところで地面に振動を起こす。
徐々に振動が大きくなり、足元の土が大きく盛り上がり、サンドワームが姿を現した。
跳ね上げた俺を飲み込むかのように、口を開けている所へ、【火弓】を連続で打ち込む。
ダメージを受けたサンドワームは、向きを変えて再び地中に潜ろうとしていた。
地上に見えている身体の一部を持ち上に放り投げようとすると、後ろから別のサンドワームが姿を現した。
複数いる事は想定していなかったので、一瞬焦ったが対応出来ない事も無いので、慎重に逃がさないように一体づつ倒す事にする。
放り投げようとしていたサンドワームを、力一杯空中に放り投げる。
思ったより重くないので、かなり上まで飛んでいったようだ。
投げ終えた体勢の俺は、サンドワームに絶好の餌食になり食べられた。
口? の中は泥臭いのと腐敗臭が混ざったような臭いがする。
【火弓】を乱れ撃ちをして、【雷撃】で更に攻撃をする。
サンドワームは、たまらず俺を吐き出した後、逃げる様に潜る姿勢を取った。
先程のサンドワーム同様に掴んで、弱めの力で空中に放り投げた。
空中で自由を失ったサンドワームは、絶好の的と化しているので【火弓】の連続攻撃でトドメを刺した。
数十秒後に一体目のサンドワームが落ちてくる姿を発見したので、同じ様に【火弓】で攻撃する。
【解体】をして、周囲に危険が無い事を確認して、全員の【結界】を解除する。
全員が、目の前で起きた出来事が信じられない様子だ。
「とりあえず、さっきの場所に移動するぞ」