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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
第三章 へるはうんど
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第三十一話 真夜中の約束

「ただいまであります!」


 俺はロロを家まで送り届けていた。


 家の中には昼間ギルドで会った四人の少年、ロロの弟たちが居た。

 不安で眠れなかったらしく、全員が起きて待っていた。


 ロロの顔を見るなり、少年たちは、


「「「「アネキぃーーー!!!!」」」」


 と叫んでロロの胸に飛び込んだ。

 おーおー。愛されてんなー。


「おかえりなさいっ! よくぞご無事でっ!」


「すっごく! すっごく心配したんですっ!」


「ケガはないですかっ? おなかへってませんかっ?」


「よかったよぅ……! ほんとによかったよぅ……!」


「シェーン、ヘンリー、チェスター、ルイス。みんなありがとうであります。自分はこの通り、どこもケガして無いでありますよ!」


 ロロがそう言うと少年たちがわぁっ! とまた歓声を上げる。


 と、少年たちのうちの一人(たぶんシェーン)が、俺の元へ寄って来る。


「おねえさんっ……! ありがとうございますっ……!」


 シェーンは俺に頭を下げる。


 ……ふーむ。

 この場合、頑張ったのは俺もこの子たちも同列。

 そして得たものがあるのも同列。


 俺だけが礼を言われるのも筋が違う気がする。

 ……うん、ならこうだな!


 俺は他三人の少年も手招きして招集する。

 そして……


「お前ら……ありがとな!」


 そう言って少年四人に深く頭を下げる。


「なっ……なんでおねえさんがお礼を言うんですかっ!?」


 混乱している四人を代表してシェーンが問う。


「ん? おかしいか? お前らがロロの危機を伝えてくれなきゃ、俺は未来の友だちを助けられなかったんだ。だから……ありがとな。」


 まだ納得できないような表情の四人を、ロロは後ろからふわっと包み込むように抱いて、


「……そのお礼は、ちゃんと覚えておくでありますよ。そしていつか大人になったとき、同じことが言える人になってくれたら、自分も嬉しいであります。」


 そう四人に、優しい顔で説いた。


***


「弟くんたちは、その……ロロの事情、知ってんのか?」


 ロロが魔族ってコトとか、魔王軍幹部の娘ってコト。

 まぁ一緒に生活してんだし知ってるとは思ったが、一応確認する。


「自分が魔族であることでありますか? 知ってるでありますよ。というかこの子たちも魔族であります。」


 あ、やっぱそうなのね。


「自分の従者だった方……"ウォレス"殿というんですが、その方の息子さんたちであります。あ、ちなみに種族は四人とも"獣種"の【アルミラージ】であります。」


 そっか、なるほど。

 ロロを助けたときに「あの子たちの父上が亡くなったとき、自分が守ってあげなきゃって思った」って言ってたのはそういうことか。


 従者が亡くなって、残された子供たちの面倒をロロが見ていた、と。


 その後、俺はロロと弟たちに、俺らの現状を説明した。

 "魔族復権推進派"と"【煉獄】の呪い"について。

 そして俺が考えている"幹部の娘を全員集めて守りながら暮らす"案について。


 まぁ弟くんたちは完全には理解できてなかったかもだが……。

 ロロは話を聞き終えると、少し寂しそうな顔をして呟いた。


「この話を聞いたのが以前の自分であれば、最悪のことを考えてせめてこの子たちだけでも無事でいて欲しいと考えて、大陸の端っこにでも一人で逃げたかもしれませんな……。」


 そう言った後、今度は顔を上げて、


「でも今の自分は、そんな最悪な事態は起こさせないと、固く思えるであります! レティ殿! どうか自分もお供させて下さい!」


 強い意志を秘めた瞳でそう告げた。

 そんなロロに、俺は笑顔で答える。


「あぁ。望むところだ。」


***


(ぐぅぅ~~。)


 ロロの家に、誰のかは分からないが、腹の音が響いた。

 あ、これシェーンだな。顔が赤くなってる。


「……そうだよな。腹減ったよな。」


 俺は右手を握る。

 ……うん、あれでいいかな。


「ほいっと。さぁ、夜食だ。」


 その紙袋を出した途端、ロロと四人の少年の鼻が同時にひくっとする。


 某ファーストフード店の"てりやきバーガー"だ。


 俺は紙袋から包装されたそれを取り出して配る。


「俺は宿に戻る。今日はそれ食ってしっかり休むんだぞ?」


 そう言ってロロの家を出る。


「レティ殿……何から何まで、ありがとうであります!」


「おぅ。んじゃ、また明日な。」


 俺はドアを閉めて歩き出す。


 背後のロロの家から、


「「「「「うまあああ~~~~~~~~~い!!!!」」」」」


 という五重の歓声を聞きながら、俺は宿への道を歩いた。


***


 長い一日を終え、俺はようやく宿に戻ってきた。


 思えばこの町に着いたのは昼前くらい。

 約半日の出来事にしてはイベント密度高過ぎだろ……。


 俺が部屋のドアを開けようとすると、隣の部屋のドアが開いた。


「れてぃねぇ……おかえりなさいなの。」


 コロネが眠そうに目を擦って言う。


「コロネ……起きてたのか?」


 もう深夜二時くらいだぞ?


「アイねぇも……さっきまでおきてたの。おねーちゃんがかえるまでまってる! っていってたの。」


 マジか。

 すげー申し訳ないんだが……。


 コロネは俺に歩み寄ると、腰にぎゅっと抱き着く。

 おぉ!? 何事!?


「れてぃねぇ……あしたはどこかいっちゃダメなの。いちにちアイねぇところねとあそぶの。ぜったいなの。」


 コロネの小さな手が、俺の服を強い力で掴む。


 そっか……心配させちまったんだな。


「……わかった。明日はいっぱい遊ぼうな!」


「……ホントなの?」


 コロネが目を輝かせる。


「あぁ。約束だ。」


 うん、明日はいっぱい遊ぼう!

 そんで……アイリスとコロネを、いっぱい甘やかしてやろう!

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