101話 領主の愛と秘密!
翌朝、俺とシロそして、ニーナの三人でリロイの屋敷へと向かう。
服はシロが頑張ってくれたおかげで、派手でもなくそれでいて地味でもない良い感じに仕上がっている。
門に着くと門番に通行許可書を見せて、マイクに連絡をして貰う。
マイクの指示で館の中に入る。
ニーナは下を向いたままで、一度も顔を上げようとしない。
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リロイの部屋に着いた。
「調子はどうだ?」
「はい、昨日も今日も調子がいいですね。そちらの方達は?」
「あぁ、俺の助手のシロとニーナだ」
「シロと申します」
「初めまして、ニーナと申します」
「初めまして、ここで領主をしてますリロイと申します」
その後、ステータスを確認して、『HP』『MP』が最大値なので安心するように伝える。
「もう、今迄の症状は出る事はない。だから安心してくれ」
「そうですか、色々として頂いたようで感謝致します」
「大したことはしていない」
やはり、気が付かないか……。
期待したが無理だったか。
「それじゃ、俺達はこの辺で帰る。領主も元気でな!」
「はい、ありがとうございます」
リロイは、俺に礼を言うと続けて、
「タクト殿、彼女からの返事は、いつ聞かせていただけるのですか?」
やはり気が付かないか……。
「彼女?」
「はい、ニーナ殿です」
咄嗟に振り返り、ニーナを見る。
ニーナ自身も驚いている。
「何故、噴水の彼女がニーナだと?」
「それは、運命の人を間違えるわけありませんから」
リロイは笑顔で答えてニーナを見つめる。
ニーナは大粒の涙を流している。
「最初から気付いていたのか?」
「はい。入って来られた瞬間から、ずっと緊張していました」
「そうか……ニーナ」
ニーナをこちらに呼ぶ。
「ちゃんと、お前の口から自己紹介をしろ」
「はい」
ニーナは、リロイの前で自分がサキュバスである事。
先日までの街での騒ぎや、リロイの体調の事も全て自分の責任だったこと。
しかし、悪気が無かったことを全て正直に話した。
「そうですか。私が気が付かないばかりに、つらい思いをさせてしまったようですね。申し訳ありませんでしたね」
優しい目でニーナを見て、涙を拭くようにとハンカチを差し出した。
「改めてですが、私と結婚して頂けますか?」
「私のような者で良ければ、喜んで御受け致します」
このふたりを見ていると、穢れた自分が浄化される様だ。
マイクと目が合ったので、近くまで行く。
マイクにお礼を言われる。
「血は争えませんね」
嬉しそうに呟いた。
「どういうことだ?」
「実は、私と亡き旦那様しか知らない秘密なんですが、旦那様の奥様つまり、リロイ様の御母様である『キュロイ』様もサキュバスなのですよ」
「えっ!」
いきなりの話で驚く。
「そうすると、領主は『半魔人』ということか?」
「はい。ただし、魔力も殆どなく外見も人間族同様ですので、殆ど分かりません」
「なるほどな、まぁニーナに魅かれたのも納得できる気がするな」
「はい。タクト様は『魔力封じの指輪』でニーナ様の魔力を封じられたのですよね?」
「あぁ、よく分かったな」
「はい、ニーナ様が御屋敷に入られるときに、奥様と同じ指輪をされておりましたので、すぐに分かりました」
「もしかして、最初から原因も分かっていたとか?」
「はい」
「そんな大事な秘密、俺に話していいのか?」
「タクト様だから、御話したのですよ」
「そうか、ありがとう」
「しかし、『魔力封じの指輪』はレアアイテムと聞いたけど、良く手に入ったな!」
「はい、生前に奥様と懇意にされておられた御方から頂いたと聞いております」
「そうか、魔族での入手は難しいから、かなりの商人か冒険者って事か」
「いえ、今ではタクト様のお弟子になられております」
「俺の弟子!」
サキュバスが絡むという事は……。
「ネロか!」
「はい、ネロ様で御座います」
「魔王のコネクションは凄いな。どこに行っても話に出てくる」
「永く生きておられますからね」
「確かに……マイク、あんたももしかして」
笑いながら、胸元のネクタイを緩めてシャツの第二ボタンを外すしてネックレスを見せてくれた。
一見普通のネックレスだが、ペンダントトップは肉に食い込んでいる。
「これは?」
「『魔力封じの首輪』です。私は『インキュバス』ですので」
「なるほどな……」
色々な事情があって、魔族も人族の世界に入り込んでいるんだな。
「ネロはリロイの母親の事は知っているのか?」
「いえ、報告はしておりません。私では連絡も取れませんし、もしお知りになったら……」
「貴族を殺す」
「はい」
「俺から話をしておくよ」
「有難う御座います」
「ここまで、計算して俺にクエストを出したんだろ?」
マイクは笑顔のままだ。