13話 引越し!
リラは上機嫌だ。
鼻歌を歌うと、周りの花が咲き始める。
これが、樹精霊の能力か!
依頼完了を伝える際に、詳細な報告をした。
まず、魔力が大きかった理由は、切り落とした左手にしていた指輪が原因だった事。
切り落とした際に消失したので、今後あの規模の魔力が出る事はない。
次に、捕獲したジロイが不老不死だという事だ。
リラにしてみれば、永久燃料を手に入れたわけだから喜ばずにはいられないのだろう。
これからは、永遠に栄養不足になる事は無い。
「本当に、タクト様に御願いして良かったですわ」
上機嫌なリラに、今後は魔力が無くなった為、色々な魔物が寄ってくる事を伝える。
しかし、基本樹精霊は姿を現さないので襲われる事は無い。
「しかし、いい場所だと思ったんだけどな……」
立地条件的には、申し分無かった場所だけに残念だ。
しかし、リラが魔物の出現が少なく生活しやすい別の場所を教えてくれた。
さすがは、森の管理者だけはある。
約束の報酬である『ドライアドの実』を受け取る。
『大樹の祝福』は、リラが左手の甲に手を添えると、紋章が刻まれた。
自分の意思で現すことが出来るので、他の森で樹精霊の協力が必要な時に見せれば、協力してくれるとの事だった。
ジロイが持っていた『封魔具』は、リラにとって別に必要ないと言うので貰っておいた。
「本当に、ありがとうございます! 不要な人間が居たら歓迎しますので、いつでもお持ち下さい」
リラは上機嫌のままだ!
口調こそ、やさしいが内容は残酷だ。
「あぁ、こちらこそ」
挨拶をして、紹介して貰った場所に移動する。
以前に誰かが住んでいたのか樹の中央部がくり抜いてある。
広さ的には十分だ。
環境的にも、少し行けば川もある。
唯一気になる点は、ゴブリンの集落が今まで一番近い事だ。
新しい拠点を少し掃除して、今回の事を改めて整理してみる。
まず、転移者の生存の有無だ。
転移者が生きている場合、俺より強い恩恵を習得している可能性は高い。
間違いなくガルプ時代の方が、無茶なスキルでも習得出来ているからだ。
次に【鑑定眼】だ。
レベルによって見られる内容が違うのであれば、今以上にレベルを上げる必要がある。
そして、クロとシロだ。
この二匹の優秀さ。
主人である俺の方が、明らかに格下だ。
敬語を使って貰うのは申し訳ない気分になる。
クロとシロを呼ぶ。
「主、何で御座いましょう」
「御主人様、用事でしょうか?」
通常通り、畏まっている。
「提案があるんだが……」
二匹に敬語を止めないかと提案した。
「主に向かって、その様な事は断じて出来ません!」
クロには、すぐに拒否された。
「御主人様の命令であれば、私は従いますが慣れませんので徐々にですが、変更していきますが宜しいですか?」
シロは受け入れる事を検討してくれた。
すぐに変更するのは当然無理なので、そこは了承した。
この新しい拠点で、早く強くなって森を出ると決めた!