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152話 ゾリアスの過去

 ゾリアス達と今後の話を進める。

 今日中に、リロイへスラム街を購入する事を伝えて手続きを進めるからだ。


「希望にもよるが、鬼人のリベラ達はこの街に残して、弟達は冒険者として基礎から教えた方が安全だと思う」


 ゾリアスも俺の意見に同調してくれた。

 ウルガーは俺に頭を下げて礼を言った。


 ……ウルガーもリベラの両親を守れなかった負い目があるのだろう。


「半魔人で吸血鬼の娘も、俺が面倒を見よう。 日中、部屋での作業を考える」

「でも、見た目は人族でも半魔人だぞ?」

「あぁ、もしバレても俺がなんとする」


 俺の言葉を信じてくれたのか、それ以上は何も言ってこなかった。

 一番の問題を聞いてみる。


「ゾリアス達は、冒険者への恨みは無いのか?」

「恨みが無いと言えば、嘘になるがどうしようもない」

「その冒険者になるという事に関しては、どう考えるんだ?」

「それなんだが、俺達は冒険者にはならないと決めた」

「そうなのか?」

「あぁ、ゴンド村に居る限り冒険者である必要は無いからな」

「なるほどな、確かにそうだな」


 シキブには、後で訂正しておこう。


 最後にもう一度、移民に賛成した全員に、意思確認をする。

 意思は変わらずに、ゾリアスに一存するとの事だった。


 リベラ達には、ゴンド村に行かずに俺達の家に住み込む事を伝える。

 リベラには四葉商会の仕事をしてもらう。

 ザックとタイラーには、少しづつ冒険者の経験を積ませていくつもりだ。


「けど、兄ちゃんは村人だから、誰かの使いなんだろ?」


 そうか、見た目的には誰でもそう思うのは仕方ないな。

 ザックとタイラーに、冒険者ギルドと商人ギルドそれぞれのギルドカードを見せる。


 ザックとタイラーの目が輝いている。


「兄ちゃん、ランクBの冒険者なのかよ! それにランクSの商人てスゲェな!」

「そんな恰好でよくなれたな!」


 言いたい放題の弟達をリベラが叱り、俺に対する無礼を謝ってくれた。


「気にしなくて良いが、御前達は何歳だ?」


 年齢確認すると、最初にリベラが18歳と答えた。

 続けて、弟達は十四歳だと答える。


 ……双子なのか?

 全然似てないな。


「ザックとタイラーよく聞け! 御前達はまだ冒険者になれない」

「なんでだよ!」

「スラム出身だからか!」

「規定年齢になっていないんだよ!」


 冒険者登録は、種族によって多少異なるが鬼人族(一本角)の場合は十五歳以上だ。


「……そうなのか。 まだ一年もあるのかよ」


 二人共残念そうに、落ち込んでいる。


「何言ってるんだ! もう一年しかないんだぞ!」


 俺が分かる範囲で冒険者がどんなものかや、試験の内容を教える。


「力が強くなるだけじゃ、ダメなんだぞ!」


 話を聞く度に落ち込んでいく。

 落ち込んでいる弟達を慰めて、リベラには明日にでも引っ越しをする事を伝えた。


 ゾリアスを呼んで、半魔人を匿っている家まで来くことにする。


 部屋に入り、二人にも最終の意思確認をする。


 吸血鬼との半魔人は、俺が部屋での仕事を用意するからと勧めてみたが、ゾリアスと離れる事への不安が大きいようだ。

 ゾリアスと話し合いをして、ゴンド村にも話をしておくので一緒に連れていく事に変更した。

 ミノタウロスの青年も、向こうでは農作業などをして欲しいと伝えると、ほっとした表情で頷いた。


 これで、賛成派全員の意思確認は出来た。


「助かった! 色々と手間を掛けさせて悪かったな」

「何言ってんだよ。 それは俺達のセリフだ」


 恥ずかしそうに答えた後に、


「冒険者の件、悪かったな!」

「気にしてない。 それぞれ事情があるだろうからな」


 ゾリアスは複雑な表情をしている。


「俺の事は、ギルマスから聞いているだろう」

「あぁ、少しだけな。 別に無理には聞かないから安心しろ」


 俺が詳しく聞かなかった事に驚いていた。


「お前になら話しても大丈夫かもな……」

「何がだ?」


 ゾリアスは元王国騎士団の親衛隊長を務めていた。

 魔人の村を撲滅という任務があり、部下数人とその村を調査した。

 その村は、人族と半魔人がひっそりと暮らしていた平凡な村だった。

 ゾリアスは、王国に状況を説明したが、結果は再調査という事だった。

 部下達は命令が出る前に村を襲い、家を焼き払い始めた。


 部下達に先走った事に対して怒りをぶつける。


 王国に戻ると、部下達の裏切りにより反逆者として囚われの身になるが、今迄の功績と国王の慈悲により『王都追放』の処分となった。


「俺は、今でもあれが正しいとは思えない」

「……そうだな」


 俺にはこう答えるのが精一杯だった。

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