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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
第四章 ばんぱいあろーど
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第三十九話 乙女の秘密です♪

「グリムさま……!」


 ティーパーティーに参加したグリムに、モワが駆け寄る。


「お久しぶりです……! お会いしたかったですよぅ……!」


 モワは目に涙を浮かべていた。


「モワ……。」


 半年ぶりの再開を泣いて喜ぶ従者に、グリムも思うところがあったのだろう。


「すまなかったのじゃ……。妾が臆病なばかりに……苦労をかけたの。」


「いいんです! こうしてまたお会い出来ましたから……!」


 モワが涙を拭う。


「また妾と……おしゃべりしてくれるか?」


 グリムの問いに、せっかく拭った涙を再度目に浮かべて、……だが笑顔で、モワが答える。


「はいっ! 喜んで!」


***


 それから俺たちはお茶会を楽しみながら、グリムとモワに現状を説明した。


「……なるほどのぅ。"魔族復権推進派"に"【煉獄】の呪い"か……。」


 グリムはティーカップを傾けならが俺の言葉を復唱する。


「そんな……! 嫌です! せっかくお嬢さまもお外に出られるようになったのに……。」


「モワ。仕方あるまいて。少なくとも妾たちが成人するまではひっそりと隠れて暮らすしか……。」


 そう言ったグリムに、俺は訂正する。


「ん? 隠れて暮らす必要なんてないぞ?」


 俺の言葉に、グリムもモワも驚いた表情を返す。


「え? でも……"魔族復権推進派"に狙われているんですよね?」


 モワの言葉に、俺はニヤリと笑う。


「オイオイ。『狙われている』ってことと『隠れなきゃいけない』ってのはイコールじゃないぞ?」


 そう。

 こっちが悪い事したワケじゃねぇんだ。

 どうしてそんな指名手配犯みたいな生活しなきゃいけない?


「堂々と生活してりゃいい。いや、堂々と"してなきゃいけない"、だな。」


 妹たちの健全な成長の為にも、そんな日陰での生活なんてまっぴらだ。


「……何か考えがあるのじゃな?」


 グリムの問いに、俺は頷いて再度笑う。


「まぁ、任せとけって。」


***


 俺たちはその日のうちに交易の街"オーハマ・ヨーク"へと馬車を走らせた。


――翌日。


 冒険者ギルド オーハマ・ヨーク支部の"ギルド長室"に、俺は報告に来ていた。

 机を挟んだ向かいの席には、"王国軍 南方防衛部隊長" 兼 "オーハマ・ヨーク冒険者ギルドのギルド長"のアーレイが座る。


「では、調査の結果を聞こう。」


 アーレイが問う。

 元々冒険者ギルドからの依頼は、"イナガウ・アッシュにおけるモンスターの種類や数、街での生態調査"とのことだった。

 だが……


「あー、結論から言います。今あの街にはモンスターは一匹もいません。」


「な、何だと!!?」


 アーレイがガタッ! と椅子から立ち上がり、驚きの声を上げる。

 うむ。予想通りのいい表情だ、と俺は内心笑う。


「ど、どういう事かね!? 虚偽の報告は罰則を科されることもあるのだぞ!?」


「いえ、マジなんすよ。」


 信じられないといった顔をするアーレイ。


「……詳しく報告し給え。」


 椅子に座り直し、机の上の茶を一口飲んで少し落ち着いたアーレイが問う。



「えーと。俺らがイナガウ・アッシュに着いて街を探索していると、"キマイラ"に遭遇しました。」


「き、"キマイラ"だとッ!? 危険度A級のモンスターじゃないか!」


 再度ガタッ! と立ち上がるアーレイ。

 せっかく座ったのに……。

 つかモンスターに危険度のランクとかあんのね。初めて知ったわ。


「で、そのキマイラと交戦の末……これを撃破。」


「なッ!? はぁぁあ!??」


 アーレイは口をあんぐり開けている。


「その後街を調査しましたが、キマイラ以外のモンスターは一匹も確認出来ませんでした。以上す。」


 俺が坦々と報告を終わらせると、アーレイは「ちょ、ちょっと待ってくれ」と言って再度お茶に手を伸ばす。

 カップの茶を飲み干し、額に手を当てて目を閉じている。

 報告内容を整理しているようだ。

 しばらくしてアーレイがようやく言葉を発する。


「……なるほど。キミたちが遭遇したキマイラは、モンスターの群れのボスだったのだろうな。それを撃破したことで、蜘蛛の子を散らすように他のモンスターも街から逃げ出した、と。」


 自分の中で納得できる筋書きをなんとか描こうと、眉間に皺を寄せて話すアーレイ。


「しかし……キマイラを撃破など、王国軍が中隊を編成して当たる規模の作戦だぞ? 一体どうやって……?」


 アーレイの問いに、しかし俺は可愛く笑って答える。


「……えへ、秘密だよ♪」


 アーレイが頭を抱えて「Oh……」とか言ってる。


「残念だが……冒険者の"隠し玉"は詮索しないのがギルドのルールだ。これ以上は聞かん。」


 個人的には非常に気になるが……とアーレイは言い残した後、


「報告内容の確認の為にすぐ"イナガウ・アッシュ"に調査隊を送る。報酬の受け渡しはその後になってしまうが構わないか?」


 そう聞いてきた。


「ん。それでオッケーだ。それと……」


 俺は答えた後、こう付け足した。


「その報酬の受け渡しの時に、同席して欲しい人がいるんだけどさ……」


 俺はニヤリと笑いながら、アーレイに"ある人物"との面会を頼んだ。

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