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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
第三章 へるはうんど
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第三十二話 浜辺の天使たち

「海だぁーー!!!」


「うみなのぉーー!!!」


 アイリスとコロネは、オーハマ・ヨーク近くの海辺で叫んでいた。


 そう!

 今日は妹たちと一日遊ぶ!!

 これは槍が降ろうとも天地がひっくり返ろうとも覆らない決定事項だ!


 もー今日は遊ぶぞー!

 明日のことは忘れて!全力で!ハイテンションで遊ぶ!遊ぶとも!


「おねーちゃん! 海! すっごくきれいだよー!」


「およぐの! もぐるの! すなのおしろもつくるの!!」


 俺の出した"水着"を着てはしゃぐ妹たち……。

 あぁ! なんて尊い……!!!


 ちなみにアイリスは花柄の三角ビキニ。

 コロネはピンク色のワンピースタイプ(フリル付き)だ。

 青い海と白い砂浜を背景に、二人の笑顔が眩しい。


「……レティ、……可愛い水着、……ありがと。」


 もちろんシャルも一緒だ。

 シャルの水着は白地に紺の縁取りのシンプルなホルターネックにパレオ。

 普段は隠された白い素肌が露わになり、芸術的な程に美しい。

 幼いプロポーションと儚げな表情が逆に色っぽい……くそう、反則だ!


 そして、ロロと弟くんたちも誘ってみた。


「これは……自分には似合わないのではありませんか!?」


 顔を赤くして言うロロは、オレンジのチェック柄のタンキニを着ている。

 おへそが見えないのは残念極まりないが……それでも健康的な鎖骨や太ももが癒し効果抜群だ。

 普段オシャレに無頓着っぽいロロの照れた表情と合わせて大変素晴らしい!


 はぁ~! 眼福!


「はぁ~! 眼福ですわぁ……!」


 俺の出した"ビーチパラソル"の下、隣に座るエリノアが、俺の心の声とハモるように呟く。


 え? エリノアの水着?

 ……黒のマイクロビキニだよ。別に興味ないけど。



 ……は!? 俺!?


 ……スク水。


 ……ちょ! 待て! 別に着たかったワケじゃないぞ!?

 俺は見る趣味はあるが着る趣味は無い! 断じて無いぞ!?


「おねーちゃん! 約束! 泳ぎ方教えて!」


「ころねもなの!」


 心の中で誰にともなく弁明を延べていた俺の元に、アイリスとコロネがやってくる。


「おぅ! 任せとけ!」


 アイリスとコロネ、それからシャルにも泳ぎの基本を教えた。

 ロロは元から泳げるようで、弟くんたちに教えていた。


 三人とも、最低限の泳ぎはマスターした……と思う!

 シャルはまだ少しぎこちなかったが……。


「シャルにはまた今度、二人のときに教えてやるよ。」


「……!……けっか、……おーらい!」


 と言って右手をぐっと握っていた。


 お次はダイビングだ。


「すっごーい! なにこれ!?」


「みずのなかでも! はっきりみえるの!」


 妹たちは"水中メガネ"に感激していたようだ。

 俺も潜ってみたが、異世界の海はやっぱ日本とは違うな。

 自然が豊かだからか、そもそも種類が違うからか……

 色とりどりの魚や珊瑚が広がる海の中は幻想的で、まるで竜宮城のようだった。


***


 その後、少し疲れたので浜辺に戻った。


 妹たちは砂遊びを楽しんでいるようだ。

 体力あるなー。


「失礼。冒険者の……エリノアさんはこちらかな?」


 突然背後から掛けられた声に振り向くと、黒髪でアゴ髭を生やした筋骨隆々の中年男がいた。

 ……なんだ? ナンパか?


「どちらさんですか?」


 隣のエリノアに代わり俺が問うと、男は再度「失礼。」と短く詫びてから、


「私は"王国軍 南方防衛部隊長" 兼 "オーハマ・ヨーク冒険者ギルドのギルド長"を勤めているアーレイという者だ。」


 俺たちの隣に座りながら、ダンディボイスでそう名乗った。


「昨日の山賊討伐の件で、エリノアさんと話をさせて頂きたいのだが……よろしいかな?」


 あー……その件か。


 山賊討伐の件の話をしたいなら、エリノアを一人で行かせるわけにはいかない。

 ……当人、酒飲んで寝てただけだからな。

 俺が付いてって、言えないとこは誤魔化しつつ説明せにゃならんだろう。


 だが……


「……明日にしてもらえませんか?」


 そう。俺は今日、ここを離れるわけにはいかんのだ。

 可愛い妹と"約束"しちまったからな。


「ふむ。それは……王国軍の部隊を束ねる私に、『明日出直せ』と言っているのだね?」


 アーレイは少しばかり語気を強めて問う。


「……えぇ。妹たちとの"約束"の方が大事なんで。」


 俺は警戒しつつ、しかし譲らずにそう答える。

 ……うん。これは譲れない。


――しばしの沈黙。


「……フッ。フハハハ!」


 アーレイはアゴ髭を手で撫でながら、突然笑い出した。

 ……え? 何この人? コワいんですけど。


「いやぁ、すまない。脅すようなマネをして悪かった。」


 アーレイは尚も笑いながら、俺を見る。


「……なるほど。キミか。」


 え?


 俺はアーレイの顔を見返す。


「キミなんだろ? 山賊討伐の主導者は。」


 あちゃー。ばれとる。


「なんのことですかー? あれはエリノアお姉ちゃんがやったんですよー?」


 ダメ元でそう言ってみるが、アーレイはうんうんと頷いているだけだ。


「まぁそういう事にしておこうか。」


 笑いながらそう言ってアーレイは立ち上がる。

 あ、コレ確信してるわ。


「明日の朝、また出直すよ。そのときは話を聞いてくれるね?」


「……俺も一緒でいいんなら。」


 俺はそう答える。

 まぁバレてんならいっか。


「もちろん構わないよ。むしろ要件はキミに伝えた方が良さそうだ。キミは……えーと、」


「……レティーナだ。」


 一応、苗字は伏せとこう。


「レティーナくん。ではまた明日。」


 そう言って、アーレイは去って行った。


***


 その後、また海に入って、今度は"浮き輪"や"シャチ形フロート"を出して遊んで……


 ビーチバレーして、スイカ割りして、かき氷も食べて……


 夕方になる頃、妹二人はすっかり遊び疲れて、"レジャーシート"の上でうとうとし始めた。


「アイリスー? 大丈夫か?」


 俺はレジャーシートに横になるアイリスに声を掛ける。


「おねーちゃん……」


「ん?」


「今日は……ありがと。さいっこーに、楽しかったよ♪」


 アイリスは微笑んだかと思うと、そのまま眠ってしまった。


 その後、同じく眠ってしまったコロネをエリノアが、アイリスを俺が背負って宿まで帰った。


 背中で聞こえる寝息が、妙に心地良かった。

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