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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
花降り編 第二章 つきあかりとともに
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第十五話 きっかけはキミだから

「ロロちゃん、レティーナちゃん、エリノアさん。今日はホントにありがとう。」


 店を出たミサキさんは、そう言って俺たちに深く頭を下げた。


 その感謝の意を受け、俺の隣に立つロロは少し困ったような表情をする。


「ミサキ殿……お礼の相手が違うでありますよ。自分は結局何もしていませんので、レティ殿とエリノア殿だけで……」


 そう言おうとしたロロの言葉を、俺は遮って告げる。


「そうだよミサキさん。お礼なら……ロロにだけ言えばいい。」


 俺がそう言うと、ロロが困惑した顔をする。

 そんなロロを他所に、俺は続ける。


「俺らはロロがミサキさんの事、泣くほど心配してたから動いただけだ。だから……礼ならロロに言ってくれればいい。」


 実際そうなのだ。

 もしミサキさんが今日たまたま知り合っただけの人だったら、例え事情を知っても俺は動かなかっただろう。


 だから感謝される謂れは無い。

 ロロが居なきゃ、そもそも助けなかったのだから。


 俺の言葉に、ロロはまだ何か言おうとしていたが、


「そうね……。ありがとう、ロロちゃん。」


 そう言ってロロの身体をぎゅっと抱きしめたミサキさんに、それ以上は何も言わなかった。


 すると、ミサキさんの後ろに居たトーブとウェノーが、俺の元へと歩み寄った。

 ロロに聞こえないようにという配慮だろう。

 しゃがんで小さな声で、二人は俺に言った。


「レティーナ様、この度の件、心から感謝致します。」


「もし何か困った事があればご相談下さい。我ら"アナ・ゴーイ憲兵団"一丸となってご助力致します。」


 そう言って二人は傅く。


 お、おぅ……。

 そりゃありがてぇけど……大男二人に傅かれるってすげぇ迫力あんな……。


 ……あ!


「あ、じゃあさ。さっそくなんだけど一つ……いや、"二つ"、お願い出来るか?」


***


「んじゃ、二人ともミサキさんの事よろしくな!」


「お任せ下さい! ミサキ先輩は無事に送り届けます故!」


「"先程の件"もお任せ下さい! 明日の朝にはご用意出来ましょう!」


「おー! よろしくー!」


 トーブとウェノーにミサキさんを送るのを任せ、俺らは宿への帰路に着いた。


「レティ殿。"先程の件"ってなんでありますか?」


 歩きながらロロが問う。


「ん~。ちょっと二人に頼み事があってな。まぁ明日の朝には分かるさ。」


 特に隠す意味は無いが……まぁ内緒にしとこう。


「それにしてもミサキさん、すげぇよな。レゴルから診療費を取り立てるだけじゃなく、強烈な仕返し(ビンタ)まで……。」


 俺がそう言うと、ロロがハッとする。


「れ、レティ殿! ミサキ殿は大丈夫でありましょうか!? もしあの貴族が憲兵さんに訴えでもしたら……!」


 遅れながら気付いたロロが不安な表情を見せる。


 そう。確かにあれはグレーゾーンだ。

 暴力を振るった事に違いは無い。


 だが……


「大丈夫だ。」


「ほぇ……?」


 俺の言葉に、ロロがぽかんとする。


「考えてみろ。憲兵さんに訴えるにしたって、何て言うんだ? 『フった女にビンタされました!』って? そんな事言ったところで、鼻で笑われて取り合っちゃ貰えないさ。」


 気絶する程の威力とはいってもただの"ビンタ"だ。

 そんな事でミサキさんを捕らえに来る程、憲兵も暇じゃない。


 むしろ訴えればレゴル自身の名を貶める行為になる。

 『フった女にビンタされて失神した貴族』なんて永久に笑い者だ。


「逆にあの一発で、レゴルは完全にミサキさんを諦めるだろうさ。」


 そう言ってやると、ロロは安心してくれたようだ。

 ほっとしたような表情で、少し俯き気味に呟く。


「やっぱり……レティ殿はすごいであります……。」


「ん? 凄いのはミサキさんだろ?」


 そんなやりとりをしつつ、宿への道を歩く俺とロロ。


 と……


「うぇっぷ……。飲み過ぎましたわぁ……。」


 ……酔っ払いサキュバス。


「お前なぁ……。作戦じゃ"二、三杯飲んだらミサキさんの件を聞く"だったろ?」


 エリノアが何杯もおかわりするもんだから、本当に酔いつぶれるんじゃないかとヒヤヒヤしていたというのに……。


「そ、それは……その方がレゴルさんを油断させられるかと……」


「……"血の盟約"で命じる。本音は?」


「うわ~ん!! あのカクテルが美味しかったんですもの~~!! ごめんなさいですわ~~!!」


 全くこの従者は……。

 うん、後でお仕置きしとこう。


***


 部屋へとエリノアを送り届けた俺は、自室に戻るべく廊下を歩く。


 長い一日だったが……これでロロも安心出来るだろう。

 ロロの笑顔に比べりゃ、大した事じゃない。


 そんな風に考えていた俺は――


「? ロロ?」


 自室の前に、俺を待つようにしゃがんでいたロロに遭遇する。

 ロロは俺に気付くと、立ち上がって何かを伝えようとする。


「レティ殿……その……。」


 何やら思い詰めたような表情で言い淀むロロ。


 どうしたのだろう?

 ミサキさんの件ならもう心配は無いと思うが……


 それからしばらく悩んでいたロロだったが、やがて意を決したように口を開いた。


「そのっ……今から少しだけ、一緒に"お散歩"して頂けませんでしょうかっ……!!」

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