132話 小さな客人!
「すぐに戻って来て!」
マリーから、緊急の連絡があった。
かなり、焦っているのが分かる。
説明が難しいので、戻って来て欲しいらしいので、路地裏に入り【転移】で家に戻る。
「なにがあったんだ?」
マリーが、指で頭の上を指す。
その先を見ていると、羽根を生やした小人が居る!
「これ、どうしたんだ?」
「これって言うな!」
小人は怒って、俺を叩いているが痛くも痒くも無いので、無視してマリーと話を進める。
「それでどうしたんだ?」
「実は……」
俺からカメラを借りたマリーは一階だけでなく、家の中を色々と撮影していた。
三階の部屋を撮影していたら「きゃっ!」と叫び声が聞こえたが、周りに誰も居ない。
怖くなったのでその部屋を飛び出して、すぐにフランに【転写】してもらった。
フランが驚きながら渡された写真に、この小人が写っていた。
それから急に姿を現して文句を言ってきたので、俺を呼んだ。
……たしかに、これは俺の担当だな。
小人に向かい、
「お前、何者だ?」
とりあえず、尋ねてみる。
「お前って言うな! 私は『ピクシー』の『エマ』よ」
「ピクシーってことは、妖精か?」
「そうよ」
「その妖精がなんでここに居るんだ?」
エマは、森の樹の中で寝ていたが、目を覚ますとこの家の木材に使用されていた。
どうしていいか分からず怒りを、この家に住人に向けて、扉を開けたり皿を割ったりとしていた。
暫くすると、住人たちがこの家から居なくなり、仲間も居ないため独りで寂しくなっていたところに、ライラが現れた。
最初は前住人と同じように扉を開けたりとかをしていたが、ライラが【結界】を張っていた事に気が付き、むやみに手を出すのも危険と判断して様子をみていたら、俺達が引っ越してきた。
「そこまでは分かった。 それで今更なんで姿を現したんだ?」
「気付かれたから、素直に出てきただけよ……」
もうひとりのバケモノの正体は、こいつに間違いない。
「もしかして、刺繍もあなたですか?」
シロが、疑問に思っていたドレスの刺繍について聞く。
「えぇ、そうよ。 あなた達が頑張っているの見てたから、少し手伝っただけよ」
なにやら照れている。
「そうでしたか、ありがとうございます。 とても上手ですね」
シロより礼を言われるが、照れているのか何も言わない。
「それで、エマはどうするんだ? 見つかったからここから出て行くのか?」
「それなんだけど、このままこの家に居座ろうと思う」
「帰らなくていいのか?」
「帰るまでが危険だし、どうせ帰ってもやる事ないしね。 それにここに居た方が面白そうだし!」
別にエマが居る事は問題ない。
「居るのは許すが、お前も働けよ!」
「そうね、裁縫くらいなら手伝えるわよ」
この小さな体で出来る事は限られるから、仕方ないな。
……まてよ、小さい体
これなら、誰にも気づかれずに声を発する事も可能じゃないか?
しかし、エマがどれだけ声を大きく出せるかが問題だが……
一瞬、結婚式の進行役にはぴったりと思ったが、よくよく考えると無理がある。
この問題が解決するまでは、結婚式は出来そうにないな……