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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
第四章 ばんぱいあろーど
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第三十四話 忘れ物はないですか?

「本当に、良かったのでありましょうか?」


「大丈夫だって。ロロもたまには羽伸ばせよ?」


 冒険者ギルドからの依頼により、関所の街"イナガウ・アッシュ"に向かう途中の宿。

 俺はロロと相部屋で泊まっていた。


 ちなみにロロの弟たちはクリープと一緒の部屋だ。


 いつも弟たちの面倒を見ているロロに、たまには別の部屋でのんびりさせてやりたい。

 そんな思いで弟くんたちに、


「今日、ねーちゃんと寝てもいい?」


 と聞いたら、


「アネキを……よろしくおねがいしますっ!」


 と真剣な顔で返事してきた。

 ロロも顔を真っ赤にしてたし。


 ……あれ? なんか勘違いされてる?


 部屋に入ってからも、ロロは落ち着かない様子だった。


 うーむ。

 のんびりさせる為に相部屋にしたのに……なんか緊張させちまってるな。


「ロロ。」


「な! なんでありましょう!?」


 俺が声を掛けると、ロロは過剰に反応する。


「いや、腹へってねーか?」


 そろそろ晩飯の時間だ。


「そ、そうでありますな。では何か作りましょうか?」


「んー、俺が出してやるよ。なんか食べたいものある?」


 俺が聞くと、ロロは少し考えてから、


「あの、前に出して頂いた"はんばーがー"をまた食べたいであります……。あ! レティ殿のご迷惑でなければで結構でありますが!」


 少し恥ずかしそうにそう答えた。


「はいよ。じゃあ俺もバーガーでいっか。」


 そう言って俺は右手を握る。


 ポン! と俺の手に紙袋が二つ現れる。

 それに反応してロロの鼻がひくっ、と動く。


「ほい。今日は"半熟てりたまバーガー"だ。"ポテト"も付けといた。」


「ふおぉー! いい匂いであります!」


 お、いつものロロに戻った。


「……ん~~! 美味しいであります! レティ殿はやはり凄いでありますな!」


「凄いのは俺じゃなくてバーガーのメーカーだけどな。」


 俺たちは隣合って座ってバーガーを食べた。


 ちなみに俺のは"タルタルたっぷりエビバーガー"だ。

 しかしこれ……幼女になったからすげー大きく感じるな。

 口をめっちゃ大きく開けないとタルタルソースがこぼれちまいそうだ……。


「あ! レティ殿……」


「ん?」


 ロロは俺の顔を見た後、自分のバーガーで埋まった手を見て、そして……


 おもむろに……俺のほっぺを舐めてきた。


(……って何事!?)


 俺が硬直しているのに一瞬遅れて気づき、ロロは「ひゃあ!?」と声を上げる。


「ごごご、ごめんなさいであります!! いつも弟たちにしているので自然に……!! その……ほっぺに白いのが付いていたので取って差し上げようとしたのであります!! 申し訳ないでありますっ!!」


 ロロは自分のやらかした行動に気づき、あたふたしている。

 いや、俺としては全然おっけーウェルカムもっとやれ状態なんだが。


 ……とここで俺はロロの口元にもてりやきソースが付いているのを発見する。

 尚も謝罪と弁明を繰り返すロロに、俺はすっ、と顔を寄せ……


「ひゃああ!??」


 宿の部屋に、再度ロロの声が響いた。


***


――翌日。


「……あれが、……"イナガウ・アッシュ"。」


 馬車の窓から先方を見たシャルが呟く。


 そこは……パッと見た感じ、普通の街であった。

 街の中央には荷馬車が往来出来るよう広い道が通っており、その両側には商店や宿といった建物が並んでいる。

 だが……


「……だれも、……いないね。」


「いないでありますなー。」


 そう。人が居ない。

 真っ直ぐに街の中央を走る石畳の道に、人っ子ひとり居やしない。


 見れば店も全て閉められた状態だ。

 なんか……寂れたシャッター商店街に近いものを感じるな。


 街の入り口は木の杭と鉄線で簡易的な封鎖がされていた。

 俺たちはそれを跨いで街に入る。


 ちなみにアイリスコロネとロロの弟くんたちは街の外……馬車の中で待機だ。

 何かあったときすぐ馬車を出せるようクリープも待機させておく。


「見た感じ、モンスターなんて居そうにないけどな……。」


 言ってから思った。

 あれ……? これフラグか……?


 そんな俺の期待(不安?)に答えるように……

 俺らが歩いていた道の右前方、大きな建物の影から、


 巨 大 な ラ イ オ ン が顔を出した。


「き、き、き、キ マ イ ラ ですわー!!!?」


 エリノアが悲鳴を上げる。


 見ればライオンにはヤギのような角が生えており、背には蝙蝠のような翼が、尻尾には大蛇がいる。

 つーかそんなことよりも……


(デ カ す ぎ ん だ ろ !!)


 建物の一階部分よりさらに大きい。

 アフリカゾウと同じサイズの羽の生えたライオンとか、戦えるワケねぇだろ!!


「~~~ッ!? 逃げるぞッ!!」


 俺は全員に告げる。

 こんなんじゃれつかれただけで他界確定だ。


 ライオンに背を向け、全力で街の外へと走る。

 幸い、ライオンは追っては来なかったようだ。


 俺たちは街の外、馬車の待機場所まで来てようやく膝を付けた。


「も、もうムリですわぁー!」


「あ、あぁ。これはムリだな。」


 冒険者ギルドには悪いが、俺らの手に負える相手じゃねぇ。

 一応、モンスターの調査が目的だから今遭遇したキマイラの件を報告して終わりにしよう。


「シャルさん……大丈夫ですの?」


「……だいじょぶ。……びっくりしたけど。」


 シャルも一生懸命走ったようで、息が上がっている。


「ロロさんは……あれ? ロロさんはどこですの……?」


「……え?」


 エリノアの言葉に、辺りを見回す。


 ロロが……居ない!?

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