第六十二話 涙の約束
…………ィ!
……ティ!
レティ!
「レティ!! しっかりして!! レティ!!」
俺が意識を取り戻すと、目の前にシャルの泣き顔があった。
「シャ……ル……?」
「レティ!? 気付いたの!?」
シャルは涙をぼろぼろ流している。
なんだよ……いつものシャルらしくねぇな。
「レティ殿!!」
「レティーナ!!」
「レティちゃん!!」
「おねーちゃん!!」
「れてぃねぇ!!」
「お嬢さま!!」
おいおい、どうした?
みんな揃って泣き顔並べて……。
ったく、誰だよ。
可愛い幼女たちを泣かせやがったのは……。
「私のことわかる!? レティ!?」
「お、おぅ……シャルの可愛い顔……忘れるワケねぇだろ?」
俺がそう言うと、シャルは更にぼろぼろと涙を溢す。
あーあー、泣くなって。
頭撫でてやっから。
と、右手を持ち上げようとした俺は、その右手が黒コゲになっていることを思い出した。
あ、あー……。
そっか、それで泣いてんのか……。
「悪いな……心配かけて……。」
俺がそう言うと、シャルはふるふると首を振る。
「……レティが、……守ってくれたんでしょ?」
そう言って涙を拭う。
「テノンは……どうなった……?」
俺の問いに、グリムが答える。
「彼奴なら縛り上げたから心配いらぬ。街に倒れておった手下連中もの。王国軍にも連絡した。じきに連れて行かれるじゃろう。」
そか。じゃあ生きてはいるのか。
よかった。人殺しなんぞしたくなかったからな。
「元・勇者は……? アイツ腹刺されて……」
今度はロロが答える。
「レーヴス殿も、命に別状は無いであります! レティ殿のお陰で、発見が早かったのが幸いでした!」
あー……そっか。
そういやテノンに連れて行かれる直前、倒れてる元・勇者の横に、発見してもらえるよう"キッチンタイマー"を出して置いといたっけ。
「つか……よくココがわかったな。」
結構街から離れてたはずだが。
「うん。おっきな音がしたから。」
ミリィが答える。
あぁ……"雷"が聞こえたのか。
そりゃラッキーだったわ。
「ゴメンな……。みんな。」
俺は右手に目を向ける。
「こんな身体じゃ……、もう頭撫でたり……出来ないな……。」
「おねーちゃん……大丈夫だよ! きっと治る! ……ううん! 治る方法、探すから!」
「そうなの! ぜったいみつけるの!」
アイリスとコロネが、涙目で言う。
「……レティが治るまで、……ずっと傍にいるから! ……そしたらまた……頭撫でて?」
シャルが言うと、他のみんなも頷く。
「いいのか……? 身体が治ったら……またえっちぃこと……するぞ……?」
俺が力無く笑って言うと、それぞれが答える。
「……いいよ! ……元気になったら、……いくらでもしてあげる!」
「そうであります! 毎晩でも構わないであります!」
「妾もじゃ! だから早く良くなるのじゃ!」
「わ、わたしも! レティちゃんの為なら何でもするよ!」
その言葉を聞いた俺は、
……ニヤリと笑った。
「言ったな?」
「「「「え?」」」」
きょとんとする幼女一同。
「レティさ~~ん! 無事っスか~~?」
遠くからクリープが駆け寄ってくる声がする。
おぅ。良いタイミングだ。
「ミリィ、俺とクリープを"繋いで"くれ。」
「え? う、うん。」
ミリィは言われて、"力"を使う。
すると……
俺の黒コゲだった右半身は、あっという間に、元の綺麗な肌に戻った。
「「「「え?……えぇ!?!?」」」」
驚き顔の幼女たちに、俺は健康になった右手をわきわきしながら告げる。
「さぁて。約束、守ってもらおうか♪」




