12話 不老不死!
とりあえず、捕獲されている男性を確認する。
顔の半分を樹で覆われているため表情は見えないが、幻覚を見ているのか口元だけ見ても幸せそうなのは分かる。
肉体的損傷も無い。
しかし、不思議な事が多すぎる。
何故、この男性は年を取らない? マジックアイテムのせいか?
そのマジックアイテムが、魔力を放出している?
どちらにしろ軽率な行動は取れない。
「主、発言宜しいでしょうか?」
クロが話しかけてきたので、頷く。
「多分、あの男性は転移者かと思われます」
「……転移者?」
「はい、私がガルプ様に御仕えしてた時に転移された方かと」
……なるほど、それであれば納得は出来る。
この男の恩恵は【不老不死】か?
【鑑定眼】でステータス確認するが、恩恵は持っていない。
レベルが低い為、恩恵を見る事は出来ないのか?
「クロ、俺が来る前の転移者って全員死んだのか?」
「何人かは残って居るかと思いますが、私では分かりかねます。申し訳御座いません」
「いや、十分だ!」
「御主人様、私もいいですか?」
「ん、何?」
シロも何かに気がついたみたいだ。
「あの男性の服にマジックアイテムがあります。直接関係は無いかもしれませんが、回収する事をお奨め致します」
クロにシロ、なんて優秀な者達だ!
こんな優秀な眷族が居るのに、神は何やっているんだ!
とりあえず、ポンコツ女神に連絡をする。
(はい、エリーヌです)
おっ! まともな受け答えだ。
(ポンコツ女神、ちょっと調べてほしいことがある)
(また、ポンコツっていう。自分で調べれば!)
(職務放棄だな。そういう事なら、モクレン様に調べて貰うからいいよ)
【神との対話】を切る。
案の定、すぐにエリーヌから連絡が入る。
(何ですか?)
(先程の事は謝りますので、モクレン様には内緒で御願いします)
最初から、素直に聞けばいいのに、面倒臭い。
(ガルプの時に、恩恵で【不老不死】を習得した奴をすぐ調べろ!)
(うん、分かった。じゃあ、一週間後に連絡するね!)
(一〇分!)
(えっ! よく聞こえなかったんだけど)
(一〇分で調べろ! でないとモクレンに報告する)
(一〇分なんて無理だよ)
(無理かどうかなんて、俺には関係ない。一〇分以内に連絡無ければ、モクレン様に連絡する)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(間に合ったでしょ!)
一〇分後にエリーヌが連絡をしてきた。
(やれば出来るだろう。それで結果は?)
調べた結果、不老不死は『ジロイ』という名のひとりだけだった。
当たりだった。先程のステータスを見た際の名前が『ジロイ』だった。
(はい、ありがとさん)
(……いえ、どういたしまして)
不服そうに【神との対話】を切った。
やはり、今の【鑑定眼】のレベルでは恩恵までは閲覧出来ないか。
それに、転移者の存在。
色々と問題があるな。
俺はジロイの服を脱がして、装備品を全て確認した。
シロの言う通り、服に指輪が入っていた。
【鑑定眼】でマジックアイテムを鑑定する。
指輪は、魔力を制御して抑える事が出来る『封魔具』の一種みたいだ。
レベルが低い為、全ては分からなかった。
魔力を抑えるのであれば、現状と真逆になる。
それに、服の中という事は使用していない。
もう一度、よく観察してみる。
顔の半分と両手両足が樹と一体化している。
「リラ、両手か両足にマジックアイテムがあるかもしれないので、腕か足を一本ずつ樹を退ける事は出来るか?」
「えぇ、簡単よ」
右手を解除したが特に怪しい物がない為、左腕を解除する。
左手が現れると薬指に指輪をしている。
「シロ、あれが何か分かるか?」
多分、魔力増幅の道具ではないかと答えた。
アイテムボックスから、ゴブリンから奪った斧を出して、左手首を切断した。
草むらに落ちた手首の薬指から指輪が消失した。
その瞬間に、今まで放出されていた魔力が一気に少なくなった。
……これで依頼は完了だ。