表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

173/942

172話 作業方法の見直し!

 家に戻るとマリーが頭を抱えて、メモとにらめっこしていた。


「ただいま! ってか、どうしたんだ?」


 疲れた表情で俺を見て「おかえり」と言うと大きなため息をつく。


「ちょっと、問題があってね」


 マリーは、俺にメモを見せた。

 同じ時間に、二組の予定がある。

 ……ダブルブッキングか。


「この二組だけか?」


 心配になり確認する。


「えぇ、今のところはね。 けど今後同じ問題が起きるから対策を考えていたのよ」

「なにか、良い案はあったのか?」

「……無いわね」


 マリーに受付の手順を聞いてみる。


 最初に、名前と住所の確認をしてから、指輪の説明をしてから撮影所の案内をして、最後に撮影日を予約して、正式契約になる流れだ。

 以前と変わってはいない。


「この紙はなんだ?」


 受付でメモを取り、それを他の紙に移す作業をしている。

 原因は、それじゃないか?

 一日一枚として、あらかじめ時間を書いておき、契約の際に直接記入する事にする。

 その際に、契約書にある番号のみを書いて、他の客へは誰かが分からない様にする。


「そうね、それなら何とかなるわね。 ただし問題はフランしか転写出来る人が居ないのよね」


 たしかにそうだな。

 フランを呼んでみると同じように疲れていた。


「お疲れ!」

「疲れたわよ~!」


 フランにも問題点を話して貰う。

 やはり、撮影と【転写】の作業が短時間だと厳しいようだ。

 ドレス写真と契約写真の度に、移動すると言うのも要因だ。


 予想はしていたが、思っていたよりも早くこの問題が起きたな……


 ライラが心配そうに見ているのに気づく。

 手招きをして呼ぶと、走って俺の所に来た。


「お疲れ様」


 頭を撫でてやると喜んでいた。


「上で、飯でも食って考えるか?」

「……まだ、誰も作っていないわよ」

「悪かった。 ガイルの店で食べるか」


 ザックとタイラーは、トグルと特訓中みたいなので、トグルに連絡してガイルの店にいる事を伝えた。


 店内に入ると、お客は数人だった。


「よっ、ガイル」


 挨拶をして空いているテーブルに座る。

 最近は、シロとライラが俺の両隣に必ず座る。

 ユイとリベラは緊張しているのが分かる。

 反対にお疲れモードのフランとマリー。


「好きなもの頼んでいいぞ!」


 クロに、ユイとリベラにメニューの説明を頼んだ。


「あぁ、なんか力が出るような料理で良いわよ!」

「そうそう、疲れすぎて何も考えられない」


 この姿を見ると経営者としては、心が痛むな。

 皆、希望が無いので適当におすすめを注文した。


 料理が来るまで、問題点の話を再開する。

 再開を始めるとスグに、ユイが手を挙げて発言をした。


「私でよければ、【転写】のスキルを獲得出来るように努力します」


 いきなりの宣言に、フランが一番驚いたようだ。


「ユイ、力になりたいからって簡単に決断しちゃダメよ!」

「……はい」

「けど、ユイが力になりたいと思って言ってくれたのは、分かっているから。 ありがとう」


 ユイなりに力になりたいのは、ここにいる皆が分かっている。

 しかし、簡単には習得出来ないし、職業には向き不向きもある。


「【転写】のスキル習得は難しいのか?」

「そんな事もないわよ。 情報士の初期スキルになるわね」

「ユイもリベラも、職業は慎重に決めて欲しい。 やりたい仕事のスキルでないと後で後悔するからな」


 二人共頷いた。


 しかし、どうするか……


「受付と契約の場所を分けて、フランさんの負担を減らしたらどうですか?」


 たしかに、その案は考えていたが、そうすると人員が二名必要になる。

 ユイとリベラには荷が重すぎる。


「いい案だが、人員が足りないな」


 ライラの頭に手を置き、言葉を掛ける。


「気にせずに、これからも思ったことは言ってくれよ!」


 ライラは小さく頷いた。


「マリー、予約はいつまで入っている?」

「サイズ特注の人を除けば、三日後までね」


 俺は、営業時間等について提案をする。

 明日からの受付作業は午前中として、一時間前に受付予約は終了する。

 午後は撮影のみにすれば当然、予約の御客だけになる。


 フランと、マリーは考えているが、


「そうね、午前中であれば数量限定でなくなるし負担は減るわね」

「私も、その案で良いわよ」

「『MP回復薬』は飲みすぎるなよ!」

「……はい」



 フロア担当のフィデックが、料理を運んできてくれた。

 料理が半分位出されると、トグル達が入って来た。

 心なしかトグルが疲れている様に見える。


「お疲れ!」


 トグルに声を掛けると、「あぁ」と気のない返事が返って来た。

 席を詰めてザックとタイラーを座らせる。

 ザックとタイラーは、元気に座った途端に食事を始めた。


 シロとライラに席を立つと言って、トグルとカウンターに移動した。


「どうしたんだ?」

「今迄まともに指導したことが無かったんで、疲れただけだ」

「人に教えると、気付く事もあるだろう」

「確かにな。 基本が大事だと、改めて思い知らされたよ」

「頑張れよ、トグル師匠」


 言い返す元気も無い様子だ。


「トグルは、いつ頃から冒険者を意識するようになったんだ?」

「物心ついた時には、冒険者を目指していたな」

「早いな」

「あぁ、強くないと生き残れない世界だし、俺は一本角だったしな……」

「俺には分からないが、角の数はやはり重要なのか?」

「……力の象徴みたいなもんだ。 一本角は常に劣等感があるからな」

「あいつ等もそうか?」


 ザックとタイラーを見る。


「あいつ等は集落で育っていないから、あまり感じないかも知れないな……」


 羨ましそうな目で二人を見ている。

 俺達の視線に気が付いたリベラが席を立ち、こちらに来た。


「トグルさん、弟達を指導して頂きありがとうございました」


 トグルに頭を下げて礼を言う。


「いえ、大したことはしてませんので、これ位であれば毎日でも引き受けますよ」


 照れながら、答える。


「ほぉ~、毎日ね」


 俺は、その言葉を聞き逃さなかった。


「ザックにタイラー、明日もトグルが稽古つけてくれるってよ!」


 二人共、口一杯に食べ物を頬張り喜んでいる。

 リベラも再度、礼を言っていた。

 トグルは、照れながらも嬉しそうな表情をしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ