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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
最終章 まぞく
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第六十六話 平和の欠片たち

 舞台に上がった"魔族"を名乗った少女たち。

 元・勇者や王国軍の登場によって、恐慌状態は沈静化したが、しかし、人々の困惑は消えなかった。


(魔族が……一体何を伝えるっていうんだ?)


 これが魔族側の権力者や外交官ならばまだ話はわかる。

 戦争が終結して数年……今後の外交について、民衆に理解を求めに来た、と。


 だが、舞台上の少女たちは皆一様に幼い。

 とてもそんな重役を負っているとは思えない。


 そんな幼い少女たちに、何を言われたところで、そんなものにどれほどの効果があろう?


 困惑を残したままの人々を前に、舞台上の少女は先ほどの言葉の続きを述べる。


「今日はみなさんに、伝えたいことがあります。どうか私たちの気持ちを、聞いて下さい。」


 少女がそう言うと、どこからか音楽が流れ始める。

 そして舞台上に、色とりどりの光が現れる。


***


(音楽は問題無し。モワの"幻術"による舞台効果もバッチリだな。)


 俺は舞台袖から幼女たちのステージを見て一人頷く。


 そう。

 俺が作りたかったのは、幼女たちの"舞台(ステージ)"だ。


 ただし……これで終わりじゃないけどな。



「~~♪」


 イントロが終わり、歌が始まる。


 人々は未だ、困惑している。


 が、


(ミリィ! 頼むぞ!)


 ステージの上で、ミリィが"力"を使う。


 【スキルリンク】。

 近くにいる誰かの"力"を、他の誰かに"繋ぐ"ことの出来る"力"。


 その"力"で繋ぐのは……


「ミリィさん……皆さん……がんばってくださいまし!」


 俺の隣で、同じく幼女たちのステージを見守るエリノアの"力"だ。


 エリノアの"力"。

 魂を見る"力"。


 その"力"を……


 ミリィは会場に集まる、全ての人々に"繋いだ"。


***


(え……?)


 会場の人々は、少女たちの歌が始まると同時に、自分の"目"を疑った。


 少女たちに重なるように現れた"光"。


 始めて見るその"光"が何なのか、不思議なことに、人々は理解していた。


(あれは……"魂の光"……なのか?)


 六人の少女に重なる、六つの"魂の光"。


 その"光"と共に、舞台上の少女たちは踊り、歌う。



 その歌は、ありふれた歌だった。


 何せその歌詞は、これまで何人ものアーティストが歌ってきた"ありふれたテーマ"の歌詞である。


 "愛"と並んで尊いとされるもの。


 "平和"を歌った歌。


 それも"戦争を止めよう"とか"国境を無くそう"とか、そんな大それたものじゃない。


 "アナタと友だちになりたい"。


 ただそれだけの……ある意味ではとても幼稚に聞こえる歌詞。



 しかし……


 人々の目には、それを歌う少女たちの、"偽りない魂の光"が見えていた。


 一つ一つの、平和を望むありふれた"歌詞(ことば)"。


 その言葉に、一片の嘘も打算も無い。


 純粋な"願いの言葉"……。

 それを、ただ懸命に伝えようとする少女たち。


 その拙くとも一生懸命な"願い"は、間違い無く人々の心の奥深くまで刻まれていた。


***


 そう。

 これこそが、俺が作りたかったもの。


 エドと元・勇者の前で約束した"とびっきりの利益"であり、"今まで誰も成し得なかったこと"。


 人間と魔族の……"平和"。

 その一歩。


 人は、"理解できないもの"を恐れる。


 例え相手にそんなつもりがなくとも、ソレがいつ、自分に危害を加えるかと疑心暗鬼になる。


 だったら晒してやればいい。


 ありのままの"本音"を。

 疑いようもない"本心"を。


 そうすりゃ、恐れなんてなくなる。



 その証拠に……


 歌が始まる前は恐怖で満ちていた会場が、今は……


 少女たちの歌う"平和の歌"に、真剣に聞き入る人々。


 俺の目にも見える人々の"魂の光"からは、もう一切の"嫌悪"や"恐怖"は消え去っていた。


 そう。

 何も変わらないのだ。


 "力"の有り無しなんて些細な差だ。


 少なくとも、今舞台上にいるのは、人間と"友だちになりたい"と、本心で訴える少女たちだ。


 ならばもう、種族の壁など有りはしないのだ。


***




「♪~~……。」


 曲が終わる。


 会場に静寂が戻る。


『……パチ…………パチパチパチ……』


 誰からともなく始まったその拍手は、瞬く間に万雷の拍手となって会場を包んだ。


 そこにはもう言葉など要らなかった。


 少女たちが舞台に上がったときには罵声を浴びせていた者までもが、感動に涙を流し、拍手を送っていた。


 その拍手を浴びて舞台上の少女たちは、最高の笑顔でお辞儀して、舞台を降りたのだった。

 お読み頂きありがとうございます♪

 これにて本編完結となります。


 あとは明日、最後の章末閑話で完結とさせて頂きたいと思います。


 ……初めて書いた作品だからなのかな?

 なんか『終わらせたくない!』って気持ちになっちゃいますが……。


 ちゃんと完結させてあげることが、この作品の為だと思っていますので。


 ここまで読んで下さった方、もしお時間ありましたら、どうか本作の最後を見届けてやって下さい。

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