47.追跡
追跡
哲夫のオートバイが見えなくなると、地下駐車場のコンクリートの壁に小さなシミが浮き出てきた。それは枯れ葉のような扁平の尾を持つヤモリ「悪魔の使い」と忌み嫌われるヤツだった。
「駿河哲夫、死の組織『ZIG』を一人で潰したという男だけあって用心深い男だ。だがこのまま無事に帰れると思うなよ」
「エダハヘラオヤモリ」は頭の大きさに不釣り合いな、巨大な眼を閉じると再び体色を灰褐色に変化させた。哲夫の車に装備されている「速度制御装置」はすでに狂わされていたのだ、彼は車のドアノブに残っていた「敵」の生体反応をサングラス越しに確認し、身の危険を感じた彼は急遽オートバイに乗り換えたのだった。
「やっと、お出ましか。1、2、3……5機か?」
バックミラーで哲夫は上空の飛行物体の数を確認すると、即座に右手でハンドルグリップの左上のスイッチを押して「自動追尾式ペンシルミサイル」を発射した。もちろんそれはコオが手がけた。たちまち黒い「ドローン」は全て破壊された。
「ふん、俺もずいぶんと甘く見られたもんだ」
しかし、正確な位置情報を受信したのだろう、新たな小型のドローンが後方に現れた。後方からの攻撃にはほとんど無防備の旧型のオートバイだ、彼は舌打ちした。
「ちぇっ、少しまずいことになったな」
彼のオートバイを狙うドローンのレーザー光の攻撃を、左右に車体を振って彼は寸前でかわす、ところが右前方から新しくドローンが出現した。
「いよいよまずいな……」
そのドローンは側面に回り込む、確実に彼のオートバイのタイヤを狙っていた。同時に二筋のレーザー光が放たれた、彼のオートバイは今度ばかりはうまく交わすことはできなかった。
「バスッ」
「ズザザザザーッ」
ついにタイヤは撃ち抜かれバーストした。そのためバランスを崩したオートバイから哲夫の体は路面に投げ出された。彼はとっさに回転して受け身を取ったものの、まだ攻撃は続く。二機のドローンはとどめを刺すため標的に向けてさらに加速する、哲生は銃を抜いた。
「調子にのるなよっ!」
「ズガーン」
一機のドローンが哲夫の銃で破壊された。しかし残ったドローンは銃の射程外からミサイルを発射しようと反転、急上昇した。
「敵は、戦い方を熟知している。極めてまずい……」
ミサイルが哲夫に向けて発射された。それを狙い、必死に銃を連射する哲夫の額にも焦りがにじんだ。そのミサイルの先を哲夫の銃はようやく捉えた。寸前でミサイルは爆発した。しかしドローンは攻撃の手を緩めることなく、二発目のミサイルの発射準備をして近づいてくる。哲生がその上空に現れたもう一つの黒い影に気づいた。
「万事休す……か」
少し形状の異なるそれは奇妙な音を発した。
「ケーン……」
その音に反応したドローンは、彼への攻撃を中断すると反転し、上昇を始めた。そしてその飛行物体にミサイルを放った。その攻撃をかわした飛行物体はドローンにそのまま体当たりをした。円形のプロペラが空中に飛び散り、バランスを崩したドローンは浮力を失い墜落し大爆発をした。哲生は肩で息をひとつした。
「ふう、助かったのか、あれは何だ?」
その飛行物体には翼が見えた、そして炎上したドローンを確認するといずこかへと飛び去った。その鳥には鋭い歯が生えているだけでなく、翼にははっきりと指のようなものがあった。
「まさか、あれは始祖鳥……」
彼を救った「飛行物体」は信じられないことに「始祖鳥」だった。
「俺を狙った奴らは何者だ、うん?」
彼は破壊したドローンに近づいた、そのドローンは証拠品だ。しかしその場所にはドローンの機体は何ひとつ残ってはいなかった。焼け焦げたシミの他は何も残っていない。
「何かがこの地球に起こり始めている。それはアマネと無関係ではないことだけは確かだ」
哲生はそういうと上空を見上げた。
「アルケオプテリクス、お前がまた動き出したのか……」




