第六十五話 勇気の告白
いよいよ今日が"祭りの日"だ。
この国で最も新しく出来た祝日で、この国で最も大きな祭りの日。
数年前……人間と魔族の長年に渡る戦争が終結した日。
【終戦記念日】である。
尤も現代日本のそれと違い、この異世界のこの国は"戦勝国"である。
戦没者を思い、涙を流す者ももちろん多くいるが、しかし国全体としてはやはり"祭り"といったムードが漂っている。
王都の中央通りには多数の屋台が並び、各店舗でも"戦勝記念セール"が行われていたりした。
***
ここ、王都"キング・ヤード"の王城も、この日は一般の立ち入りが許可されており、敷地内は多くの人々で賑わっている。
正午から始まった"式典"。
今はエドの…国王陛下の演説が行われているところだ。
戦没者やその遺族に向けたメッセージ。
戦争で傷付いた街の復興状況と方針。
そして……人間と魔族の、今後の歩みについて。
若くともしっかりとした意思を感じさせる言葉。
その演説の最後は、こう締め括られた。
「これで本日の式典は終了だ。だが……もし時間に余裕があるのであれば、もう少しこの場に残って頂きたい。私の"友人"から、皆さんに伝えたいことがあるらしい。」
そう言った王の言葉に、広場に集まった多くの人は首を傾げる。
王の友人?
わざわざ、こんな大勢の大衆の前で伝えたいこと?
エドが……王が舞台を降りる。
式典の終了を知らせるアナウンスが、大衆に響く。
大衆の多くは、王の言葉に好奇心を煽られ、広場に足を留めたまま残っていた。
そして……
次に舞台に上がったのは、幼い少女 六人であった。
全員が煌びやかな衣装を纏っている。
現代日本であれば"アイドル衣装"と表されるようなそれだ。
少女たちは舞台の中央に並ぶ。
人々はそれを、狐につままれたような顔をしてただ見ていた。
中央の一人の少女が、舞台の前方へと歩み出る。
そして、……言った。
「皆さん。わたしたちは………"魔族"です。」
――数秒の静寂。
そして……
「"魔族"……?」
「"魔族"だと……!?」
「はぁあああ!? "魔族"だと!!?」
「いや……いやぁぁあああああ!!!」
「ふざけんな!! "人間"の敵が何しに来やがった!!」
「出ていけ!! 今すぐ出て行きやがれ!!!」
まるで波紋が広がるように、平静を失い、舞台上の少女たちに罵詈雑言を浴びせかける人々。
中には物を投げつける者もいる始末だ。
舞台上の少女の一人が、"見えない障壁"で投げつけられた物を防ぐと、人々の罵声はより強くなった。
「見ろ!! "力"を使ったぞ!!」
「本当に"魔族"だ!! くそったれが!!」
「お前らに人間がどれだけ殺されたと思ってんだ!!」
罵声と悲鳴で、もはや恐慌状態の会場。
そこに……
それらを消し飛ばす程の大声が響いた。
「テ メ ェ ら !!!! 落 ち 着 き や が れ ェ !!!!」
轟雷の如き大声に、人々は虚を突かれ、罵声を発するのを止める。
声の主は、人間の中では知らぬ者などいない程に有名な、先の戦争における"英雄"……"元・勇者"レーヴスであった。
「勇者……?」
「勇者さまが……なんで?」
困惑する人々。
「総員!! 防衛陣、展開!!!!」
再度、別の大声が響く。
舞台前に盾を構えた王国軍の兵士が一列に並ぶ。
その中央から、一人の男が大衆に向け声を発する。
「"王国軍 南方防衛部隊長"アーレイです。もしこの者たちが危害を加えるような素振りを見せれば、すぐに取り押さえますのでご安心を!!」
ダンディボイスでそう告げるアーレイ。
元・勇者と王国軍が現れたことで、急速に平静を取り戻していく会場。
その二人が、舞台袖に向けて親指を立てていたことに、気付いた者は居なかっただろう。
その舞台袖。
元・勇者とアーレイに親指を立てて返し、舞台の少女たちに合図を送る者がいた。
少女たちは、舞台袖の人物に力強く頷く。
舞台袖の人物は、小声で呟く。
「さぁ、ステージは整った。後は……任せたぞ。」
その人物こそ、先代魔王の娘、レティーナ=ランドルト。
すなわち……俺である。




