251.そして日本
そして日本
『如月ささら』と同じくゾロニアンの野望を知るのは『板木巴』、そして『九条ツカサ』だった。ゾロニアンはアマテラスを手に入れ『卑弥呼』の持つ地球を滅ぼすほどの力を手に入れようとしていた。そのアマテラスを使ったオオヒメ『一条弥生』を守らねばならない。
「オオヒメ神社に迎え」との連絡を受け取った以上、ささらはその場を動くわけにはいかなかった。「ハヤト」という男は四条の巫女「榊未来」のことを知っていた。彼女もじきにここへ現れるという、たとえ怪物が来ようとこれなら心強い。
「ねえ、ミクは強かったでしょう」
「ああ、強いだけじゃあなく。とても優しい人だ」
ハヤトは自分が「オオトカゲ」バルザンであることは隠し、ミクとの戦いを彼女に語った。話すうちにミクに好意を持ち始めている自分に気付いた。
「お主、ミクに惚れたか?」
「ば、バカなことを言うな、俺は彼女の弟子となっただけだ。あの腕には惚れたが……」
「ふううーん」
ささらはしかし、そう言って疑いのまなこで「ハヤト」を見つめた。
「まあ、ミクは自分より弱い男にはなびかないし、やっぱりあんたじゃ残念、無理かな」
彼はこの話がこれで終わったようで、内心ホッとした。
「条家の巫女ってのは、一体何人いるんだ。ミクや君のような人ばかり揃っているのかい」
ハヤトはそうささらに聞いてみた。
「そうね。今教えてあげれるのは、日本にいる条家の巫女はあと三人かな、一人はリハビリ中ね」
ツカサが十分な体ではなかったことがささらには気がかりだった。
「まだ三人も、この国にいるのか。ゾロニアンはそれほどの巫女が集まるほどの相手だというのか」
「そいつは下っ端よ、その後ろにいる邪悪なもののね」
「邪悪なもの?」
「大宇宙の闇の権化、そいつが手始めに二千年前の邪悪を蘇らせようとしている。オオヒメの『アマテラス』を利用してね」
「それで、怪物たちがオオヒメを狙っているというわけか」
「そう、稀代の鬼巫女が二人がかりで封印したと伝えられる『卑弥呼』を復活させて何かを企んでいるらしい。まだその先はわからないけれど、私たち五人に『大姫神社へ集まれ』と連絡が入ったところを見ると何かわかったのかもね」
「それまで怪物どもがここにきたら?」
「しっ!」
結界が揺れた、侵入者だ。
「ほら、早速現れたみたいだわ。かなりの数ね、疲れるけど二人で倒すしかないでしょう。あーあ、やだなぁ」
二人は複数の赤い目を見ると素早く身構えた。
一方、連絡を受けたツカサとバンである。二人は『ハナきき』の示す道を進んでいた。そしてようやくその店にたどり着いた。店の名は『摩訶』そう、サリナが「アマネ=的場タイスケ」と暮らしていた店だ。アカデミアの常連で成り立っていた古いスナックだ。
「カランコロン」
ドアにあるカウベルの乾いた音が響くが、店内は静まり返っていた。うっすらと埃の積もった床はよく見ると数種類の足跡があり、そこだけ『マホガニー』のツヤを取り戻していた。
「良くやった、ハナきき」
カウンターの奥から男が現れた。
「ボス、ご無事で何よりです」
「上で話そう、みなさんもどうぞ」
摩訶の階段を「バン」が「ツカサ」に肩を貸しながら上り、そのあとに続いて「クロ」そして「ハナきき」の順で部屋に入った。しつらえたベッドには「サリナ」が横になっていた。見守っていた影が少し動いた。
「サリナ、いったいどうしたの?」
ツカサが声をかけるがもちろん、返事はなかった。
「彼女はずっと眠っている、解毒はしたのだが原因はわからない」
そう言ったのは「ノア」である。
「ひょっとすると、この結界の影響かもしれない。確か彼女は地球人ではないと聞いたが」
ミネスは首をひねりながらノアに聞いた。
「サリナは『ゴリアンクス』の王家の娘だ、その星は今ではブラックホールの中に消えてしまったがな……」
ノアの答えにツカサはこう推理して皆に話した。
「香奈様の大結界は『選ばれしもの』と『倒すべきもの』を明らかにする、サリナは選ばれしもののはず。それなのに動けなくなるとは、もしや香奈様のお力が弱まりつつあるのかもしれない……」
ツカサの予感は正しかった。条家の巫女のように自ら会得した術を持つものは別だが、それ以外の生き物は一時的に『石化』させ、地球に飛来した『巨大隕石』が起こした大津波の災厄から『大結界』に寄って一時的に時間を止め、日本を守ったのである。香奈は異界、大宇宙から訪れたものの為に、結界の中に石化を止める術を練りこんでいたのである。その術が今まさにほころびかけているのだった。




