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110話 狐人の迷子!

 中に入ると埃だらけだ。

 シロの風属性魔法で、蜘蛛の巣や埃を全て外に出す。

 拭き掃除が大変だな……。


 各フロアを不動産で見た間取りと確認してみる。

 一階はカウンターとトイレ、奥に一部屋あるだけで他は何もないフロアだ。

 壁際の階段を上り、二階に行く。


 二階は、半分仕切られていて、キッチンと、トイレに風呂がある。

 リビング的な扱いのスペースだな。

 残り半分は、先程同様に奥に一部屋があるだけの、何もないフロアだ。


 三階に行くと、九部屋ある。

 全て確認すると、間取りに大きな違いは無かったが、扉に部屋の番号札が掛けられるようになっていた。

 一応、宿予定だったのかベッド等の家具類も置かれていた。

 高級宿屋仕様らしく、各部屋にトイレと風呂が付いている。

 これは、嬉しい誤算だ。


 四階は一部屋しかなく、部屋からバルコニーに出れる構造になっており階段で屋上に上がれる。

 ここは、特別な御客用の部屋なのだろう。

 風呂も他の部屋よりも大きいのが据付いている。

 トイレも個室が大きく取られている。

 ベットもキングサイズの大きい物が一つあるだけだ。

 建物自体がこの街でも大きい方なので、屋上からの景色は綺麗だ。

 俺の部屋は、四階の部屋に決定だな。


 屋上から階に下りてくると、シロが居た。

 小さな子を脇につれている。


「どうした?」

「実は、部屋にこの子が隠れてまして……」


 『狐人族』の少女だ。

 シロの脇で怯えている。


「……どこから来た?」


 膝を曲げて、話しかけてみるが回答が無い。

 言葉が通じないのか?

 狐人ならローラと同じはずだから、話が通じるはずだ。


 【念話】でもう一度話す。


 上下左右見ながら、声の正体を探っている。

 話しているのが、目の前にいる俺だと言う。


「……凄い」


 やはり、話は通じる。


「怖い事はしないから、話を聞かせてくれ」


 話そうとしない。

 俺では恐怖心を煽ってしまうようだ。


「シロ、暫く一緒に居て、安心したら話を聞いてあげてくれ」

「分かりました」


 ここは、シロが適任だろう。


 一階まで下りて、クロに子供が喜ぶような食事と菓子を買ってくる様に頼む。


 この屋敷のバケモノの正体は、あの子なのか?

 あの子にそんな力があるとは思えないが……。

 しかし、見た目で判断するのが危険なのは身をもって知っている。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「お待たせしました」


 クロが買い物から帰って来た。

 一緒に四階まで上がり、シロたちの所に向かった。


「どうだ?」

「少しづつですが話してくれるようにはなりましたが……」

「そうか、とりあえずこれでも食べろ」


 少女の前に食事と菓子を置く。

 じっと、食べ物を見ている。


「毒は入っていない。全部、お前の物だ」


 菓子を一つ食べてみせて、安全だという事を証明する。

 恐る恐る食べ物に手を出し、少しづつ食べていく。


「シロ、下に居るから、何かあったら呼んでくれ」

「はい、分かりました」


 シロに任せて、クロに意見を聞いてみる。


「クロはあの子どう思う?」

「はい、狐人なのは間違いないのですが、身体全体に障壁のようなものが張られています」

「スキルかアイテムって事か?」

「はい、ただどのような物かまでは分かりません」


 障壁か、自分で意図的に掛けているのか、関係なく掛かっているのか……。

 どちらにしろ、本人が喋ってくれないと分からないよな。


 シロから連絡があったので、四階に上がる。


「どうした?」

「はい、ちゃんと自分でお話をしてね」


 優しい口調で、少女に話す。


「……ありがとうございます」

「いや、気にするな。 腹は膨れたか?」

「うん」


 少しは心を開いてくれた様子だ。

 しかし、いきなり核心に迫るとまた、距離を置かれてしまう。


「シロ、今日はこの子と、ここに泊まってやってくれ」

「はい、分かりました」

「ギルド会館でローラと話しているので、なにか用事があれば連絡くれ」

「はい、分かりました」


 突然、少女は俺の方に歩き出して、質問をしてきた。


「ローラお姉ちゃん知っているの?」

「知っているローラかは分からない。名前を教えてくれたら、知り合いに聞いてみるぞ」

「……ライラ」

「ライラね」


 とりあえず、ローラに連絡をする。


「はいはい、用件なんだ?」


 あいかわらず、直球だな。


「ライラって、狐人族の子を知っているか?」

「知っているけど、なんでタクトが知っているんだ?」

「あとで説明するから、待ってろ」

「はいはい」


 ライラに向かい、話し掛ける。


「ローラに会いに行くが、一緒に来るか?」


 小さく頷く。

 シロとクロに掃除を任せて、向かいのギルド会館に向かう。

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