160話 除去作業!
ナタリーをうつ伏せにして、背中を見せてもらう。
俺は、【全知全能】に確認をして作業に入る。
【魔眼】で魔力の流れを確認して、同じく【魔眼】を発動させているアルが封魔石を少しづつ持ち上げて、俺が封魔石についている細胞を少しづつ除去をする作業を行う。
その間、シロには治療魔法を掛けてもらい、ネロはいつでも自分の血を分け与えられる準備をして待機してもらう。
少し封魔石を持ち上げて、神経を傷付けないように外しては、回復させる確認する作業を延々と続ける。
作業を始めて、十五分程でようやく封魔石の全体が見えてきた。
それからも同じ作業を繰り返す。
時折、シロがナタリーに声を掛けたりしているが、我慢出来る痛みのようで心配は無いみたいだ。
神経系統もおおよそ外して、血管の方に移行する。
ネロに合図をして、血管を封魔石から取り外すと噴水の様に血が出る。
ナタリーが、一瞬声を出すがすぐに堪えた。
シロの魔法と、ネロとで止血をしてから、ネロがナタリーの腕から輸血を始めた。
その後も二本の血管を同様の方法で外して、除去作業は終了した。
「終わったぞ、気分はどうだ?」
「……はい。 嘘のように調子がいいです」
アルと一緒に【魔眼】で確認するが、先程とは違い寿命ゲージはかなり伸びていた。
「しかし、自然にこれが身体に取付く事は考えられんの……」
そうだ、確かに不自然すぎる。
「ナタリー、出来ればでいいが何があったかを教えてくれないか?」
奴隷の話を聞いた時のように、ツライ事を喋らせる事になる。
「私達は、王都近くの研究所で人体実験されていたんです」
「人体実験だと!」
「はい、魔族との交配や、魔石等を強制的に身体に取り込む手術等です」
「一緒に居た半魔人もそうなのか?」
「はい、彼は人工的に創り出された半魔人でしたが攻撃性が無く、私同様に欠陥品扱いでした」
ナタリー達のような欠陥品や死亡した者は処分場へと運ばれる。
そこで秘密裏に処分されるのだが、一斉に機械で処分される。
処分人も確認していない為、機械に入れられる前に逃げたりしても気付かれない。
ただし、処分施設から抜け出すのは難しいが、見た目的に人に近い2人は服を盗んで裏から逃げられたという。
逃げ出した所を、ゾリアスと出会い、旅をしながらジークまで来たそうだ。
「王都公認と言うわけか……」
「いえ、違うと思います。 処分人がいつも王都にバレる前に処理するような事を言ってましたから」
「アルにネロ! この件は俺に任せて貰っていいか?」
二人共、頷いて承諾してくれた。
ネロに関しては、ナタリーが吸血鬼との半魔人という事で、少なくとも吸血鬼が犠牲になっている事が分かっている。
「ん? ネロ珍しいの。 ローネに変わらぬな?」
「大丈夫なの~、ローネもタクトに任せると言っていたの~!」
「ほぅ、タクトはローネの存在も知っておったのか!」
「あぁ」
シロの魔法で、部屋を綺麗に掃除をして、部屋を出る。
何事も無かったかのように宴が続いていた。
心配そうにゾリアスが立っている。
「無事に終わったぞ」
俺の言葉聞くと、ゾリアスは目を覆う。
「タクト、ありがとう!」
若干の鼻声で、感謝される。
「アルとネロ、それにシロが居たから成功した。 礼なら皆に言ってやってくれ」
ゾリアスは言葉通りに、三人に礼を言う。
ナタリーがゾリアスの所まで歩いて行くと、ゾリアスはナタリーを抱きしめて、お互いが泣いていた。
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「どこ行っていたのよ!」
イリアが酔っぱらって俺に絡んできた。
……そういえば、イリアは酒癖が悪かったな。
「シロ、イリアの相手してやってくれ!」
「シロ様!」
シロには悪いが、イリア対策としては適任だ。
遠くにコボルト達を発見したので、話に行く。
「どうだ、この村は?」
昨日今日過ごして貰った感想を聞いてみる。
「皆、いい人! 初めて役に立った! 褒められた!」
嬉しそうだ。
「仲間も、ここだったら虐められない!」
「仲間?」
「うん、仲間。 皆、虐められている」
「集落ということか?」
「そう。 大きくなると奴隷として連れてかれる」
コボルト達を奴隷にする為に、育てている場所があるという事か!
「すぐには無理だが、仲間を救ってやる」
「うん。 ありがとう!」
そのような場所を隠して運営するとなると、奴隷商人単独では資金不足だ。
裏で糸を引いている奴、しかもそれなりに地位が高い奴が必ずいる筈だ。