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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
第四章 ばんぱいあろーど
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第三十五話 匂いでわかるもん

 ヤバい!

 ヤバい! ヤバい! ヤバい!


 ロロが居ない!?


 つーことは……まさか!?


「~~~ッ!!」


「……! ……レティ!!」


 街中に向かって再度走り出した俺を、シャルが後ろから呼び止める。

 あぁ、俺だってこえーよ!

 だが! ロロに何かあったら……!!


 俺は先ほどライオンと遭遇した場所まで来た。


 ライオンは……まだ居る! こちらを睨んでいる!

 ロロは……いた!!


「……ってロロ!! なにやってんだ!!」


 ロロはあろうことか、ライオンの目の前に突っ立っていた。


「あ、レティ殿……」


 ロロが振り返り、俺に目を向ける。

 と同時に、ライオンが鋭い爪を携えた前脚を振り上げた!


「ッ!! ロロぉーー!!」


 俺はロロに庇うように飛びつき、ライオンに背を向けた。


 ぐ~~!! あんな爪で抉られたらきっと痛いなんてレベルじゃねぇぞ!?

 きっと一発で胴体まっぷたつだよちくしょう!!

 でも! せめてロロだけは……!!


 そう思いぎゅっと腕の中のロロを抱きしめる。


 しかし……


(あ……あれ?)


 いつまで経っても、背中が抉られたり身体がまっぷたつになったりはしなかった。

 俺は恐る恐る振り向く。


 と! そこへライオンの前脚が!!


「…………ほっ?」


 ライオンの前脚は確かに振り下ろされた。

 しかしその前脚は俺の身体を す り 抜 け て いた。


 必死に何度も前脚を振るうライオン。

 しかし全部すり抜ける。

 ……なんか逆に、必死なライオンが可愛く見えてきた。


「れ、レティどのぉ……。」


 俺の腕の中、ぎゅっと抱きしめられたロロが顔を赤くしている。


「お、おぅ。悪ぃ。……じゃなくて! ケガはないのか!?」


 強い力で抱きしめていたロロをぱっ、と解放する。


「……大丈夫であります!」


 照れを隠すように敬礼してロロが言う。


「お嬢様ぁー!」


「……レティ!」


 そこに、エリノアとシャルも合流した。


***


「これは……幻術ですの?」


 エリノアがライオンの顔の前で手を振る。

 ライオンはそれを払いのけるように前脚を振るうが……やはり前脚はエリノアをすり抜けた。


「そのようでありますな。」


 ロロはわかっていたように平然と告げる。


「なんでわかったんだ?」


 俺が問うと、ロロは少し誇らしげに、


「我々【ヘルハウンド】は鼻が利きますので! 最初にキマイラが出たとき、何の匂いもしなかったので妙だと思ったのであります。」


 お、おぅ。そういうことね。

 ロロの鼻はめっちゃイイ、と。


「しかしこれほど精巧な幻術ですと……冒険者の皆さんが逃げ帰ってくるのも納得ですわ。」


 それな。

 俺もめっちゃビビったもん。

 これ相手に戦おうと思える奴は人間じゃねぇよ。


「幻術って……やっぱ魔族の"力"なんだよな?」


「えぇ。"霊種"の魔族が得意とする"力"ですわね。」


 俺の確認に、エリノアが答える。


「……じゃあ、……この幻術を作ったひとが、……近くにいるね。」


 シャルが呟く。


 そう。

 ライオンは明らかに、こちらの動きを把握して動いていた。

 それはつまり……


 俺は右手を握り、ポン!と"拡声器"を出す。

 そして大きく息を吸い、上空に向けて思いっきり叫んだ。


「あー!! どこから覗いてるか知りませんけどー!! 俺らも魔族なんですよー!! よかったら話聞かせてくれませんかねー!!」


 無人の街に、俺の大声が響いた。


――数秒の静寂。


 その後に、街の奥の建物の影から、ひとつの人影が通りに顔を出した。

 お読み頂き、ありがとうございます♪


 あ、サブタイトル前に話数追記しました。

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