第五十話 キミとならどこまでも飛べる
「さて……じゃあ具体策を練らないとな……。」
元・勇者の無茶振り……
"どうしても出して欲しけりゃ、人間にとって無害な証拠を見せろ"。
その宿題を攻略すべく、俺とミリィは頭を捻っていた。
「とりあえず、ミリィについて教えてくれ。何かヒントになるかもしれん。」
行き詰ったときは現状把握が基本だ。
俺が頼むと、ミリィは頷いた。
「えっと……パパは竜種【ティアマト】。魔王軍幹部でした。」
おぉ! 竜種!
ついにドラゴンさんですか!
「ミリィは? 種族は何になるの?」
「……【ドラゴン】です。」
ん? 【ドラゴン】?
頭に"レッド"とか"ホーリー"とか"ブルーアイズ"とかなんも付かないのか?
「ただの【ドラゴン】なの?」
俺の言葉に、ミリィは悲しげな声で答える。
「そうなの……わたし、役立たずだから……。」
え? 何で悲しそうなの?
そんで話噛み合ってなくない?
「え~っと、スマン。俺あんま詳しくないんだけど……【ドラゴン】なのと役立たずなのって関係あんの?」
俺の言葉に、ミリィはハッとして説明する。
「えっとね。竜種は、生まれた時はみんな【ドラゴン】なの。"力"を身につけて、その"力"で何かを成し、認められた時に"種族名"をもらえるの。わたしは認められてないから……だから"従者"も居ないの。」
あー……そういうシステムなのか。
「……わりぃ。ミリィを傷付けるようなコト言っちまったな。」
「う、ううん! わたしが役立たずなのは、わたしが悪いの!」
俺の謝罪に、ミリィは慌てて手を振る。
「ミリィはまだ"力"を身につけて無い、ってコトなのか?」
「ううん。でも……わたしの"力"は、役に立たないから。」
役に立たない力……か。
「ちなみにどんな"力"なんだ?」
俺の問いに、ミリィは口ごもる。
「……言っても、たぶん役に立たないよ?」
そう言って、他に誰が聞いているわけでもないのに、俺に顔を近づけ、耳打ちする。
おぉ! 耳元で囁かれる幼女ボイス! 耳が幸せ……!
そうしてミリィは俺に"力"について説明した。
「……っていう"力"なの。役に立たないでしょ?」
ミリィはそう言ったが……俺はそうは思わなかった。
確かに変わった"力"だが、使いようによっては……
……。
…………?
………………え?
……………………あれ??
…………………………待てよ?
待て待て待て待て!!!!
オイオイオイオイ!!!!!!
その"力"を使えば……"出来る"んじゃないか?
「~~~~ッ!!! ミリィ!!!」
「ひゃっ! な、なに!?? レティちゃん!?」
俺はミリィの肩をガバッ! と掴む。
「"出来る"ぞ!!」
「"出来る"って……ココから出ることが出来るってこと?」
ミリィの問いに、俺は首を振る。
「そんな小せぇコトじゃねぇ!! その"力"があれば、ミリィは英雄……いや、"伝説"にすらなれる!!」
俺の言葉の意味がわからず、ミリィはぽかんとしている。
そうだ! 出来る!
今まで誰も成しえなかったようなことが!!
「レ、レティちゃん。でも、まずはここから出ないと……」
興奮気味の俺に、ミリィが不安げに言う。
「あぁ。それも同時に解決した。」
そう。
これでこっちの準備は万全だ。
あんな捨て台詞置いてったんだから、あの元・勇者は"答え"を聞きにまた戻ってくるハズだ。
だったらそん時に用意しといてやろう。
あの呑んだくれに、酔いも醒めるようなとびっきりの"プレゼン"をかましてやる!!




