169話 オリヴィアからの依頼と、共通クエスト-3!
「……クエスト受注してから、一時間も経ってませんよね」
イリアが渋い顔で、俺を睨んでいる。
「ウソじゃないって、ほらこれが核だ!」
「信じられないと思うけど、本当なのよ」
「あぁ、俺達は居ただけだからな!」
イリアは、大きく溜息をつく。
「共通クエストですし、他のギルドの手前もありますので、慎重に御願い致しますね」
ギルマスの部屋に移動する。
座ると同時に、すこし怒った口調で、
「受付を預かる者として、説明してもらえますかね」
シキブとムラサキが、イリアに説明してくれた。
俺が言うよりは説得力があるだろう。
「そんな戦い方、信じられませんね……」
「私達だって、信じられなかったわよ」
「まぁ、レベル八二だから目で追うのもやっとだったけどな!」
「……レベル八二?」
シキブが頭を抱える。
ムラサキに口止めをしなかった俺にも責任はある。
「タクトさんは、レベル八二なんですか?」
「あぁ、そうだが……」
「そうすると、ギルマスの件は……」
イリアが全て言う前に、断った事を伝える。
意外そうな顔をしていたが、俺らしいと最後は笑った。
「しかし、共通クエストを一日で二つも完了したとなると、王都から招集が掛かりませんか?」
「そうね。 パーティーのリーダーもタクトだったし……」
「ちょっと待て、話が見えないんだが?」
共通クエストは、高難易度クエストの為、なかなか受領する冒険者が居ない。
基本的にランクA以上はギルマスだったり、王都からの指名クエスト中だったりするからだ。
貴族の中には、早めに冒険者を囲って、権力を維持したり素材を独り占めする者も居る。
「それって、別に断ってもいいんだろう?」
「……あなたって、本当に怖いもの知らずね」
いつもの可哀そうな子な目で俺を見る。
「どちらにしろ、タクトは王都に行くことになるわよ」
「なんでだ?」
「ゴブリンロードを倒したからよ」
「……ウソだろ?」
「本当よ!」
「俺、丁寧語喋れないのに、国王と会話出来るわけないだろうが!」
「……言われてみれば、たしかにそうね。 ローラの報告書に追記しておくように言っておくわ」
「絶対に、頼んだぞ!」
扉を叩く音がしてカンナが入って来た。
サイクロプスとコカトリスの核の鑑定をする為だ。
部屋に入ると、さっそく鑑定を始める。
「間違いないです」
カンナの鑑定でお墨付きが出たので、これでクエスト完了だ。
イリアが下から報酬を持ってきたので、シキブとムラサキに約束通り全てあげるというが、受け取りを拒否された。
仕方ないので、三分の一づつで折り合いをつけようとしたが、何もしていないと再度拒否された。
シキブ達のおかげで、クエストを受注出来た事を伝えると、渋々半分で納得してくれた。
イリアは、まだシキブと打ち合わせがあるらしいので、シキブ達に礼を言ってカンナも一緒に部屋を出る。
「師匠の服のデザインなどは決まったか?」
誕生日に贈るプレゼントについて聞いてみた。
「はい。 デザインは何とか考えたんですが、サイズ確認が……」
「そうか、そのデザインは今持っているか?」
「はい、カバンに入っています」
「それなら、問題ないな!」
近々、制作に入るからデザイン変更等があるなら早めに済ますように伝える。
「分かりました」
元気な声で返事をした。