表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天邪鬼な君に  作者: 森 彗子
1/18

序章 私の秘密

エブリスタにて掲載している作品。

「10年後の初恋」の二人が両親の、その子供達の物語です。いわゆる兄妹の恋愛です。


 ※苦手な人は読まないでください。


 第一回氷室冴子青春文学賞のエントリーし、落選しました。


 エブリスタhttps://estar.jp/_novel_view?w=24958540

時間は残酷だ。

否応なしに変化させてしまうから、嫌いだ。


湯気で曇った鏡にシャワーを掛けると、

そこにもう一人の私が真っすぐな瞳を向けて、こちらを見ていた。


吸い寄せられるように近付くと、鏡の中の自分があの人に見えてくる。


男女の双子は凡そ二卵性双生児だという。

だけど、私達はまるで一卵性双生児のようにとてもよく似た顔をしている。



その人の顔に触れたくて手を伸ばす。

でも、鏡という冷たい壁に押し返された。


どうしようもなく触れたくて。

薄い壁を突き破って、手繰り寄せたくなる衝動を感じて胸が苦しくなった。


いつから私は……


鏡の向こう側にいる自分じゃない彼の事を想うだけで、

切なくて苦しくて涙が滲む。


自分の胸のふくらみに手をかけて、ギュッと強く握りしめた。

小さい頃は殆ど変わらなかった体型は今ではもう、明らかな差が生じている。


逞しくなる彼の体と、女らしくなる私の体。

時間は否応なく、私達を引き離そうとしているようだと感じてしまう。



どうして彼は……、私から離れて行こうとするの?



その、やり場のない気持ちを込めて、冷たい鏡の向こう側にキスを……。



脱衣所から出ると、呑気に笑って漫画を読むあいつの声が聴こえてきた。


大股で迫っていく私に驚いた兄は、肩をすぼめて身構える。


「また勝手に私の部屋に入ったのね?!」


そう怒鳴りながら奪い取った漫画は、恋愛少女漫画だ。

なにが面白いのかわからないけど、同じ年の兄はよく私の本棚を漁ってニヤけている。


「そんな絵に描いた餅みたいなオハナシ、俺にはさっぱり理解できんわ」


兄の燿馬ようまに恋バナは通用しない。

超が付く程、マイペース。

他人のペースに合わせようともしない彼には、恋愛なんて一生無理。


私はそう断言できる!


「だったら、なんで毎度まいど私の本を読むのよ?」


「お前のチョイスなら、面白いもんあるかなって思ったんだよ?」


唇を尖らせ、露骨に人を馬鹿にした態度の燿馬に我慢の限界がやってきた。


履いていたスリッパを咄嗟に右手に掴んで振りかぶり、

背の高い彼の後頭部に渾身の一撃をお見舞いするのはいつものこと。


スパーーーーーッン!!


気持ち良い音がして、涙目の彼がしゃがみ込む。


そして、下から見上げた可愛い顔で、お決まりの台詞が飛び出した。


「このぉ…、怪力がぁぁぁ!!」


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ