10話 旅のお供達!
「モクレン様から連絡があり、タクト様のお供を致します」
丁寧な言葉使いの『三つ目の鴉』が挨拶をした。
ガルプの眷属はこの『三つ目の鴉』だそうだ。
黒犬かと想像したが、違っていた。
その丁寧な言葉使いが、今の俺には羨ましくて仕方ない。
「ヨロシク!」
鴉の頭を撫でる。
とりあえず、白猫と鴉に、
「名前は?」
と、聞くと二匹共に「無い」と答える。
名前が無いのは、呼びにくいし不便なので、
「名前つけていいか?」
と聞くと
「私たちは別に構いませんが、タクト様は宜しいのですか?」
「そうです、問題ありませんか?」
なにか焦っている?
「あぁ、別にいいよ」
白猫を「シロ」、鴉を「クロ」と名付ける。
安易なネーミングだが、ピンときた名前だ。
そういえば、前世ではネーミングセンスゼロとよく揶揄われたな……。
名付け終わると、二匹の体が一瞬光った。
……なんだったんだ、今のは?
「我クロは、この瞬間よりタクト様を主とし、頂いた名に恥じぬ様尽くさせて頂きます」
クロが急に畏まって話をすると、続けてシロが、
「私シロは、タクト様に全身全霊をかけて一生奉仕する事をここに誓います」
……急にどうした?
名前付けただけなのに、この二匹は何言ってるの?
「主、大丈夫ですか?」
あまりにも呆けていたので、クロが心配で声をかけてきた。
「ゴメン、よく分からないので説明してくれるか?」
クロから説明を受けることにした。
魔獣や霊獣に名前を付けるという事は、生涯の主従関係になるそうだ。
ただし、主側と従者側での信頼関係が前提となるらしい。
名付けられた魔獣は『ネーム付』と言われ、主従の証として身体に何かしらの変化が出るそうだ。
たしかに、クロの身体は一回り大きくなっているし左足にはリングが付いている。
シロは身体に目立った変化は無いが、左耳にピアスの様な物が付いている。
『ネーム付き』になった段階で、『神の眷属』より『主従関係』が優先される。
そもそも、『神の眷属』と信頼関係なんて築く事がありえない。
「なるほど! そんな重要な意味があると思っていなかった。二匹共焦っていた理由は、こういう事か」
「いえ、ネーム付になるなんて魔獣にとっては、とても幸運な事なんですよ!」
「そうです。主となるような方との出会いが無いまま、一生を終える魔獣も多数おります」
「それに、魔獣と主従関係があるというだけで、人間社会ではまだ受け入れて貰えない地域もありますし……」
なるほどな、こいつらは俺の心配をしてくれてたのか。
出会って間もないけど本当に良い奴達だな。
神がクズだったり、ポンコツだと優秀な眷族が生まれるのか?
「心配するなって、俺は神の使徒だから、気にせずに付いて来い」
不安にさせては、主として失格だ。
何よりも俺を慕ってくれた奴は必ず俺が守る。
「シロ、クロ宜しくな!」
「はい!」