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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
第二章 みすりるごーれむ
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第二十二話 みんなでいれば大丈夫

「痛っ! やめ、やめんか! ちょ、やめ……!」


 俺は右手に握った"木工ヤスリ"を木箱に擦り付けていた。


「お前らホントに何考えてんの? バカなの? 大馬鹿野郎なの? 娘の敵を討つ為に核兵器級の火力用意するとか頭おかしいんじゃねぇの?」


 ゴリゴリゴリと、ヤスリが木箱の角を丸めていく。


 大陸の半分が焦土と化す威力?

 そりゃ魔族復権推進派どもも焦って確保しに来るわな。


「うわぁぁ! やめるっス! やめたげて下さいっス! ロックウェル様ぁぁ!!」


 泣きつくクリープの頭を左手で押しのけ、俺は無心で木箱を削る。


「すまん!! 正直すまんかった!! ホラあの……! ワシらも酒が入ってて!! その場のノリで羽目を外しすぎただけなんじゃって!! 今めっちゃ反省してるから!! 反省してるからぁああああぎゃああああああ!!!」


 木箱がバタバタと暴れる。


 子供の為を思っての行動が行き過ぎて、結果子供を追い詰めるなんざ最悪だ。

 モンスターペアレントにも程があるぞ。

 ……あ、こいつ今、魔物(モンスター)だったわ。


「……レティ、……そのくらいにしてあげて。」


 シャルに言われ、俺は木箱を削る手を止める。


「……じじ様、……じじ様が悪いから、……レティを恨んじゃ……だめだよ?。」


「はぁ……はぁ……。すまん。マジすまんかった。」


 木箱も反省したようで何よりだ。


「さて、今後の方針なんだが……」


 俺は言いながら考える。


「ロックウェル様よ、【煉獄】の呪いを解く事って出来そうか?」


 "解呪"。

 ゲームだったら呪いを解く魔法やらアイテムやらがあったりするモンだが……。


「むぅ……残念じゃが不可能じゃろうな。魔王軍幹部全員の魔力を束ねた呪術じゃ……。解ける者は世界中探しても見つかるまいて……。」


 木箱は申し訳なさそうに言う。

 やっぱ無理か……。


「じゃあしょうがねぇ。もう一つの案で行こう。」


「「「もう一つの案?」」」


 部屋の全員が俺を見る。


「もう一つの案、それは……」


 全員が緊張の面持ちで俺の言葉を待つ。


「幹部の娘を全員集め、成人まで保護しながら一緒に暮らす!」


 そう。

 それしかない。


 放っておいたらいつ魔族復権推進派の襲撃があるかわからん。

 そうなれば……奴らが【煉獄】を使わないでいてくれる保障は無い。

 いや……"脅しの武力"として持つにしても、少なくとも一度はその威力を発揮させるだろう。

 『それ程の力を持っている』って人間相手に分からせなきゃ、脅しの意味も無いからな。


 まぁ魔族復権推進派がいなくても結局同じだがな。

 今現在、娘さん達がどういう状況にいるか分からないってのは、いつ爆発するか分からない不発弾を放置してんのと同じだ。

 出来るだけ安全な生活を……少なくとも成人するまではしてもらわなければ困る。


 確保して、収容して、保護する。

 そんな言い方をすると、ちょっと物を扱ってるみたいで、ピンと来ないかもしれないが……。

 まぁ実際、これ以上ないほどの"危険物"だからな。


 そう、それがベストな選択だ。

 決して俺の願望では無い!


 よっしゃあ! これで幼女ハーレム構築の大義名分が出来たぞひゃっほーう!!


 ……なんてことはこれっぽっちも考えちゃいない!! いないったらいないぞ!!


 俺の思いを知ってか知らずか、それぞれが俺の提案に答える。


「……わたしは、……レティと一緒に居られるなら……いいよ。」


 シャルちゃんマジ良い子。マジ天使。


「……うむ。まぁ、それしか無いじゃろうな。」


「そうっスね。他の娘さんにも集まってもらって、お互いを守るしか。」


 お、よしよし。保護者さん方もオッケーっぽい。


「それしかありませんわねー。まーったく、大変な旅になりそうですわー。ウフフー♪」


 言葉とは裏腹に、エリノアは目を輝かせて右手の親指をグッ! と立てている。

 コイツ……! 見抜いてやがる……ッ!!


「つっても娘さん方の居場所がわからんのだが……誰か心当たりとか無いか?」


「そうっスね。それぞれ人間領で暮らしてるって話は聞いてるんスけど、どこの街にいるかまではわからないっス。」


 うーむ。手がかり無しか。


「それでしたら……"冒険者ギルド"に入ってみては如何ですの?」


 お? ギルド?


「冒険者ギルドって……冒険者が依頼を受けて、薬草採取したりモンスター討伐したりするアレか?」


「そうですわ。……って、よくご存じですわね。」


 エリノアが感心したように言う。

 まぁ異世界転生じゃ常識みたいなモンだしな。


「冒険者ギルドは腕に覚えのある冒険者に依頼を仲介する組織ですわ。大陸中に支部があり、あらゆる依頼を登録冒険者に紹介してますの。もちろん"情報"も大陸中から集まってきますわ。」


 なるほど。

 冒険者になっとけば、大陸中から情報が集まってくる、と。


「魔族が人間領で暮らすのは、簡単なことではありませんわ。直接"魔族"だとバレずとも、『口から火を吹く少女がいる』とか『空を飛ぶ人影を見た』とか……どこかで"力"を使う機会が目撃されていれば、その情報が得られるかもしれませんわ。」


 お、おぅ。

 そんな子がいたらそりゃ噂になるわな。


 よっし。じゃあ次の街で冒険者登録すんのが当面の目標だな。


「ふむ。ならば交易の街"オーハマ・ヨーク"を目指すのがよかろう。あそこならば、冒険者ギルドの支部もある。」


 ほぅ。交易の街、ね。


「交易の街"オーハマ・ヨーク"は、ここから東に位置する大きな港町ですわ。物流も盛んで人も多いですし、人探しにはいいかもしれませんわね。」


 山の次は港街か。

 港街ねぇ……。



 …………港街?


 …………海?


 …………水着!?


「よおっしゃぁあ!! 行こう!!!」


 急激にテンションを上げた俺の声が部屋に響いた。

 それにビクッとした一同と共に、俺はウキウキ気分で次の街、"オーハマ・ヨーク"への旅立ちの準備を始めた。

 お読み頂きありがとうございます♪


 今回の投稿で第二章完結です!

 幼女のほとんど出ない説明回はさっさと飛ばしたい!(本音)


 明日は章末の閑話を上げて、明後日から第三章に入っていけると思います。


 では、どうぞ今後とも本作を宜しくお願いいたします。

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