114話 改良型写真機!
「ここ、どこですか?」
フランには、仕事道具を持って来る様にだけ言って連れてきた。
「ドワーフの集落だ」
「えっ!」
「フランの初仕事だ」
意味が分からないフランを、トブレの工房に連れて行く。
「よっ、どうだ」
「朝飯前よ! 徹夜して究極に小さくしてやったぞ」
俺に出来上がった物を渡した。
従来の写真機に比べて、四分の一のサイズになっている。
しかも軽さで言ったら、十分の一位だ。
「お前のマークも彫ってやったぞ」
小さく四葉のマークが彫ってある。
「それに、『MP』使用量は二十分の一にまで抑えたぞ。凄いだろう!」
「『MP』使うのか?」
「当たり前だろう。何を言っているんだ? 動力も無いのに動くわけないだろう」
言われてみれば、確かにそうだ。
現世の時の様に、乾電池や充電器を使っている訳では無いから動力は必要だな。
それよりも、この光沢は何だ?
「外殻に何使ったんだ?」
「粗悪品だけど丈夫なミスリルを使ったから、落としても壊れる事は無いぞ」
「ミスリルですって!」
フランが驚いている。
俺でも、ミスリルが高価なのは知っている。
粗悪品と言っても、十分に高額だ。
「いい出来だろう」
「あぁ、最高の出来だ。流石にいい仕事をするな」
「あたりまえだろ!」
トブレは誇らしげだ。
「あの~」
フランが申し訳なさそうに話す。
あまりの出来のよさに、フランの存在を忘れてトブレと話し込んでしまった。
「どうした?」
「タクトの持っているのって、何なんですか?」
「これは、新型の写真機だ!」
「……私を、揶揄っていますか?」
「まぁ、触ってみれば分かるよ」
トブレに説明を受ける。
解体した写真機も組みなおしたので、比較が可能だ!
「これ、凄いですよ! 軽いし、写真を撮っても疲労が少ない。なにより写真が、前のより格段に綺麗です」
トブレが自慢げに聞いている。
「これから、これがお前の相棒だ」
「これ、使っていいんですか!」
「あぁ、もちろんだ」
フランは大喜びしている。
「高価な代物だから、所有者限定の【道具契約】してやるぞ」
「なんだ、【道具契約】って?」
「ドワーフのユニークスキルだが、他人にも使えるから安心しろ」
今、ユニークスキルって言ったよな!
あとで、魔物退治して来るか……。
「俺達は、お気に入りの道具を常に仕舞っているんだ。大事な相棒だからな!」
【道具契約】は、使用者と物との間に契約を結ぶ事で、使用者を制限する事が出来る。
又、アイテムボックスの小型版で、目の前に契約物が無くても、自分の意志で出し入れ可能。
盗難されても本人が収納と念じれば、一旦収納されて取り出す事を念じれば簡単に取り出す事が出来るような対策がされている。
本人が契約物に触れて解除のイメージをすれば、解除可能だ。
人にもよるが、大体一個~三個位は使えるそうだ。
鉱山を行き来したりしているドワーフだから、必然的に習得したのだろう。
「ちょっと待ってくれ!」
【道具契約】をされる前に【複製】しておく必要がある。
「待たせたな」
トブレが【道具契約】をして、フランに渡した。
「これからは、お前の相棒だから大事に使えよ」
「はい、有難う御座います。大事に使います」
フランは頭を下げて、トブレに礼を言う。
「これが、もう一台だ。持っていけ」
同じ改良型写真機をくれた。
「しかし、もうこれは写真機よりも凄いですから、トブレ型写真機と名付けましょうよ!」
フランが提案をする。
「それは、恥ずかしいから止めてくれ」
よく自分の名前を武器や道具につけるのを知っているが、トブレは嫌なのか?
「元々のを改良したに過ぎない。そんなのに自分の名前を付けるのは、俺の信念に反する!」
なるほどね、職人の意地というやつか。
「タクト、違うのを考えてやってくれ」
「写真機だろ……カメラでいいか」
「カメラ?」
「あー、特に意味は無いが短い方が呼びやすいだろ」
「カメラ、いい響きですね」
改良型写真機は『カメラ』という呼び名に決まった。
俺自身も、前世で呼んでいた名称の方が、しっくりくる。
トブレにお礼の酒を渡して、製作費が幾らかを聞く。
「そんなのはいらん。 お前は早く素材を持って来い!」
怒られる始末だ。
困ったな……。
「トブレ、これを貰ってくれ」
『グランニールの髭』と『グランニールの鱗』、『ドラゴンの鱗』をアイテムボックスから出す。
「……ドラゴンの髭に鱗か?」
さすが、一目で分かるようだ。
「あぁ、ドラゴン族最強のグランニールの髭と鱗、それと普通のドラゴンの鱗だ」
「グランニールだと! お前、そんな高価な物貰えるわけないだろう!」
「これは、今回の報酬と礼だ。それに今後、無理な注文への先行報酬だ」
「お前、無茶苦茶だな。こんなの貰ったら断れないだろう」
「だから、貰ってくれ。俺は無茶苦茶な奴だから、無理難題の注文をするから」
「……そういう事なら貰っておく。お前の注文を最優先にしてやる」
「助かるよ」
トブレは、『グランニールの髭』と『グランニールの鱗』、『ドラゴンの鱗』をそれぞれ一つづつ受け取った。
隣ではフランが、気を失っている。
「しかし、グランニールの髭に鱗って、お前は本当に人間族か?」
「あぁ、そうだ」