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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
花降り編 第二章 つきあかりとともに
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第十一話 元気な姿を見せたくて

 『会わねばならない人がいる』と語るロロに連れられて向かった先――


 そこはこの街唯一の"診療所"だった。


「んじゃ~ね~! ミサキちゃ~ん! また明日~~♪ ……おっと。」


 診療所の扉を開けようとした時、入れ替わりで出てきた男とぶつかる。

 無駄に着飾ったチャラい外見の、金髪の男。


 ここは防衛の街で兵士が多いらしいが、この男はよそ者なのだろうか?

 力仕事などしたこともなさそうな、ひょろっとした体型をしていた。


「ちっ……。」


 ぶつかったにも関わらず、男は詫びもせずそのまま俺の横を通り過ぎる。


(なんだアイツ。)


 診療所から出てきた割に、身体のどこかを悪くしている様子も無かった。


「レティ殿! 大丈夫でありますか!?」


 チャラ男にぶつかられてよろけた俺を、ロロが心配して声を掛ける。

 ロロは去っていく男の背中をキッ! と睨み、一声掛けようとしたが、


「いいよ、ロロ。俺は大丈夫だ。それよりも今は……な。」


 と俺が止めると、渋々といった感じで「はい……。」と返事を返した。


 ……まぁ俺じゃなくロロにぶつかってたら、即行で謝らせてただろーけどさ。


 そんなこんなで、俺たちは本来の目的である診療所へと入る。


 木製の扉を開けて中に入ると――受付に座る女性が、ロロを見るなり驚きの声を上げた。


「ロロちゃん……!?」


 女性に声を掛けられ、ロロは少し暗い顔で返事を返す。


「お久しぶりであります……ミサキ殿……。」


***


 彼女の名はミサキさん。


 ロロの従者だった"ウォレス"さんって人の奥さん。

 つまり――ロロの弟くんたちの、お母さんだ。


「そう。あの人……亡くなったの……。」


 俺を紹介してもらった後、ロロはミサキさんにウォレスさんが亡くなった事を話した。

 ロロの話を聞き、ミサキさんは力無くため息を吐く。


 ウォレスさんはロロと弟くん達と共に人間領で暮らしていたが流行り病で亡くなったと、俺も以前聞かされていた。

 それ以来、ロロが弟くんたちの世話をしているとも。


「ごめんなさいであります。本当なら、もっと早くにお伝えしなければいけなかったのでありますが……」


 そう言って詫びるロロに、ミサキさんは首を横に振った。


「ロロちゃんのせいじゃないわ。それに……」


 ミサキさんは少しだけ無理をして微笑んで、


「あの人がディエゴ様の従者になった時から、仕事の中で死ぬのは覚悟していたもの。」


 そう語った。


 ディエゴ様……ロロの父ちゃんで、魔王軍幹部【キングベヒーモス】だった人だ。


 そこまで告げるとミサキさんは、ロロの前で――深々と頭を下げた。


「ロロちゃん……いえ、ロロ様。仕事を全う出来ず逝った事を、亡き夫に代わってお詫び致します。」


 頭を下げられたロロは、泣きそうな程に困った顔をする。


「そんなっ! ミサキ殿!! やめてください!! ウォレス殿もミサキ殿も、自分にとっては家族同然の存在でありますよ!!」


 ロロの親父さんと、ウォレスさんは元々戦友だったらしい。

 幼い頃から家族ぐるみの付き合いがあったんだと、ロロから聞いていた。


 ロロが必死になって訴えると、ミサキさんはようやく頭を上げた。


「ごめんなさいね。でも……夫も無念だったと思うの。ディエゴ様から頼まれたロロちゃんの事、しっかり見届けたかったと思うわ。」


「そう……でありますね。ウォレス殿は、最期の時まで自分の事を心配してくれていたであります……。」


「トーブ君たちには……もう会った?」


「はい。先程お会いして……ウォレス殿の事も伝えました。お二人とも、とても残念がって下さいました。」


 そして、しばしの沈黙が部屋に流れた。


「……あの子たちは、一緒じゃないのね?」


 静寂を割って、ミサキさんが口を開く。


 あの子たち……ロロの弟くんたちの事だろう。


「ごめん、ミサキさん。俺の判断で、今回の旅には同行してないんだ。」


 これ以上ロロに謝らせるのが心苦しくなり、俺が横から詫びる。

 馬車の都合もあったが……この街に寄る予定が分かっていれば連れて来ただろう。

 俺は心の中で唇を噛んだ。


「レティーナちゃん……。そう……なのね……。」


 ミサキさんは寂しそうな表情で呟いた。


 無理もない。

 旦那さんとも子供たちとも会えず、ずっと魔族領で一人生活していたのだ。


 元々軍医だったミサキさんは、この街で唯一のお医者さんだった。

 ロロが人間領に向かう際、旦那さんからは『一緒に行こう』と誘われたらしいのだが……

 責任感の強いミサキさんは、『この街の人たちが困るといけないから』と断ったらしい。


「……。」


 胸に浮かんだ『いつでも遊びに来てください』という言葉を、俺は飲み込む。

 魔族領と人間領の行き来は、まだそう簡単に出来るものじゃない。

 言ったところで、気休めにもならないだろう。


 くそぅ。

 せめて弟くんたちの元気な姿を見せてやりたいが……。

 生憎な事に、弟くんたちを録画したものなんて……


「……あ!」


 思わず口を開いた俺に、ミサキさんとロロの視線が集まる。


 そっか!

 そうだ!!


「ミサキさん! ちょっと待っててもらっていい!?」


「えっ?」


 ミサキさんが首を傾げる。


「もしかしたら……弟くんたちの姿、見せられるかも!」

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