第十七話 ともだちだからね
「おねーちゃん、おっそーい!」
宿の部屋に入るなり、アイリスが飛びついてきた。
おぉう。なんというご褒美。
遅いって……今まだ昼前なんだが……。
「昨日もその前も遅くまで帰って来なかったし! 心配したんだよー!」
アイリスはちょい涙目だ。
くぅ。可愛いなちくしょう。
コロネはそんな俺たちのやり取りを見ていた。
と、そこでコロネが気づく。
「れてぃねぇ、おきゃくさんなの?」
おっと、そうだった。
シャルを紹介しないとな。
……あれ? どう紹介しよう?
魔王軍の幹部の娘さんです?
……いや、アイリスとコロネには伝わりづらいか。
オヤジの知人の娘さんです?
……なんか的外れだな。
俺はしばらく考えて、決めた。
まぁいいや! シンプルにいこう!
「紹介するな。俺の 友 達 のシャルだ。しばらく一緒に旅することになった。」
俺の言葉に、シャルはちょっとだけびっくりして……でも嬉しそうだった。
「おねーちゃんのおともだち……?」
「れてぃねぇのおともだちなの……?」
アイリスとコロネは目をぱちくりさせた後、
「はじめまして! アイリスだよー!」
「ころねなの!」
アイリスは元気いっぱいに手を振って、コロネは両手を挙げてバンザイして、
「「よろしくね!」なの!」
と、シャルを迎え入れた。
シャルは俺の顔を見た後、少し照れながら、
「……シャル、です。……よろしく、ね。」
と微笑んだ。
***
その後、俺たちは一緒に過ごした。
昨日までほとんど宿から出られなかったアイリスが、「街を探検したいー!」って言いだしたので四人で街へ。
シャルの案内で霊峰の街"アッシズオーク"を散策した。
街道を通り、噴水のある中央広場、公園、時計塔……。
アイリスとコロネははしゃぎっぱなしだ。
街の外れにある高台からは、霊峰"ジフュー"を背景に、一面の紅茶畑が臨めた。
高台で、俺の出した"クレープ"を四人で食べる。
「ん~~!! おいっしー!!」
「ふぉぉ……! すごくあまいの!!」
アイリスとコロネが口にしているのは、それぞれ"ストロベリーカスタード"と"チョコバナナ"だ。
「……! ……とってもおいしい!」
シャルには"ブルーベリー&ラズベリー"を。
そして俺は"メイプルバターシナモン"を齧る。
「シャルおねーちゃん! 一口あげる!」
「しゃるねぇ、こっちも一口あげるの!」
「……じゃあアイリスとコロネにも、……わたしの、……一口あげる。」
いつのまにかシャルも"おねーちゃん"になっていた。
仲良きことは美しきかな。
それが幼女なら尚更だ。
その後、俺にも「一口あげる!」が回ってきた。
トリプル間接キス……なんて思ってしまったのは……うん、心に秘めておこう。
***
――夕方。
遊び疲れた俺たちが宿に帰ると、エリノアが眉間に皺を寄せていた。
「ただいまー、……ってエリノア? どうした?」
留守番させられて落ち込んでんのか?
「おかえりなさいませ、お嬢さま。……いえ、ちょっと問題が生じまして……。」
「問題……?」
まさか……魔族復権推進派絡みか!?
俺は緊張してエリノアの次の言葉を待つ。
エリノアは言い淀んだ後、意を決したように口を開いた。
「お金が……尽きましたわ……。」
――しばしの沈黙。
「……おま、そんなことで悩んでたの?」
俺は拍子抜けしたという風にエリノアに告げる。
「そんなこと!? 旅を続けるなら一大事ですわよ!?」
エリノアが焦りながら言う。
「宿代は明後日まで先払いしてますけど、次の街に移動するお金が無いんですわ!」
まぁ確かに。
ここまでの運賃の他、宿代やら教会への寄付やら。
あ、司祭を尾行した時に歓楽街でも結構使ったな。
「こうなったらもう一度あの司祭のところに行ってシャルさんのお給料を取り立てるしか……!」
「やめとけ。その件はもうケリが着いたんだ。」
俺はふぅ、と息を吐いた後、エリノアに笑って告げる。
「まぁ任せとけ。金なんて ど う と で も な る 。」
お読み頂きありがとうございます。
ブックマーク登録50件突破の感謝の気持ちとして閑話書きました。
ここに置くと読みづらくなる為、(あと内容がちょいアレな為)別館に置いときます。
ストーリーを純粋に楽しんで下さっている方はお気になさらず♪
それでは今後ともよろしくお願いします。




