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魔王の長女に転生したけど平和主義じゃダメですか?  作者: 初瀬ケイム
第二章 みすりるごーれむ
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第十四話 オトナっていつもズルい

「あぁ、あのシスターちゃんか。すっげー働きモンだよな。」


「朝から晩まで働いてんのに、夜中も掃除とかゴミ処理してんだぜ?」


「司祭様が拾った子らしいんだが、いやマジで聖人かってくらい仕事熱心だよな。」


――翌日。

 街でシャルのことを聞くと、ほぼ全員が「働き者」「仕事熱心」だと口にした。

 あらゆる雑仕事をこなしているらしく、『修道着のなんでも屋』なんて二つ名まで付いているらしい。


「そんなに働いて大丈夫なモンなのか?」


「いえ。確かに【ゴーレム】系の魔族は睡眠を必要としませんけど、疲れないわけではありませんわ。」


 お、おぅ。寝ないのは平気なのか。


 しかしシャルが自ら望んで働いているわけでは無いことを、俺らは知っている。


 昨日、あの後シャルに内緒でこっそり尾行してみたが……

 郵便配達の後、夕方から深夜まで荷物運びやら清掃やら……。

 あんなこと続けてたらいつか倒れるのは目に見えてる。


「"司祭様"か……。ソイツに話を聞いてみるか。」


 俺たちは街で一番大きな教会に足を運んだ。

 この教会の司祭、バチェラーという奴と話をする為だ。


「こんにちわ! 本日はどのようなご用件でしょう?」


 教会に入ると、営業スマイルの受付嬢さんが対応してくれた。


「あー、司祭のバチェラーさんと話をしたいんだけど……」


「はい! "告解"ですね! ではこちらに寄付をお願いします。」


 え? 寄付?

 話するだけで金取られんの?

 いや、司祭の職務ってよく知らんけどこういうモンなのか?


 まぁ騒ぎ立ててもしょうがないので、俺は(エリノアの財布から)寄付を差し出す。


「ありがとうございます! あちらの懺悔室でお待ち下さい!」


 出た! 懺悔室!

 あれだ。自分の過ちを告白する例のアレだ!


 俺はエリノアと一緒に懺悔室に入る。

 むぅ。本来一人しか入れないトコに無理やり入ってるから狭い。

 ……あと密着したエリノアが心なしか嬉しそうで怖い。


 司祭を待つ事約三十分。

 お粗末なプライバシー保護のされた小部屋の向こう側に、司祭らしき気配が入ってきた。


「迷える子羊よ。懺悔を……」


「あー、バチェラーさんだよね? シャルの事でちょっと話があるんですけどー。」


 司祭の言葉を遮ってシャルの名前を出すと、壁の向こうの気配が変わった。


「……どういったご用件ですかな?」


「あの子の知り合い……つってもまだ知り合ったばっかなんですけど……あの子がどういう理由であんなに働いてるのか知りたいんですよ。」


 壁の向こうの司祭はしばらくの沈黙の後、


「彼女は彼女の信じる"奉仕"を行っているだけです。」


 そう返答した。


 俺はエリノアをチラっと見る。

 エリノアが頷き、目線で「嘘をついてますわ」と応える。


「彼女の信念を曲げる権利は、例え友人であっても無いのではないですかな?」


 そんなこととも知らず、司祭は好き勝手に言う。

 意訳すれば、「お前らに関係ないだろ。口を出すな。」だ。


「しかしいくらなんでも働かせ過ぎです。司祭様はお止めにならないんですか?」


 俺の問いに、司祭は答える。


「……彼女が自ら望んだ道です。私に止める術はありません。」


 エリノアを見ると、やはりこれも嘘だった。


 ……まぁここで司祭に何を聞いても、コイツは正直に答えないだろう。

 俺は「わかりました。ありがとうございます。」と棒読みで告げて、懺悔室を後にした。


***


「もう! あったまきますわ!」


 教会を出た後、エリノアはカンカンだった。


「絶対あの司祭が裏でシャルさんに強制してるんですわ!」


「……いや、司祭がやらせてるのは間違い無いが、強制じゃねぇな。」


 俺の言葉に、エリノアは驚いて俺を見る。


「ただ強制されてるだけなら、シャルが自分で断るはずだ。」


「でも! 確かにあの司祭は嘘を付いてましたわ!」


「あぁ。だから"半強制"だ。」


 そう。一番厄介なパターン。

 『やれ』ではなく『やらなくちゃいけない』と"思わせて"いる。


 洗脳にも似た強制力。

 ブラック企業的なそれだ。


「それじゃ、どうするんですの?」


 エリノアが問う。


「んー。一番いいのは司祭がシャルの前で『間違ったことをさせてる』って認めることだな。」


 そうすりゃシャルも司祭を見限るだろう。


「……おっけー、拷問ですわね! シャルさんの前で、自分の罪を認めるまでメッタ打ちに……」


 エリノアの目がヤバい。


「待てって。もうちょい平和的にいこう。」


「平和的に、って……あの司祭、いくら問い詰めても自分から謝ったりしないタイプですわよ?」


 俺は頷く。


「あぁ。だから"自分から喋って"もらうんだよ。」


 俺は右手をグッと握った。


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