8話
私の名はカイン・フォン・ネルフィリアという。
このネルフィリア皇国、皇位継承権第一位の第一皇子だ。
誕生日は9月20日、今年で17歳になる。まだ誕生日は来ていないので16歳だ。
この国では18歳から大人であるとみなされ結婚が許可される。
なのであと一年の間に私は結婚相手を見つけなければならない……いや口説き落とさなければならないと言った方が正しいか。
第一皇子ともなるとまず周りからのアピールが鬱陶しい。
そして媚びへつらうようなその態度が気にくわない。
何より“俺”のことを見ていない。
これでも人一倍努力はしているんだ。
剣も魔法も幼い頃から王宮に努める者たちから必死に学び、学力だって学園内ではいつも一位だ。
帝王学を父上に時間を取ってもらいわざわざ教えてもらい、人として“俺”個人を見てもらおうと頑張った。
しかし周りからの評判は
『流石“第一皇子”』
『“第一皇子”ともなると流れる血が違うのかしら?』
『“第一皇子”には勝てない』
『“第一皇子”は優秀で困りますなぁ…はっはっ!』
だけどその人だけは違った。
いや、昔から変わることがなかった。
『当たり前ではないですか。カイン様は頑張っていましたから…すいませんそこのクッキー取ってくれます?』
かしこまっているのか荒っぽいのかよくわからない言葉遣いも、その俺よりも紅茶を優先するような態度も、俺のことを見た上で俺の努力を認めて褒めてくれるところも初めてあったあの日から何一つ変わらなかった。
年齢を重ねるにつれて俺がどういう存在か知って態度を変えると思っていたのに知った上で態度を全く変えなかった。
打算もなしにこんな態度を俺に取れる人はそうはいないだろう。
その上で俺のことをしっかり見て知ってくれている人はこの人以外には父上と母上しかいないはずだ。
…あと一年、その時間制限が俺の背中を押す。
今日こそは告白しよう。
もう10年ほど拗らせた初恋だ。
何が何でも成功させてやる。
今日こそ俺は…シルフィ・アルベルタに告白する
……思い返せばなんで俺はこんな奴に惚れたんだろうか。
今手を握って廊下に連れ出しているがすごく柔らかい。
たまに近づくといい匂いがしてドキドキする。
それなのに無防備で…加えて同年代の誰よりも美しい。
今こうして手を繋いでいるだけでもドキドキする。
ドキドキしすぎて心臓が痛い…
これが惚れた弱みという奴なのか?
…シルフィ・アルベルタと俺が初めてあったのは俺の7歳の誕生日だった。
新しい侍女は6月に侍女部を出てきたばかりの者というから、年頃の女の人が来るのは面倒だと思っていたところへ同年代の彼女が来た時には少し驚いた覚えがある。
なぜなら、いきなり俺のケーキをねだってきたからな。
今の私は執事の姿をしているが告白するならやはり魔道具は外し本来の姿でするべきだろう。
私は彼女の手を引く。
彼女はいつも何かを考えているようだが今日は何かを思い出しているようにみえる。
俺と同じように俺との出会いから今までを思い出してくれているのではないか…なんていう期待をするあたり俺は本当にシルフィ…まだ呼び捨てにしていいか聞いてなかった…んんっ。俺はシルフィ・アルベルタに惚れているのだろう。
なかなか告白できない奥手で、告白しようとしても振られるのが怖くてやっぱりやめてしまうヘタレで、周りに認められたいと思って周りの人から様々な知識を学ぼうとする努力家で、自分に妥協を許さない真面目な青年。
そんな人物がカイン・フォン・ネルフィリアです。