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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
第五章 ×××どらごん
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第四十八話 だまされて、捨てられて

――カツン!


 元・勇者に抱えられ一瞬で塔の最上階に到達した俺は、窓枠に足を掛け塔内へ侵入する。


薄 暗い部屋を、月明かりが静かに照らしている。


「ど、どなた!?」


 部屋の奥から驚きの混じった問いかけが響く。


「……泥棒です。」


「ど、泥棒さん!?」


「あ、ゴメン。言ってみたかっただけだ。」


 少女の声がちょっと怯えてたので慌てて訂正する。


「怪しいモンじゃない……っつっても信じられないかもだけど、俺は味方だ。」


 部屋の奥には少女が一人、座っていた。


 橙色のセミロングヘア―。

 太陽を思わせる金色の瞳が、不安げに俺たちを見つめている。


 歳は(レティ)のいっこ上くらいかな?

 なんか……今更だけど、うん。

 やっぱ美少女なんだよね。……嬉しいことに。


 特に縛られたり、鎖で繋がれたりはしてないみたいだ。


「俺はレティーナ。レティでいい。アンタと同じ"魔族"だ。」


 俺の言葉に驚きながらも、魔族だと名乗ったことで少女は少し警戒を解く。


「わ、わたしミランダです! ミランダ=ウィンチェスター。親しい人は"ミリィ"って呼んでくれます。」


「んじゃミリィでいい?」


「う、うん! わたしも"レティちゃん"って呼ぶね!」


 お、おぅ……。ちゃん付けは初めてだ。

 なんかむずむずするな。


「ミリィ。事情は……後で説明する。とりあえず俺と一緒に来てくれ。」


 魔族復権推進派やら【煉獄】の呪いやらの話は帰ってから説明しよう。

 ここに長居すんのは得策じゃない。

 元・勇者曰く『コワい警備兵さん』に見つかる前に、とっととオサラバしよう。


「う、うん。わかった。」


 ミリィも頷く。


「つーわけで……悪いんだけど、もうひとっ跳び頼んでいいか?」


 俺は後ろを振り向き、元・勇者にそう依頼する。


 だが……


「ん~……。そ れ は 出 来 な い な ~ 。」


 元・勇者は、先ほどまでのおどけた口調は変えず、だが目が全く笑っていなかった。


「せっかく"捕らえた"魔族二人を……逃がすなんてバカな真似は出来ないね~。」


「なッ……!?」


 なんだって……!?


「嬢ちゃん~……人が良すぎるんだよな~。まぁ の こ の こ 付 い て 来 て く れ て 、こっちは楽だったが……。」


 オイオイ……。マジかよ。


「テメェ……騙したのか!!」


 俺は元・勇者に向かって吠える。


「騙したなんて人聞きが悪いな~。『連れだせるかどうかは嬢ちゃん次第』って言っただろ~?」


 元・勇者は肩をすくめて見せる。


「魔族なんてのは人間にとって"有害"なんでな~。ただ魔族が居るってだけで、街は混乱しちまうんだわ~。もしどうしても出して欲しけりゃ、嬢ちゃんたちが"人間にとって無害"な証拠を見せてくれや~。そしたら出してやるぜ~?」


「無害な証拠!? ふざけんなよ!! さっさと……」


 俺の言葉を最後まで聞かず、元・勇者は、


「無理なら諦めて大人しくしとくんだな~。」


 その言葉だけを残して、塔の窓から外へと跳んだ。


 塔の最上階の部屋には、ミリィと、呆然と立ち尽くす俺だけが残されたのだった。

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