第五十五話 この予感を信じて
「いい湯だったのじゃ~♪」
「日頃の疲れが取れたでありますなー!」
「気持ちよかったねー!」
「……ごくらく。」
風呂から上がった幼女たちは、俺の出した"コーヒー牛乳"や"フルーツ牛乳"を飲みつつ、"ヘアドライヤー"で髪を乾かしていた。
「お、おぅ……。そりゃ良かったな。」
俺はというと……のぼせていた。
幼女六人に揉みくちゃで洗われたせいだろう。
今は仰向けになってエリノアに膝枕されている。
「はぁ~♪ お風呂っていいですわね♪」
エリノアはのぼせた俺の顔を"うちわ"でパタパタ扇ぎながら、恍惚の表情を浮かべている。
ちなみにエリノアに大浴場を手配させた際に出した条件……
「大浴場が出来たら番台に座らせてやる。」と言ったら即オーケーしやがった。
まぁ今、本人が嬉しそうだから言わないけど……通常営業したらたぶん、客はほとんど男になるぞ?
「さて、少し早いが妾は店の準備に向かうかの。」
「自分もそろそろ開店前の仕込みをするであります!」
おっと……もうそんな時間か。
早朝に帰ってきてから、結構時間が経ったからな。
「グリム、ロロ、ちょっと待ってくれ。大事な話があるんだ。」
俺は起き上がり、脱衣場から出て行こうとする二人を制止する。
「確かグリムの屋敷の一階に、大部屋があったよな?」
グリムを連れ出した際にちらっと見た覚えがあった。
「ん? あるが……それがどうかしたのか?」
グリムが問う。
「そこを使わせてもらいたい。今日から毎日、夜はそこに全員集合だ。」
その言葉に、"ミリィ以外の"幼女たち(とエリノア)が俺を不思議そうに見る。
「……レティ、……なにか……するの?」
シャルの問いに、俺は頷く。
「一ヵ月後の"祝日"に、全員で王都に行く。」
俺の言葉に、今度はロロが言う。
「一ヵ月後の祝日というと……"あの日"でありますよね? この国で最も大きなお祭りの……」
俺はまた頷く。
「その"祭り"の日……みんなには"ある事"をしてもらいたい。その練習の為に、集まってもらいたいんだ。」
幼女たちを見て、そう告げた。
「ころねたちもなの?」
「あぁ。アイリスもコロネもだ。」
俺は妹たちの目を見て答える。
「店も忙しい中大変だと思うが……頼む!」
俺は幼女たちに深く頭を下げた。
――数秒の沈黙。
「いいよ!」
最初に声を発したのはアイリスだった。
「おねーちゃんがわたしたちを頼ってくれるなら、わたしたちは一生懸命がんばるよ!」
「そうなの! がんばるの!」
アイリスとコロネがやる気満々といった風に答えた。
「まぁ……お主に頭を下げられては断れぬな。」
「自分も! 微力ながら精一杯お手伝いさせて頂くであります!」
「……レティの為なら、……何でもする!」
グリム、ロロ、シャルもそう言ってくれた。
「して、何をするつもりなのじゃ?」
グリムが問う。
「店の準備があるんだろ? 詳細は今夜集まったときに説明する。ただ……今回の最大の鍵は"ミリィの力"だ。」
言われてビクッと反応するミリィ。
「ミリィ殿……。そう言えば、ミリィ殿の種族は何でありましたか?」
ロロが問う。
「あ、わたしはただの【ドラゴ……」
「【リンクドラゴン】だ。」
ミリィの言葉を遮って、俺が答えた。
ミリィは驚いた顔で俺を見る。
「レ、レティちゃん!? 【リンクドラゴン】って!?」
俺はミリィを、ニヤリと笑って見返す。
「俺が名付けた。いずれ、ミリィはそう呼ばれるようになるはずだ。」
そう。
遠くない未来、その名は誰もが知ることになるだろう。
祈りにも似たその予感を胸に――
俺は一ヵ月後の"祭り"に思いを馳せた。
お読み頂きありがとうございます♪
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もうどれだけ感謝してもし足りないです!!
また性懲りもなく閑話書きましたので置いときますね♪
ストーリーを純粋に楽しみたい方はお気になさらず♪
そして今回の投稿で第五章完結となります。
明日章末閑話を上げて、……明後日からいよいよ最終章です。
今の自分に書ける最高の最終回に出来るよう頑張りますので、どうかあと少し、お付き合い頂ければと思います。
それでは最後まで本作を宜しくお願い致します♪




