126話 信者の嫉妬!
「タクトさん、いらっしゃいますか!」
下で誰かが大声で、俺を呼んでいる。
一階まで下りると、叫んでいたのはイリアだった。
なにやら、怒っているみたいだ!
なにか、怒らせるような事をしたか?
「よう、イリア」
軽く挨拶をしてみるが、
「よう! じゃありません!」
完全に御怒りモードだ!
しかし、なぜギルド会館に呼び出さずに、わざわざ乗り込んで来たんだ?
「まぁ、落ち着け!」
「落ち着いてなんていられません!」
沈着冷静なイリアが、ここまで取り乱すような事をした覚えが全くない。
又、知らない間に問題でも起こしてしまったか?
「説明してもらう必要があります」
「だから、何がだよ!」
とりあえず、奥の部屋で話を聞くことにした。
「どうして、エイジンにはシロ様との写真をあげたのですか!」
「……はい?」
イリアの怒りは、エイジンがシロとのツーショット写真を持っていた事だった。
シロ信者のイリアには、我慢ならなかったのだろう。
「でも、どうしてイリアがその写真の事知っているんだ? エイジンには言うなと言ったはずだが?」
「そ、それは……」
明らかにトークダウンした。
考えられる事と言えば、ひとつしか思い浮かばない。
「もしかして、エイジンと付き合っているのか?」
「……世間的にはそうです」
世間的にというところが、イリアらしい。
照れ隠しもあるのだろう。
付き合い始めて二年程になるが昨日、コソコソしていたので怪しんでいると、隠れて写真を見てニヤけていたのを発見した。
浮気かと思い写真を取り上げたが、写真は浮気以上にショックだったらしく一晩落ち込んでいたが、朝になり怒りの矛先が俺になったので、乗り込んできた。
「そうか、イリアとエイジンがね」
笑いながらイリアを見る。
恥ずかしそうに俯いている。
イリアも女性だな。 と思った。
「それで用件は、自分にもシロとの写真を撮ってくれってことか?」
「単刀直入にいえば、そうなります」
「その報酬は?」
「そうですね……それに見合う報酬は私では思いつきませんので、タクト様が決めて下さい」
そうきたか、シロへの価値を自分で決めるのでなく俺に決めさせるか!
さすがイリアだな。
別に普通にあげても良かったんだが、こうなると真剣に考えなければならないな。
多少は、嫌がらせも含んで……
「ふたつ、要求するがいいか?」
「出来る限り、要求に応えれるように努力致します」
ひとつ目は、モデルの依頼だ。
体型的にイリアは、ニーナに似ているので、宣伝用の写真モデルになって貰う。
且つ、結婚式の後に指輪を販売する際に、ここで実際にドレス着用姿を皆に見て貰う。
マリーに着てもらいたいが、そうすると受付兼販売員が居なくなる。
エイジンも呼んで、ふたりの写真であればより良い。
但し、エイジンのほうがリロイより筋肉質なので一回り大きいのが気になる。
昨日、「何かあれば手伝ってくれ」と言っておいて良かった。
ふたつ目は、昼飯を作ってエイジンとここで俺達と食べる事だ。
メニューは御任せ。
材料もイリア負担だ。
昼ご飯を考えるのが面倒だったので、丁度良い。
イリアに「シロの好きな物を作って、一緒に食べてもいいぞ」と言うと、一気にテンションが上がったようだ。
気になるのは、イリアが料理下手でない事位だ。
イリアに限っては大丈夫だろうけど……
ひとつ目の要求でイリアは、戸惑っている。
「ドレスって、シキブが着てたのですよね?」
ギルド会館で、ギルドメンバーの居る場所では『ギルマス』と言い、それ以外では『シキブ』と使い分けているのは、流石だと感じた。
「いや違う。 あれより豪華だ」
「それは、恥ずかしいですね……」
「特別にドレス姿でシロとの写真も付けてやる」
「やります。 いえ、やらせて頂きます」
シロ信者って、こんな奴ばっかりなのか?
猫人の集落に行ったら、どうなるんだ?
少し、興味があるな……
イリアが、シロと食事が出来る。 と、エイジンに連絡すると「すぐに行く!」と返事があったそうだ。
すぐに来られても困るが、衣装合わせも出来るので何も言わないことにした。
イリアを連れて、ドレスに着替え終わったマリーの所まで行く。
「着心地はどうだ」
「御姫様になった気分よ」
マリーはご機嫌だ。
ティアラを頭につけて、手にはブーケも持ち、式と同様の恰好だ。
フランの計らいで、撮影用に化粧もしている。
調整についても確認してもらったが、問題無いようだ。
「フラン、写真撮ったか?」
「はい、バッチリですよ!」
マリーに宣伝用写真として使う事を伝えると、「お願いだから止めて欲しい」と言われるが「綺麗だから仕方ない」と言うと、文句を言っていたが最後は諦めた。
その分の報酬はきちんと支払うつもりだ。
「イリアにも、これを着させてくれ」
「えっ! これなの!」
イリアは自分が着るのは別と思っていた様だった。
シロが、「こちらへどうぞ!」と言うと、催眠術にでも掛かったかの様に、シロの所へ歩いていく。
「イリアも宣伝用に写真撮るから、綺麗に頼むぞ」
「はい」
女性達はやる気に満ちていた。




