第五十二話 答え合わせの時間
「で! "答え"は用意出来たんだろ~? せっかくだから聞かせてくれよ~。」
元・勇者が言う。
まぁここまで来れば、"答え"なんぞ必要無いんだが……。
実はさっきからうずうずしてる。
俺の提案をこの二人の前でプレゼンしたら、どんな顔すんのかってな!
「んじゃ説明させて頂きます。"人間にとって無害な証拠を見せろ"に対する、俺なりの"答え"を。」
俺の言葉に、ミリィも元・勇者も、王も耳を傾ける。
「結論から言えば……無理だ。」
開幕から全否定した俺の"答え"に、元・勇者はがっくりと肩を落とす。
「嬢ちゃ~ん……自信満々に言っといてそりゃないぜ……。」
「オイオイ。プレゼンの否定は最後まで聞いてからが礼儀だぞ?」
そう。ここからだ。
「魔族を野放しにすることで人間に混乱が生じ、不利益を生む。それは俺らの意思とか関係無い話だ。しょうがない。」
悲しい事だが、人間と魔族の壁はまだ厚いからな……。
「だが……俺らを解放することで、"それ以上の利益"があるとしたら?」
俺の言葉に、王は真剣な目線を向ける。
「"利益"? 人間にとっての?」
「そう。それも"とびっきりの利益"だ。」
そこから、俺は説明した。
ミリィの持つ"力"と、俺の考える"利益を出すプラン"。
それを俺の持てるプレゼン力を全て使って情熱の限り伝えた。
「……以上だ。」
俺は説明を締める。
……と同時に、先ほどからぷるぷる震えていた元・勇者がついに"決壊"した。
「ぶっ!!! はははははははははははははははは!!!!!!!!! あ~~~っはははははははははははははははは!!!!!!!!! ひぃ~~!!! ふっ!! げほっ!! はっははは!!!!!!!!! あははははははは!! げほっ!! あははははは!!!!!!!!!」
元・勇者は一人で爆笑している。
腹を抱えて、涙を流しての大爆笑だ。
呼吸も出来ないほど笑っているようで、時折苦しそうな呻きが混じる。
ひとしきり大笑いした後、元・勇者は涙を拭いながら、俺を見る。
「あっははは!! 嬢ちゃん!! アンタ、サイッコーだよ!!」
笑いすぎて腹筋を痛めたのか、横腹を抱えている。
隣の王を見れば……王も微笑んでいた。
「確かに"とびっきりの利益"だ。"ソレ"は、我々が長年追い求めて、されど未だ手に出来ていないモノだからな。」
王はうんうんと頷く。
「んじゃ、認めてくれるんですね?」
「もちろんだ。むしろ我々も協力させて欲しい。」
「まったく恐れ入るぜ~。さすが"魔王の娘"だな~。」
よっし。プレゼン大成功♪
ドヤる俺の裾を、隣のミリィが不安げに引っ張る。
「レ、レティちゃん……そんな大役、私に出来るかな?」
俺はミリィの頭を撫でながら言う。
「大丈夫だ。ミリィなら出来るって!それに……"みんな"にも協力してもらうからな!」
そうだ。
このプランには、"みんな"で挑まなきゃな!
「……つーわけで"王さま"! 俺らは一刻も早くその準備に掛かりたい。外交の手続きとか待たず帰らせて貰うけど……いいよね?」
王にそう聞くと、王は右手でオーケーサインを作る。
「心配無用だ。家臣には適当に誤魔化しておこう。ついでに馬車も手配しよう。乗って行ってくれ。」
お、おぅ。王さま権限便利だな。
「魔王の娘さん……いや、"レティーナ"さん。君に会えて、本当に良かった。」
王は俺に握手を求める。
「……俺も、アンタみたいな話のわかる王さまに会えて良かったよ。アンタは……えっと……」
あー……王さまの名前知らねぇや。
「エドゥアルドだ。"エド"でいい。」
「んじゃ"エド"。これからもよろしくな!」
俺はエドと握手を交わし、玉座の間を後にした。
さぁて! これから忙しくなるぞー!




