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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
花降り編 第三章 みずおととともに
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第二十話 みんな一緒に遊びましょ♪

「なるほど。事情は了解したであります!」


 馬車へと戻った俺は、幼女たちに状況を伝え、準備に入った。


「……ミリィの為なら……わたしたちも協力する。」


 竜種の"掟"――他種族との交流を禁じるという排他的なしきたりにケンカを売る為に――。


「うむ。他でも無いミリィの為じゃ。妾も喜んで力を貸そう。」


 幼女たちも満場一致で合意してくれた。


「ごめんね、みんな。面倒なことに巻き込んじゃって……」


 申し訳なさそうにそう詫びるミリィに、幼女たちは口々に告げる。


「……ミリィ、……だいじょぶだよ?」


「お気になさらず! 我々もミリィ殿の力になりたいであります!」


「うむ。困っているミリィを見て見ぬフリ出来る程、妾たちは薄情ではないのじゃ!」


 その言葉に、ミリィも「うん。ありがとう……!」と返す。


 ウチの子たちはやっぱ皆いい子だ。


「……だがの、レティーナ。」


「ん? どーしたグリム。」


「その話と"この格好"は……一体、何の関係があるのじゃ?」


 そう言ってグリムは、自分の着衣を摘まむ。


 そう。

 今、俺の前に居並ぶ幼女たちは、いつもの服装では無いのだ。


 俺が"力"で出した"ある服装"に着替えてもらった。


 それは……


 学校教育における体育の時間に着用される、運動に適した服装――

 すなわち"体操着"である!


 上着は袖口と首回りに紺のラインの入った白の"トレーニングシャツ"!


 そして……!

 そして勿論ボトムスは……!!


 現代では失われた秘宝(アーティファクト)――"ブルマー"なのだ!


「おぉ! これは動きやすいでありますなっ!」


 ロロは無邪気にその場駆け足する。

 健康的な太もものラインがひっじょぉぉおに!Good!!


「むぅ……。妾はもっと装飾の多い服の方が好みなのじゃが……。」


 不満顔のグリムは上着をインせず外に出したスタイル。

 ウェーブロングの髪とのミスマッチさがまた魅力的だ!!


「ちょっとだけ……恥ずかしい……。」


 シャルは上に羽織った長袖ジャージをぎゅっと押さえている。

 隠しきれない白い太ももが……何ともそそるっ!!


「へ、変じゃない……かな?」


 ミリィはもはや言わずもがなだ!

 発育の良い身体が押し上げる体操着……浪漫の具現そのものではなかろうか!!


 あぁ……、なんだろうこの感覚。

 伝わる者には伝わるだろう?


 単なる露出による色っぽさだけではなく、どこか郷愁(ノスタルジー)を感じさせる不思議な魅力……!!


「おねーちゃん! どーぉ? 似合う?」


「ふぉぉ……! ぴっちりなの……!」


 アイリスとコロネが俺に駆け寄って問う。

 ちなみに妹たちはブルマーではない。


 敢えて……!

 敢えての"スパッツ"だ!!


 あまり妹たちに"そーゆー"目線を向けないようにと自制したつもりだったのだが……


「お、おぅ……良く似合ってる、ぞ?」


 若干目線を反らしながら答える俺。


 ……そう。

 これはこれで、可愛いお尻のラインが露わになってしまって……その……非常に魅惑的なのだ。


 あぁ、ヤバいなこの光景……。

 目のやり場に困る……。


「ふあぁ……! 素晴らしいですわぁ……!!」


 幼女たちを眺めて恍惚の表情を浮かべるエリノア。


 全くコイツは……って俺もヒトの事言えないけど。


「あれ? シュレムは着替えてないのか?」


 一着だけポツンと置かれた体操服を見て、俺は問い掛ける。


「スミマセン、レティーナさま。そのっ……馬車が新しくなったので、今のうちに慣れておきたくて……。」


 そう答えながら、シュレムは馬車内のあちこちをいじっている。


 あぁ、そっか。

 馬車を乗り換えたから、この馬車の"呪装"に慣れとかなきゃいけないのか。


「あぁ、ゴメンな。コッチなら大丈夫だ。気にしないでくれ。」


「スミマセン……。」


 シュレムの体操服姿も見てみたかったが……まぁそれはまた次の機会にしよう。


「それで、これからどうするのでありますか?」


 ロロの問い掛けに、俺は我に返る。


 ……オホン。

 そうだ。何も俺は幼女たちにコスプレをさせたかっただけではない。


「みんな馬車の長旅で運動不足になってんだろ? せっかく広場もあるんだ。ちょっと運動してもいいかなと思ってな。」


 俺の言葉に、幼女たちは首を傾げる。


「それだけでありますか?」


 ロロが代表して疑問を口にする。


 そう。

 それだけじゃ、ミリィの件との関連が分からないだろう。


「あぁ。で、そのついでに……」


 俺は右手を握り、幼女たちに"ある物"を手渡していく。


 さぁ、作戦開始だ。


***


 湖畔の街"イヴァラム"――。


 その街の中央――大きな湖の畔に広がる河川敷のような広場には、この時間は多くの子どもたちが遊んでいた。


 この街に住むとある竜種の少女も、今日は友だちと一緒にこの広場に集まっている。


 と、そこへ――


「こんにちは~! ちょっとこの辺りをお借りしてもいいでありますか~?」


 声を掛けてきたのは、黄緑色のミディアムヘアで、ちょっと癖っ毛の少女であった。


(……しらない子だ。)


 少女は無意識に一歩、距離を取る。

 日頃、両親から言われているのだ。


 "他所の街の子と遊んじゃいけません!"――と。


 少女は"竜種の掟"について、深いところまで知らない。


 が、少女はよりシンプルに、『おかあさんにおこられちゃうから』という理由で、その言いつけを守るよう心掛けていた。


 それは少女の友だちも同じらしく、癖っ毛の少女から離れた場所へと移動する。


 少女もそれに倣う。


 心の中で、ちょっとだけ『ゴメンね……』と感じながら――。


「お! ありがとであります!」


 だが癖っ毛の少女は、場所を空けてくれたと捉えたらしく、その場で遊び始める。


「ロロ~! この辺りでよいか~~?」


「グリム殿~! おーけーでありますよ~!」


 癖っ毛の少女から離れた場所で、もう一人、知らない顔の少女が声を上げる。

 腰まで伸びた菫色のウェーブロングの髪の少女だ。


(と、となりで遊ぶだけなら……いいよね?)


 少女はそう心の中で唱えつつ、友だちとの遊びを再開しようとする。


 すると――


「ではいくであります! それっ!」


(えっ? ……えぇ~~!?)


 癖っ毛の少女が、ウェーブロングの少女に向けて"何か"を放る。


 その"何か"は――まるで空中を"泳ぐ"ように、スイィーッと静かに宙を飛び、ウェーブロングの少女にキャッチされる。


(な、何!? なになに、今のー!?)


 見ないようにしようと思いつつも、その不可思議な動きをする"何か"に、少女の視線は奪われてしまう。


「ナイスじゃ~! では妾もいくぞ~! そりゃっ!」


 ウェーブロングの少女が"何か"を投げ返す。

 放られた"何か"は、先ほどと同じようにまたスイィ―ッと宙を舞い、だが今度は――


(わっ、わわっ!!)


 癖っ毛の少女の立ち位置から大きく逸れ――竜種の少女の足元へとパタン、と落ちた。


「すまぬ~! 手が滑ったのじゃ~!」


 遠くからウェーブロングの少女の詫びる声が聞こえる。


「ごめんなさいであります~! 取って頂けますでしょうか~?」


 癖っ毛の少女が、竜種の少女へと声を掛ける。


(う……拾ってあげるだけなら……いいよね?)


 竜種の少女は、葛藤しつつもその"何か"を拾い上げる。


 それはピンク色をした、"お皿"のような物だった。

 何で出来ているのかは分からないが……とても軽い。


「こちらへ投げてくださいであります~!」


 癖っ毛の少女が手を挙げて"それ"を放るよう促す。


 少女はまた葛藤する。


 葛藤の天秤の左側には、『おかあさんにおこられちゃう!』という気持ち――。


 葛藤の天秤の右側には、『でも頼まれたんだから渡してあげなきゃ……』という気持ち――。


 そして、天秤の右側にはもう一つ――


 『わたしも"これ"を投げてみたい!』という気持ち――。


 グラリと傾いた心の天秤に従い、少女は"それ"を放る。


(わ……わぁー!!)


 少女の投げた"それ"は、やはり同じように空中をスイィーッと宙を泳いだ。


 ゆっくりと飛んだ"それ"は、癖っ毛の少女の頭の少し上へと向かい――


「ほっ!」


 ジャンプした癖っ毛の少女によって、空中で華麗にキャッチされた。


「ありがとであります~!!」


 癖っ毛の少女が笑顔で礼を言う。


 少女は今の体験に、思わずドキドキしていた。


 すごく……すごく楽しい!!


「ね、ねぇ!? 今のなに!?」


 振り返れば、一緒に遊んでいた友だちも傍まで寄って来ていた。


「わ、わかんない! でも……」


 どう表現すれば良いか分からず、言葉に詰まる少女。

 そんな少女は、友だちの視線が自分の――後ろに向けられていることに気付き、振り返った。


(わっ!)


 少女の後ろには、先ほどの癖っ毛の少女が居た。


「よかったら、おひとつどうですか? たくさんありますので!」


 癖っ毛の少女が手にしていたのは、先ほどの"何か"と同じものだ。


 赤、青、緑、黄色――。


 カラフルなそれらに、少女も、その友だちの視線も釘付けになる。


「"フリスビー"という遊び道具であります! 楽しいでありますよ!」


 にっこりと笑ってそれを差し出す癖っ毛の少女。


 少女たちの葛藤の天秤は、またしてもグラリと揺らぎ、そして――


 数分後、広場には笑い声と共に、色とりどりの円盤が宙を泳ぐこととなるのだった。


***


「よっし! とりあえず第一段階はクリアだな。」


 湖と広場を囲う丘の上から広場を見下ろし、俺は呟く。

 広場ではウチの幼女たちとこの街の子供たちが楽しげに遊んでいることが伺えた。


「レティちゃ~ん!」


 ミリィが俺の元へと駆け上がってくる。


「すごいね! みんな仲良しで遊んでくれてるよ!!」


 息を切らしつつも、満面の笑みでそう告げるミリィ。


「あぁ、ここからも見えてたよ。」


 先ほどまでミリィもそこに混ざっていたのは、俺も知っている。


 まぁ子どもってのは純粋なモンだ。

 目の前にある好奇心からは、どうしたって目を逸らせねぇ。


 竜種の"掟"を崩しにかかるなら、頭の固い親連中よりもまずは素直な子どもたちから――。

 そう考え、幼女たちに動いてもらったのだ。


 幼女たちに渡した"遊び道具"――。


 "フリスビー"に"バドミントン"に"ウォーターガン"に……

 この街の子どもたちは、初めて見るそれら全てに目を輝かせていた。


 そして俺も意外だったのが……


「みんな~! いっくよーー!!」


「「「「わぁ~~~!!!」」」」


 ――アイリスのコミュ力の高さだ。


 積極的に声を掛け、すぐに沢山の子と打ち解けたようだ。

 今も竜種の子どもたちを十人以上引き連れて走り回っている。


 あー、あれは"バブルガン"だな。

 走るアイリスの手に握られたそれによって、大量のシャボン玉が広場を埋め尽くしている。

 子どもたちは歓声を上げながら、それを追いかけていた。


「レティちゃんの"計画"、大成功だね!」


 嬉しそうにそう言うミリィに、


「あぁ。まず"一つ目"はな。」


 と返す。


 さぁて、そんじゃあこの調子で"次"に行くか。

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