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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
第四章 ばんぱいあろーど
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第三十六話 こわくないから出ておいで

 俺の呼び掛けに建物の影から顔を出した人物……。


 それはエリノアよりちょっと年下くらいの女性だった。


「ほ、ほんとに……魔族なんですかぁ……?」


 女性はまだ建物に半身を隠したまま、警戒するようにこちらを見ている。


「おー。安心してくれー。」


 俺の声に、女性は通りへゆっくりと歩み出る。


「あの……えっと……」


 綺麗な茶色の髪と、下がった眉が特徴的な女性だ。

 うーむ。これこっちから名乗った方がいいパターンかな?


「はじめまして。レティーナ=ランドルトだ。」


 俺の自己紹介に「ふぇ!?」と声を漏らす女性。


「ランドルトって……まさか! 魔王さまのご息女さまですかぁ!?」


 驚き顔の女性に、俺はこくんと頷き、シャルとロロにも名乗るよう促す。


「……シャルピー=ロックウェル。」


「自分はロロ=フォン・リンネであります!」


 二人の紹介に女性はまた「ふえぇ!?」と声を漏らす。


「【オリハルコンゴーレム】さまと……【キングベヒーモス】さまのご息女さままで……!?」


 女性はおろおろしている。

 ……そりゃ先代魔王軍幹部の関係者がこれだけ押しかけりゃ焦るわな。


 しばらくして、ようやく落ち着いたらしい。

 女性は胸に手を当てて呼吸を整えながら、ようやく自己紹介してくれた。


「わ、私は……"霊種"【レイス】のモワと申します。」


 モワは丁寧にお辞儀する。

 おー、やっぱ"霊種"の魔族なんだ。


「モワ。さっきの"キマイラ"……アンタが作った"幻術"なんだよな?」


 俺に聞かれ、モワは申し訳なさそうにこくんと頷いた。


「なんであんなことを?」


「それは……」


 モワはしばし悩んだ後、答えた。


「"お嬢さま"の……命令なんです。」


***


 俺たちはモワに案内され、無人の街道を進む。


 モワの話を要約すると、こうだ。


 半年ほど前まで、モワは"お嬢さま"と一緒にこの街で暮らしていた。


 もちろん、"魔族"だということは隠して……。


 それが半年前……

 "ある出来事"がきっかけで、"お嬢さま"は屋敷から出なくなってしまったそうだ。


 その"ある出来事"っていうのが……


「お嬢さまの正体が……"魔族"であることがバレてしまったんです……。」


 夕暮れの街、いつものように買い物をしていたモワと"お嬢さま"。

 その帰り道で、たまたま近くを通った馬車の荷台から積み荷が落下し、二人の近くに大きな音を立てて落ちた。


 ケガは無かったものの、それに驚いた"お嬢さま"は、身体の一部を"魔族化"させてしまったんだという……。


「"力"を使った時以外でも、身の危険を感じた時や、感情が昂ぶった時は"魔族化"してしまうんですわ。」


 エリノアが補足する。


 と、まぁそんなわけでお嬢さまはそれ以来、人間を恐れて屋敷から出なくなっちまった。


「で、引きこもるだけでは気が済まなかったお嬢さまは……従者であるモワに『この街に人間を近づけるな!』って"血の盟約"で命じたってことか。」


「はい。その通りです……。」


 気持ちはわからんでもないが……

 街から人間を追い出したのはちとやり過ぎだろーに。


「食事とかはどうしてるんだ?」


「私がいつも屋敷までお運びしてます。」


「"お嬢さま"と会話は?」


「……半年前から一度もしてません。」


 Oh……なんという引きニート……。

 ネット環境も無い異世界でよく引きこもりなんて出来るな。


「モワ。一応確認しとくが……モワはお嬢さまに、出てきて欲しいんだよな?」


 俺の問いに、モワはぎゅっと目を閉じて、


「出てきて……欲しいです……! また一緒に……、お話がしたいです……ッ!」


 涙ながらにそう答えた。


「……わかった。」


 そんな会話をしているうちに、俺たちはその"屋敷"に到着する。


 さて、そんじゃ"お嬢さま"を"安心"させてあげましょーかね。

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